nearly equal

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サーカスの後で3



濡れて赤く色付いた唇ははしゃぐようによく動く。少しずつ荒くなって熱を帯びてきているのに、ひとつも大人しくならない口を塞いでしまおうと、アルフォンスは逃げる唇を執拗に追い掛けた。
貪るように深く重ね合わせても、笑いながら逃げていく唇に焦らされる。

「サーカスが終わった後、いきなり『弟子にしてくれ!』なんて言って転がり込んできて、曲芸もナイフ投げもあっつー間に覚えて、半年くらいであっつー間に親に連れ戻されて、ホント変なヤツだと思ったもん」
「正確には五ヶ月だよ…昔から集中力だけはすごいんだ、僕」
「集中力だけでどうにかなるモンじゃねぇよ。特に調獣なんかな」
「あぁ…そんなのもやったなあ…」

踊るように動く手足を追い掛けながら、過去の若気の大暴走を思い返して溜め息を吐いた。


あの日、子供が飛ばした風船を空中キャッチした風船配りの道化師。白粉を塗った顔に赤くて丸い付け鼻、おどけた化粧で表情を作り、しなやかな身のこなしと道化らしからぬ不敵な笑みでアルフォンスの心を奪ったピエロこそ、エドワードその人だった。
一目見て彼の虜になり、夢見心地のまま公演を見、その日のうちに弟子入りした。五ヶ月後には親に見つかり家に連れ戻されたが、サーカスで過ごした時間で覚えたのは曲芸だけではない。その短い期間で、アルフォンスは人生を変えるような経験をした。エドワードのしなやかな身体の隅々までを自分の指で触れて知ったのもこの時で、人生で一番強く人を求め愛する衝動を知ったのも、多分この時。

「ナイフ投げは今でも役にたってるよ、言う事聞かない部下にお仕置きする時とか」
「世間知らずのボンボンだと思ってたけど、まさか大企業の会長の御曹司だったとはなぁ…」
「僕だって、あの赤鼻ピエロの素顔がこんな美人だったなんて知った時は驚いた」
「お前は白粉顔の方が興奮すんだっけ?」
「エドなら着ぐるみ姿でも欲情できるよ…さあ、昔話はお終い」

アルフォンスが少し目を細めて顔を覗き込むと、途端にエドワードが腰砕けになって大人しくなる。

「ん、その顔は反則…っ」
「静かに」
「あ……っ」

調獣をしていた時、動物にナメられたら咬み殺されると教えられたので、とにかく眼光鋭くしていたら動物よりエドワードの方に効果抜群だった事を思い出す。公演後に興奮の収まらないエドワードにテント裏に引きずり込まれて押し倒された事もあった。

大きく割り開いた脚の付け根を甘噛みしながら舐めると、エドワードは身をくねらせて悶える。

「ん、あ、そこばっか…っ」

以前に付けた噛み痕はもうすっかり消えていたので、吸い付いて幾つも痕を付けていく。アーティストとして人前に出る彼が身体に痕を残されるのを嫌がるので、普段他人からは見えない位置、という事で妥協させた。執拗なマーキングを内股にびっしりと残して、アルフォンスはようやく落ち着いてエドワードの身体を頭から足の先までじっくりと見る事ができた。

羞恥で赤く染まった美しい容は、欲情して高ぶって生唾を飲むほどいやらしいのに、それでも意志の強さを失わない貴石のような瞳がアルフォンスを見つめる。
長い髪はまるで金糸のように輝き、触れれば絹糸のようにアルフォンスの指を流れていく。
小さいながらも赤く色付いた胸の先の尖りは、ぷっくりと膨れて小さく震えているし、しっかりと付いた腹筋から細過ぎる腰骨までのラインは、美術館に飾られるどんな人体像より美しく思われた。

「あ、アル…っ」

血管が透けて見えるほど白い脚の間で、エドワードの劣情が震えながらアルフォンスの愛撫を待っている。
手を近付けただけでぴく、ぴくんと跳ねるペニスまでが桃色で、こうしていれば年齢よりも幼くまだあどけなく見える彼だ。しかし口淫で幾度となく絶頂を知っているこの可憐な花芯は一度口に含まれれば、甘い甘い雫を零して喜ぶのだとアルフォンスは知っている。

「ふふ、もう我慢できない?」
「あ、もっ…お前がっ、だろ…!」

エドワードの胸に顔を寄せれば、噎せるような濃厚な甘い香りが漂ってくる。焦らされているうちに濃度が増してきたような欲情の香りがアルフォンスの鼻を擽る。たまらず目の前でぷっくりと勃起している乳首に噛み付き、舌でなぶりながらキツいくらいに吸い上げてやった。

「あっ!あ、アルっ、いっ…!」

痛いのかイイのか。エドワードの表情を見れば一目瞭然。

「気持ちいい?」
「あふ、ぃ、イイ、気持ちいぃっ」
「少し、大きくなったんじゃない…?勝手に弄った?」
「あっ、自分でなんて、しねぇよ…っ」
「自分じゃなくたって、他にしてくれる人は?」
「んあぁっ…!」

歯を立ててかじられたエドワードは、その刺激で花芯から蜜を迸らせた。

「ひゃ…っ、っは、ああぁ…っ」

びく、びくと痙攣する内腿を掌で撫で上げれば、痙攣は全身に伝わって身悶える。その反応を見て、更に追い上げる為にアルフォンスはエドワードの脚の間に身体を滑り込ませた。

「あ、あ、っ」

言葉が出てこないのかもうまともに喋れないのか、力の抜けた腕を伸ばしてアルフォンスに縋ってくる。

「浮気してない?」
「する、暇、あるかっ…たまの休みも、こ、やっ、て…っ」

エドワードが世界的なエンターティナーとしてどれだけ多忙な日々を送っているか、知らないアルフォンスではない。一介のサーカス団員だったエドワードをここまで有名にしたのは、彼のスポンサーとなったアルフォンス自身なのだから。



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