nearly equal

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サーカスの後で2


*

「全く、今思い出してもおかしな出会いだったな」

半年ぶりの逢瀬で募った恋しさの相乗効果を差し引いたとしても、目の前の恋人は眩しい程に美しかった。

アルフォンスは待ち合わせたホテルの部屋に約束の時間より少し遅れて到着した。
ローブを羽織っただけのしどけない姿でベッドに寝転がり、シルクのシーツの上でシャンパングラスを傾ける彼にすぐにでも飛びかかりたいのをぐっと堪え、アルフォンスはコートに付いた雪を払う。

「髪、びしょぬれじゃねぇか…いったいどこから来たんだよ、お前。お抱え運転手付きのプレジは故障か?」
「この雪で渋滞が凄いから、車は途中で乗り捨てて走ってきた。貴方が待ってるってわかってるのに、車でただじっとしてなんていられないよ」
「がっつきすぎだろ、それ」

既に出来上がっているのか、ケラケラ上機嫌で笑う顔はほんのりと赤い。触れたいと思ったが、革のグローブを脱いだ自分の指が氷のように冷たくなっているのに気付いて、伸ばしかけた腕を慌てて引っ込めた。
それに気付いたのか、笑っていた彼が淡い照明を反射して揺れる金瞳を細める。

「…がっつかねえの?」
「…がっつきたいけど、このまま触れたら冷たいから…」

今やアルフォンスよりも多忙の身となった彼のスケジュールを押さえるのに半年かかった。それでも押さえられたのは僅かニ日間だけだ。本当は一分一秒だって惜しい。

部屋に辿り着いて彼の顔を見るまで全く気にならなかったが、雪吹き荒ぶ屋外を全力疾走してきた身体は汗ばんで、その汗が冷えて思う以上に冷え切っていた。
暖房で十分に温められたら部屋の中でも悴む手をこすり合わせながらコートを脱ぐ。シャワーを浴びようとしてアルフォンスがネクタイを緩めると、いつの間にかにじり寄ってきていた恋人が、節の赤くなったアルフォンスの手に指を伸ばしてきた。

「冷たいよ」
「オレ呑んでるから平気。つうか、さっきからカッカしてて。冷やされたい」

だからさあ、おいで、と両手を広げて見せられた。アルフォンスは眩暈を起こしてその腕の中に飛び込む。ニキロの全力疾走で酸欠気味だし喉もカラカラに渇いていたけれど、それよりも心の方がもっと飢えていた。

「会いたかった、エドワード」
「ん、オレも…」


案の定恋人は、がっついた唇が触れた途端「つめてぇ」と騒ぎ、無情にもアルフォンスをベッドから突き落としてくれた。



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