『美坂家の秘め事』82

「直弥と〜」

「栞の〜」

「らぶらぶクッキングゥ〜〜」

 拓弥の時と同じようにポーズを決める。

 ダイニングテーブルで新聞を読んでいた拓弥は呆れたように吹き出した。

 二人はまた決まった!とキャッキャッ言いながらハイタッチをしている。

「なーにーがーらぶらぶクッキングゥ〜〜だよっ!!」

 優弥は膨れっ面で二人の間に割り込んだ。

 グイッと二人を両手で押して引き離すと優弥は栞の腰に抱き着いた。

「しーちゃんもこんな女好きのそばに近寄っちゃだめだよっ!」

「お、女好きって…」

「おいおい…優も言うようになったじゃねぇか。つーかお前ねーシスコンもたいがいにしとけよー」

 直弥は呆れながらスープをよそいはじめた。

「そんなんだから高二になっても彼女が出来ねーんだぞー」

「彼女いらねーもん!しーちゃんがいればいーもん!」

(いやぁ…あのぉ…)

 腰をギュッとされて身動きの取れなくなった栞は途方にくれた。

 助けを求めようとカウンターの向こうにいる拓弥を見たが我関せずとばかりに新聞を読んでいる。

「お、お腹空いたでしょー?早くご飯にしよー?」

 栞を挟んで対峙する二人に声を掛けた。

 だが睨みあう二人の耳には届いていないらしく返事もしない。

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