『美坂家の秘め事』81
「ただいまー」
夕飯の準備がほぼ終わりかけた頃タイミングよく優弥の声が玄関から響いた。
パタパタとスリッパの音を立てながら部屋へ入ってくる。
入って来てすぐにキッチンに立つ直弥を見て驚いた顔をした。
「直兄がいるー珍しーどうしたのー?」
「今日は休みー」
「えぇー?客の女の子口説いてばっかいるからクビになったんじゃないの?」
「バカ言うなっ!これでも副店長だっつーの」
「どーだかぁー」
カウンターにもたれながら直弥と優弥が喋っていると部屋着に着替えた栞が二階から降りて来た。
「優くん、おかえりー」
「たーだいまー、しーちゃん」
優弥はすぐにパタパタと栞の側へ駆け寄った。
まるで子犬のようにキッチンへ向かう栞のそばをくっついて離れない。
「ねーねー今日の夕飯なに?」
「今日はねー…」
「直弥のスペシャルプレートだ!」
栞よりも早く直弥が答えた。
「栞、スープよそえよー」
「はぁーい」
直弥と栞が仲良く並んでキッチンに立つ姿を見て優弥の表情が曇った。
恨めしそうな視線に気付いた二人が優弥を振り返る。
そして二人は顔を見合わせて目配せをした。
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