『美坂家の秘め事』6

「何で逃げる?」

「当たり前でしょ!」

「何がだ?」

「だーかーらー!私達は家族なのファミリー!分かる?そういう事したらいけないの!」

「誰が決めた」

 何そんな事で凄んでんのよ…

 徐々に詰め寄られて栞はだんだんと逃げ場所を失っている。

「か、神様が決めたの!」

「子供が出来なきゃ問題ない。それに…お前だって彼氏がいないなら寂しいだろ?」

「なっ!私は拓兄とは違いますっ!」

 栞はキッと拓弥を睨みつけた。

「ふぅん…この前夜中に栞の部屋からなんか声が聞こえてたけど気のせいだったのかなぁ〜」

 かぁーっと栞の顔が赤くなると拓弥はキョトンとした。

「なんだ、本当にやってたのか?」

「だ、騙したのっ?」

「人聞きの悪い!騙したんじゃなくてカマを掛けたんだ。」

「同じ事だもんっ!」

 栞は恥ずかしさと悔しさでで涙目になると拓弥の胸を拳で叩き始めた。

「拓兄のバカ!バカ!バカー!」

 栞のパンチなど効きもしない拓弥は抵抗もせずに全て受け止めている。

「拓兄なんか大っ嫌いっ!!」

 拓弥の瞳が大きく開いて驚愕の表情を浮かべる。

「し…おり…?」

 拓弥の顔が見る見るうちに青ざめていく。

 青い顔をしてプルプルと震えている拓弥を見た栞はすぐに後悔した。

 拓弥にとっては栞は目の中にいれも痛くない食べてしまいたいくらい可愛い妹なのだ。

 その栞から大嫌いとか嫌いとかそういう類の言葉を言われるとこの世の終わりが来たのと同じくらいの衝撃らしい。

「た、拓兄…ごめん。今のは言いすぎた…」

 さすがに栞も反省していて素直に謝罪の言葉を口にした。

「栞…」

「拓兄の事嫌いじゃないから!」

「本当か?じゃあ好きか?」

「もちろんだよ!」

「家族の中で一番好きか?」

 ここまで来るともう…。

「拓兄が一番だから」

 こうやって言うしかないじゃないの。

 だがその言葉もあながち嘘ではなかった。


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