『美坂家の秘め事』67
「そんなの…気持ちいいからだろ」
「…それって喜んでいいの?」
「なんで?今まで一番気持ち良かったって事なんだから喜んでいんじゃないか?」
「そっか…」
変に真面目な顔をして話す拓弥。
栞はその顔を見て小さく笑った。
「それと…」
栞が押さえつけていた手をどけようとした時に拓弥が口を開いた。
「栞は妹だから」
「普通、妹だからダメなんじゃないの?」
「まーそうなんだけど。妹がその辺のいい加減な男と適当にエッチするのはやっぱり心配だろ?」
(なんか…正論っぽい事言ってるけど…)
押さえられていた栞の手から力が抜けると拓弥は自由になった手で太ももを撫でながら奥へ進んだ。
「それに…エッチが下手なくせに女とヤりたがるような男に大事な妹を性欲処理の相手として差し出せるか!」
(性欲処理の相手って…)
言われている事は間違っていないけれど言い方を変えただけでこんなに嫌な響きになるんだ。
「拓兄だってやってる事変わらないくせに」
不貞腐れた栞がむくれながら答えると拓弥が笑った。
空いている方の手で栞の髪を撫でる。
「全然違うだろ。俺は栞のお兄ちゃんで栞が可愛くて仕方がない。それにだ…」
「なによ」
「エッチは上手いだろ?」
「…プッ!!あはははっ!」
栞は思わず吹き出した。
どこまでもマイペースで言ってる事はめちゃくちゃなくせにいつも「お兄ちゃんだから」と弟妹達をひっぱっていく。
それを誰も嫌だとは思わない。
それは「お兄ちゃんだから」と胸を張って言う拓弥自身が弟妹達の兄でありたいと一番願っているからだ。
そんな兄の拓弥がセフレになりたいと言い出した。
「拓兄だもんね。うん」
他の二人だったら絶対に受け入れなかっただろうなと思うのはやっぱり「お兄ちゃんだから」だったかもしれない。
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