『美坂家の秘め事』66
「ってことで…とりあえず今からしよーか」
「ちょ、ちょ、ちょっと…待って!」
「なに。やっぱりはナシだって言っただろ」
「そーじゃなくって」
スカートの中に入ろうとしていた拓弥の手を栞は間一髪押さえ付けた。
ムッとした声の拓弥が栞を睨んだ。
暗闇の中お互いの表情が分かる程近づいた二人の視線が絡む。
「直兄や優くんには絶対バレないように」
「分かってる」
「ちゃんと避妊はしてね」
「もちろん」
「彼氏が出来た時点で終わりだからね」
「とーぜん」
拓弥は栞の言葉に即答しながら頷いている。
聞く事がなくなってしまった栞は黙り込んだ。
この時を待ってましたとばかりに拓弥はニヤッと笑う。
「もういい?」
「最後に…一つだけ…」
「なに?」
「なんで…私なのかなって…」
そんな質問したから何が変わるというわけじゃないけれど気が付いたら聞いていた。
さっきまですぐに返事をしていた拓弥が答えをためらっている。
(こういう質問こそすぐに答えてよ)
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