『美坂家の秘め事』39

 シャワーを浴びて戻ってくるとベッドの上にうつ伏せになった栞の姿が目に入った。

 コトが済んだ後のこういう光景は何度も見てきた。

 けれど自室のベッドでしたのは初めてで当然女が裸でいることも初めてだった。

(色…白いよな)

 なだらかな曲線を描く白い躯。

 乱れた髪が艶かしい雰囲気を出している。

「栞、起きれるか?」

 乱れた髪を手櫛で梳いた。

 短く返事をした栞がだるそうに体を起こすのを待ってから上着を渡した。

 服に覆われてしまうその一瞬もう一度ジッと体を眺めた。

(結構…いい体してたよな)

 性欲なんてものは本当にいい加減なものだ。

 性的に興奮するような物を見せられて触って勃つモノが勃てば後は挿入して出す。

 たとえ相手に特別な感情がなかったとしても大抵の場合は成立する。

 そして相手に特別な感情があれば快感の度合いが変わってくる。

(すげぇ…気持ちよかったよなぁ)

 それが特別な感情から来るものなのか体の相性から来るものなのか拓弥は自分でも分からなかった。

「私もシャワー浴びてくる」

「おぉ、あんま時間ねぇぞ」

 拓弥は時計を指した。

 一人残った部屋でもう一つの理由が頭に浮かんだ。

 非日常的なシチュエーション。

(妹の栞とだから…か?)

 軽いノリで始めた数時間の情事が殊の外気持ち良かった事実に拓弥は戸惑いを感じていた。


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