『美坂家の秘め事』14

 そんな栞の様子を見た拓弥が困ったように頭をポリポリ掻いた。

 少し考えてからベッドに上がった。

 今度は栞の体の上には覆い被さることをせず壁にもたれるようにして座った。

「栞、おいで」

 拓弥が手招きをして栞を呼んだ。

 栞は起き上がって拓弥に近づいた。

「ほら、抱っこしてあげる」

 そう言うと栞の脇に手を入れて自分の足の上に座らせた。

「た、拓兄っ」

 また膝の上に抱えられてしまった。

 けれどさっきよりも薄暗い部屋のせいか心拍数が上がる。

「怖いの?」

 優しく微笑む拓弥が俯く栞の顔を覗き込む。

「こ、怖いわけないじゃん!エッチなんか何回もした事あるんだし」

(ほんとなんだから…別に怖いわけじゃなくて、ちょっと緊張してるだけだし…)

 嘘は言っていないと自分自身に言い聞かせた。

「ふぅん、何回もねぇ…」

 小さく呟いてから栞の小さな唇を親指で撫ぜた。

 唇の輪郭を何度もなぞられているうちに栞の唇が少し開いた。

「どんな風にされたら気持ちいい?俺に教えてよ」

「どんなって…」

「キスは?舌…吸われるのと絡めるのどっちが感じる?」

 低く甘い声が栞の鼓膜を刺激する。

(もう…始まってるんだ…)

 さっきまでのからかうような態度が消えて急に男っぽくなった拓弥にドキッとした。

「ほら、どっち?言わないと分からないよ」

 唇をなぞられながら空いた手が栞の髪を優しく梳いている。

「どっちも好き…」

 まるでうわ言のように呟いた。

 クスッと小さく笑う拓弥の声が聞こえた。

 体がカァッと熱くなって俯こうとすると唇を撫ぜていた指が顎を掴んで阻止する。

 一瞬二人の視線が絡んだ後、目を閉じてどちらからともなく唇を近づけた。
  

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