『美坂家の秘め事』13
(何でこんなに緊張してるんだろう)
まるで初めてエッチした時のように心臓が早鐘を打っている。
「自分で脱ぐ?俺に脱がされたい?」
と、言っても着ているのはだぼだぼのスウェット一枚だった。
「どっちでもいい」
栞は素っ気無く返事を返した。
恥ずかしさで顔を横に向ける栞に拓弥はソッと顔を近づけた。
「じゃあ、服着たまましようか?」
最後にフゥと息を吹き掛けられて慌てて耳を塞ぐ。
クックックッと拓弥の笑い声が聞こえた。
(絶対からかって楽しんでるんでしょ)
栞は恨めしい視線を拓弥に送った。
「俺はね…脱がせる方が好きなんだよ」
栞の上着に拓弥の手が掛かった。
バサッと栞が上から拓弥の手を押さえ付けた。
「なに、今さら嫌とか言うわけ?」
拓弥が少しだけ不機嫌そうな声を出した。
「カ、カーテン…」
栞の言葉に拓弥がキョトンと目を丸くした。
不安そうな栞の瞳がチラチラと拓弥を見上げている。
「お前って本当は処女?」
「な、なんでっ!」
「だって暗くしないとダメーなんてどんなだよ」
「うるさいなー!嫌ならもうしないっ!」
栞は頬を膨らませてプイッと横を向いた。
拓弥は苦笑いを浮かべると栞の上から降りて部屋のカーテンを閉めた。
真っ暗とまではいかないがさっきまでの明るい室内よりは幾分薄暗くなった。
「これで宜しいですか?」
少しからかうような口調で拓弥が尋ねると栞が小さく頷く。
「他にはありますか?」
「ちゃ、ちゃんとゴム使ってよ?」
「それはもちろん。妊娠したから責任取れって言われても困るからなー。つーか大問題だな」
真剣な栞に対して拓弥は軽く返事を返した。
栞は小さくため息を吐いた。
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