「この頃、四島先生機嫌よさそうじゃないですか?」
「お前は骸骨の表情がわかんのかよ」
あの日から数日が経って。
時折、わたし達は四島先生の演奏を聞くようになっていた。最初は近寄っていいのかと遠慮していたものの、どれほど近寄ろうとあまつさえ身体を揺らされても先生はピアノを演奏する手(いや、骨?)を止めなかった。本当に先生はピアノを弾くためだけに今動いているんだなと実感させられて、嘆息した記憶は新しい。
「ま、心が無くても、先生は根っからの音楽家だからな、自分の演奏が喜ばれると条件反射で嬉しくなるもんなんだろ」
身体に染み付いてんだよ。そう言って笑ったのは先輩。そうなんですか、と返事。
「そろそろ、ですね」
わたしは腕時計を確認した。時間は午後七時を回ろうとしていた。
からり、と引き戸を引かれる。
さあ、先生の密やかな白い演奏会が始まる。

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