30万打リクエスト | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

▼騎士も男子高校生

「なんか、フェスとは別に、普通に学園内だけのハロウィンパーティーをやるってお達しが来てるんだけどさあ……? 名前が決めた企画なの、これ?」
「え、いずみんに聞いて初めて知ったんだけど」
「アタシも今朝、校内の掲示板で見たわよぉ。1年生から3年生まで、仮装して夜の校舎でお祭り騒ぎする〜みたいなイベントみたい。し、か、も! 教師陣も仮装するって書いてあったのよぉ〜!」

くねくねと嬉しそうに体をよじる鳴ちゃん。泉はやれやれと言うような顔で肩をすくめた。

「椚先生の仮装とか、どうでもいいんだけどぉ?」
「興味あったら怒るわよぉ、逆に!」
「ふぁぁ……まぁ、夜にやるお祭り騒ぎなら大歓迎だけどねぇ。俺も生き生きと跋扈(ばっこ)できるわけだし」
「凛月先輩、まるで本物のMonsterのような口ぶりですね」
「ふふ、まぁねぇ……♪ 仮装大会かぁ、何を着ようかな……?」
「珍しく凛月が乗り気なのはいいことだよね。でも私も楽しみ。ユニット単位の衣装じゃなくて個人の選ぶ衣装だもんね」

本当に楽しみだ。うーん、泉は何が似合うだろう? それこそ仮装と言っても、怪物だけに範囲を絞らなくてもいいのだ。いっそ甲冑のような格好をしてくれたらいいのに。まさに騎士! って感じの。

まぁ泉にそれを言ったら、「絶対重いじゃん、却下」って一蹴されたけど。

「そういやレオは?」
「まだ来てないわねぇ」
「またか……ちょっと探しにいってくる。ついでにレオにもハロウィンの説明してくるから、先にレッスン始めてていいよー!」
「かしこまりました、お姉さま。Leaderの捜索という面倒ごとを率先して引き受けてくださる、その寛大なお心……司は感銘いたしました!」
「はいはーい、かさくんはべた褒めしすぎだからねぇ? 名前、さっさと連れてきなよー」

了解、と手をひらひらと振ってスタジオを出て行った。



ハロウィンパーティ当日。
結局、レオは海賊衣装、泉は悪魔っぽい衣装、嵐は女王風の衣装、凛月は不思議の国のアリスに出てくるチェシャ猫、司はドラゴンっぽい尻尾つきのかわいらしい衣装……等々、定番だったり愛らしかったりするスタンダードな仮装をしてきていた。お互い、案外真面目に仮装をしているので笑ったものだ。

「そういや、今日名前ちゃんの格好見た人いる〜?」

嵐の問いかけに、全員が無言。お互い探る様に視線を交わし合っているところから、誰も見たものは居ないらしい。

「え、何。王様も見てないわけぇ?」
「おれも気になったから、一緒に着替えようって言ったんだけどなー? 転校生に物凄く怒られて追い出された! わはははは☆」
「うん、それは怒られてしかるべきだよね……? てか王様が見てないんじゃ、俺たちが見てる訳ないでしょ……」
「お姉さまはどんな服を着ているのでしょう……♪」

末っ子の楽しそうな声に、皆ぴくりと反応した。

「司はやはり、王道な魔女を推したいです……♪ とんがり帽子に黒いワンピース、とてもCuteです」
「あらあら、司ちゃんったらやっぱりお子様ねぇ? 転校生ちゃんが赤ずきんちゃんだし、童話系で攻めてくると予想してるわよぉ」
「童話……と言いますと、Princessですか?」
「そう! ドレス姿見たくない? ねぇ泉ちゃん?」
「なんで俺に振ってくるのか意味わからないんですけどぉ?」
「そうだよナッちゃん、セッちゃんが見たいのはウエディングドレス……♪」
「ぶっ飛ばされたいのかなぁ、くまくん?」

顔を赤くした泉が凛月を捕まえようとしているが、夜の凛月はすっかり目が冴え、とてもすばしっこい。ひょいひょいと避けている姿を、レオが楽しそうに笑いながら見ている。それが気にくわなかったのか、泉は矛先をレオに向けた。

「笑いすぎでしょ、チョ〜うざぁい。ってか、王様こそ予想してるの?」
「え? おれは宇宙人のかっこが見たい!」
「どういう格好か予想つかないわよ、その仮装」
「俺は、どうせならアリスの服着て欲しいけどなぁ。俺とお揃いになるし……♪」
「なら、サキュバスの格好でもしたら泉ちゃんとお揃いねぇ」
「お揃いしたいなんて俺、一言でも言った? 言ってないよねぇ? 何が言いたいのかな、クソオカマ?」
「つまり、セナは名前が大好きってことだなー! わはははは☆」
「そういう事ねぇ♪」

わいわいと名前がなんの衣装を着てくるかで盛り上がっている姿は、すっかり一介の男子高校生だ。しかし、それも司の「おわっ!?」という声で突然終止符を打たれたが。

先輩勢が振り返ると、そこには司と、シーツを被ったド定番のお化け衣装を着た生徒が。

「な、なんなのですか!? びっくりさせないで頂けますか、不敬にもほどがあります!」

確かにその布お化けは、顔こそファンシーだが、無言で背後に立たれると中々不気味なものがある。お化けはさらに司にぐいぐいと迫ってきて、司が上半身をのぞけらせていく。

「わ、わわわ……」
「…………」
「な、ななな……?」
「…………うにゃーーー!」
「うわあああああ!!!?」

がばぁ! と布お化けが大きく手をあげて司に謎の威嚇。なぜお化けなのに猫風の威嚇なのか、などなどを泉は問いただしていきたかったが、当の司は驚いて尻餅をついている。

「あらあら、悪戯されちゃってるわねぇ司ちゃん?」
「問答無用でTrickとか、面白いねぇ……♪」
「そ、そうです! Trick or Treat! それすら言わずに強制的にTrickだなんて非道ではありませんか〜っ!」

司がぴーぴーと文句を言っている。無言で司を見下ろしていた布お化け。

しかし、その布お化けから、くすくすとかわいらしい声が聞こえてきたのだから、『Knights』の皆が「!?」とお化けを凝視した。

「ごめんね、司くん? せっかく仮装したから、悪戯してみたくって……」
「なっ、ま、まさか……名前お姉さま!?」
「せいかーい♪」

布お化けが片手をあげた。何をしてもモタモタとした感じになるので、確かに可愛いし、庇護欲をそそられる感じではある、あるのだが……!

(((((なんで顔すら出ない格好――!?)))))

今この瞬間、協調性のない『Knights』の心の声が一つになった気がした。

「名前ちゃん……可愛いわ。素敵よ。でもね、アタシたちは今凄く傷ついてるわ……」
「えっ!? なんで!?」
「おれたちの男子高校生としての期待が打ち砕かれた……この妄想殺し! いや、ある意味妄想を超えてるのか!? 名前って天才か!?」
「はっ? 期待?」
「そんな格好、うちの女王がすべきじゃないと思うんですけどぉ?」
「なんだろうね、この……全力でフラグブレイクされた感じ……?」
「お姉さま……ぜひ着替えてくださいまし。Evening Dressなどが司は好ましいです」
「え、え? なんで今すごいブーイング受けてるの? このお化け可愛くない? ゆるキャラ書くの上手いあんずちゃんに書いてもらったのに!?」

名前が……というか布お化けがおどおどとしている。のろまな動きなので、さっそくレオが布の端を掴んだ。めくり上げようとしているのに気づいたのか、ばっと名前がレオの掴んだ場所を掴み返し、しゃがんでそれを阻止しようとしている。

「名前、お着替えしましょうね〜♪」
「やだ! レオ離して!」
「……セナ、逆側引っ張って」
「☆唐突にレオが鬼畜――!」
「悪いけど覚悟しなよぉ、名前? 俺の美的センスがこれは許せないって叫んでるからねぇ」
「お姉さま、覚悟はよろしいですか」
「俺と一緒に、不思議の国の格好しようねぇ……♪」
「ひぇええ! 鳴ちゃん助けてー!」
「いやだぁ、名前ちゃんったら四人の男に求められてる……えっち♪ 写真撮っちゃうわね〜」
「何言ってるか分かんない! わかりたくない!」

――その後、【『Knights』が女王を無理矢理脱がせようとした】という半端に間違っていない情報が流れた、というのはまた別の話である。

- 41 / 52 -
▼back | novel top | bkm | ▲next