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 トゥインクル1

天ノ弱臨也さん視点






知ってたさ、俺はずっとお前のことに執着していて、これからだってきっとずっと

「君って本当に静雄のこと好きだよね。もう付き合っちゃえば?」
「………」
 たぶん、怒ってる。いつも以上に丁寧な動作で行われた処置とぴりぴり肌を刺すような空気をあえて作られた上、とどめにあからさまな作り笑顔でこんなことを言われて気付きませんでしたと言えるような浅い付き合いじゃない。
 今回の件で運び屋に迷惑をかけた覚えはないんだけど、経過を思い浮かべてみてもやっぱり彼女には繋がらない。シズちゃんとの喧嘩にも今日は彼女は絡んでいない。なんて返事をしようかと包帯を巻いてもらった右手を見ながら黙っていると新羅が深いため息をつく。
「毎度毎度付き合わされる俺のことも考えてよ、君に言ったところで無駄だとは思うけどさ…わかってるのかい?一歩間違えば、」
「わかった、わかったよ」
 だからもう小言はやめてくれ。首を振って続きを拒は否するとまた深いため息をついて新羅が立ち上がる。
「捲き込まれたくないとは言わないよ。君のすることを止めるつもりもない。ただ俺はね、君のことを友人として―」
「心配してくれてるんだよね、知ってる、分かってるよ。それを俺が疎ましく思っていることも知ってる、だろ?分かってる、治療ありがとう。」
 逃げるように、と言われても否定できない。新羅の言葉を遮って、早足で部屋を出る。

―静雄のこと、好きだよね
―付き合っちゃえば?

 それが本気じゃないことくらい分かってる。でも二度とそんなひどいことを言わないでほしかった。
 あいつの言う通りにして、いつもよりひどい怪我をしたらもう言わないでいてくれるかな、なんて。本当に俺はあいつのことばかりだ。仕方がないじゃないか、だって好きになっちゃったんだ。
 付き合って、恋人になって。思えば初めて口にする言葉だった。シズちゃんは思いの外冷静で、何を思ったのか頷いて俺を抱き締めた。
 大きさを比べるように合わせた手は自分より一回り大きくて少しあったかい。
 あいつが恋人に、こうしていることがどうしようもなく辛かった。俺がもし女で化け物であの妖精よりもはやく出逢っていたら、でもきっと変わらない。あいつは俺に首がなくても、振り向いてなんてくれないんだ。
 別に大切にとっていたわけでも、いつかを期待していたわけでもない。ただあいつ以外としたいなんて思わなかった行為をこれからシズちゃんとするんだ。じわりと涙が浮かんできたのは、気付かれてないといい。

「シズちゃんと付き合うことになったよ。」
『は?』
「恋人として。一応、報告しておこうと思ってね。」
 慌てるような新羅の声が聞こえたけど無視して通話終了ボタンを押して携帯を放り投げる。新羅が慌ててくれたことに喜ぶはずだったのに、そんなことよりもシズちゃんがおかしかったことが気になって新羅の反応なんてどうでもよくなった。
 いったい、どういうことなんだろうか。あの時は自分のことでいっぱいいっぱいだったから気にならなかったけど、シズちゃんはどういうつもりなんだろう。シズちゃんには何のメリットもない。嫌がらせにしてはシズちゃんへのダメージが強すぎる気がする。
 それに、なんだか優しい。夢でもみているような感じだった。

 さっき、ついさっきシズちゃんと付き合うことになった。

 自分から言ったのに、シズちゃんから抱き締められて耐えきれなくなった。やっぱり俺は、あいつじゃないとだめなんだ。なにもしたくない、触られたくなんかない。ごめん、と。ちょっと自分はおかしかったんだとシズちゃんを突き離そうとしたとき、タイミングよくシズちゃんが離れた。
 言わなきゃ、ぐっと息を吸って吐き出す、より1拍前にシズちゃんが口を開いて低い声が俺の言葉を制止した。
「あのよ、恋人だっつうんなら携帯の番号とか、教えろよ」
「え?」
「だめ、かよ…」
 付き合うってことがどういうものかなんて全く考えてなくて、最初シズちゃんの言った言葉の意味がよく分からなかった。うかがうように不安そうに聞かれて、やっとそれが連絡先を渡せという意味だと理解した。
 そうか、恋人なら当然だ。赤外線でシズちゃんの携帯にプロフィールを送って携帯をしまうと俺のも受けとれと焦ったように腕を掴まれた。俺と連絡先なんか交換してどうするの?あ、そうだ恋人になったんだ。

 信じられないことに、動揺したせいでシズちゃんにやっぱりやめると言うタイミングを逃してしまった。







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