short | ナノ

 相互依存

彼の恋の続き。
静←←臨前提の正→臨です。
元気になりました。







ねえきっと

きみはしんじてくれないだろうけど





「紀田君、今日の空は何色だい?」

一人言のように呟くと、背中に指であおとなぞられる感覚がした。不思議な子だねきみは。

「そうだね。抜けるような青だ」

(うそつき)

誰に向かってかは分からない。映るのは焼けるような赤い空。

どうせ気付いているくせに、きみはどうして嘘をつくんだろう。不思議、不可解、

目が見えなくなった、
耳が聞こえなくなった、
それは確かに嘘じゃなかった。

『俺がいます、臨也さん』

少年が呟いた声が、微笑みが、なんの障害もなく自分に届いてしまってから
目も耳も、なにごともなかったみたいに鮮やかに世界を受け入れた。

それを紀田君に告げないのはなんでだろう。

見えないふりをしてみたら、紀田君はとても優しく笑っていて思わずそんなに嬉しいならこのままでもって

いったい自分はなにを考えていたんだろう。

紀田君に求めたのは、ほんのわずかな気休めだけだったはずなのに。

空の方向を眺めていると携帯の音が鳴り響く。視界の端で紀田君が携帯を手にとって何も言わないで机に戻す。

すぐに着信履歴を消しているのは俺の目が正常に機能していると知っているからでしょう。

自分の携帯を耳に当てて部屋から出ているのは俺が君の声を聴いていると分かってるからだよね。

なにがしたいんだろう

君も、俺も。


目を覚ましてから眠りにつくまで傍にいて甲斐甲斐しく世話をやいて話し相手になって、

(自分の周りを、やんわりと制限していく)


「浅はかだよねぇ…」

まるで優しい独占欲のようだ。

気付けばこの数週間、紀田君以外と会話をした記憶がない。愛しい人間を蔑ろにして、ただ紀田君だけを見つめていた。

なんでこんなことをするの
いつまでつづけるの


どうして君は、優しくしてくれるの




きらいな、おれに



『ねぇシズちゃん、好きだよ』
『きみがすき』
『すきなんだ』

『ごめんね』

言うつもりなんてなかったのに
自分と喧嘩してるときに、後輩の女の子を庇って俺を見逃そうとした君をみてなにかがぷつんと切れたんだ。

俺のことだけみてほしかったの
俺の声だけきいてほしかったの

(殺しても、くれないんだね)

自分に背中を向けて誰かのもとに帰っていく姿なんて、みたくなかった。

自分を拒む言葉なんて聞きたくなかった。

だから見るのをやめて、聞くのをやめて

彼に似た少年に同情でもいいから優しくしてほしかった。
それだけだったのに。

自分に向けられた笑顔に、ねぇいてくれてありがとうって



「……同情じゃなかったらいいのに、なんて」

焼けるような赤はシズちゃんに背中を向けられた瞬間の空の色。

紀田君が伝えてくれる空はいつも青い。嫌なものを見せないように、あまいあまい、うそをつく。

「臨也さん」

柔らかい声を無視して空を眺めていると、あたたかい指が手のひらをなぞる。



ねぇきっと

君は信じてくれないだろうけど

君がそうしたいなら俺は、君だけの俺になってもいいと思ってしまってるんだよ


「本当に、きれいな空だ」



だからどうか

俺だけの君でいて



end


同情にすがりたくなっちゃうくらい、
彼に恋していたの






prevnext

back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -