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05 夕暮れ時は恋色に


布団が暑くて目が覚めた。視界は真っ暗、いつもの押し入れの中だ。銀ちゃんはいつもバカにするけどこの真っ暗な中が落ち着くのだ。
そんないつもの押入れなのに違和感を覚える。なにかが違うような、そうでないような。自分で言うのもなんだけど大体寝たら朝まで起きないのに、どうして目が覚めてしまったんだろう。

「そうだ」

時間が経つにつれてだんだんクリアになってくる頭。
今日は誕生日で昼間はいろいろあって、なんやかんやで新八の家に行ったらいる筈のない沖田がいたんだ。どうしていいか分からずにかなりの挙動不審だったに違いない。とりあえずバレてはいけないととりあえず食べまくって騒いでた、ような。そんでもって…気付けば押入れ。
なんだ、銀ちゃんが家まで運んできてくれたんだ。その間一回も目が覚めなかったなんてすごいなぁ。

「しかし…あっついネ」

とりあえず暑くて喉がカラカラだった。干からびる前に水を飲みに行こうと体を起こすとゴロンと何かが自分の上から転がる。
あれ、布団ってこんなに重かったっけ。
そもそもさっきからの違和感て。
真っ暗中大分目は慣れてきたもののどうやら私の頭は完全クリアにはなっていなかったようだ。だけどいくら目をゴシゴシと擦っても今の目の前の状況は変わることは無かった。

「…」

暑さの原因、重い布団だと思っていたのは―…沖田だった。それは暑いはずだ、狭い押し入れに二人いるのだから。
いやいやそうじゃなくて。なんで沖田がここに?彼がここまで自分を運んできてくれたのだろうか?じゃぁ銀ちゃんは?
それも気になることだけど。今横にいる沖田の寝顔が気になって仕方ない…というのが本音、いやいや全然イヤラシイ意味じゃないんだから!
「だけど…ちょっと可愛いカモ」

吸い込まれるように顔が引き寄せられ、頬に唇が触れた。男のクセにさらっと滑るような感触に胸がドキドキしてくる。

「…寝込みを襲うなんて大胆だなァ」
「…っ!」

ぴくりと体が動いた時にはもう遅かった。慌ててどこうとするも沖田の手で頭を押さえ付けられそのままの体勢から動けなくなる。私が沖田の上に乗っかっている状態、コレは恥ずかしい。

「おまえ、起きてたのかヨ…」
「てめえが急に起き上がるからだろ」
「ひ、人の上に乗っかってるのが悪いアル…暑くて目が覚めちゃったダロ…」
「押し入れが狭いのが悪い」

後頭部を押さえつけていた手に力が篭りぐいっと引き寄せられ、唇同士が重なり合う。はじめはちゅっと音を立てるようなふざけたそれが次第にエスカレートしていき、深く長く舌を絡めれば呼吸もままならない。二人きりのときにしかしないそのキスに抵抗する力が抜けてドサリと胸の上に倒れこんでしまった。
そして腕の中に包まれてそのまま抱きかかえられるように沖田が覆い被さってきた。そして再び角度を変えて唇を重ねようとしてくる沖田に腕を伸ばして抵抗する。

「そ、そもそも!何でココにお前が居るネ、ってうか銀ちゃ―」

ふわっと腕に入れる力が軽くなったと思ったら沖田はだるそうに上半身を起こした。それにほっとしつつ急いで私も起き上がると今度は腕が引っ張られて後ろから抱きしめられてしまう。
寝起きのせいかその体はすごく熱かった。

「…その旦那に頼まれたんでさァ」

その体勢から耳に直接息が吹きかかって、ぞわぞわと背筋が震え上がる。それをなるべく意識しないように話するのは大変だった。

「銀ちゃんはどこにいるネ」
「旦那は姐さんの家にお泊まり」
「は?」
「いや、は?じゃなくて。まぁそういうことだから」
「…意味分からないネ」
「今ここにいるのはお前と俺のふたりきり、と言うことだろィ」

ふたりきり、とわざとらしく強調していう沖田の顔は見えなくても良くわかる、絶対ニヤニヤしているはずだ。絶対からかっているんだ。
いやいや、そうじゃなくてだ。

「銀ちゃん…バレバレアルな」
「ま、仕方ないだろ」
「うー…」
「嫌なの?」
「そーじゃないけど…」

そういって耳に舌が這う。
銀ちゃんがここに居なくてほっとしたようなそうでないような。
控えめだったそれがぴちゃっといやらしい音に変わり始めると焦りを隠せなくなる。二人きりになりたいって思っていてもすぐにこういう事になる…のはちょっと嫌だ。普通にくっ付いていたいだけなのに!って思っていてもそのまま流されてしまいそうになる。こんなの私の我が侭なんだろうけど。こいつにはちっとも伝わっていないんだろうけど。

「押し入れなんて狭くて嫌だと思っていたけど、意外とドキドキするねィ」
「変態」
「んなこたぁねーだろ」

やっぱり、だ。結局そーゆーことしか考えてない。
暑かったことも喉が渇いていたこともすっかり忘れていたけどこれを切り抜けるにはそれしかない。逃げるように絡む沖田の腕をを振りほどいて襖を開けようとしたけど、ぎゅっと力が篭っていて身動きができなかった。いや、しようと思えばできるけど襖が半壊しかねない、それこそどうしよう。

「どこ行くんでィ」
「水飲んでくるネ」
「後ででいいじゃねーか」

→「…干からびちゃうネ
→「R-18


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