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04 夕暮れ時は恋色に



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今日はチャイナの誕生日。
もちろん知らないわけがない。柄にもなくあれこれ悩んでプレゼントも用意したし。準備は万全、のはずだった。
しかし。
今日は夜勤が入ったからよろしくなと近藤さん直々に話がきたのは朝の事。それはもう正にウキウキ気分で出掛けようとした時だったのだ。
でもそのおかげと言っていいものか。今日は普段は見ることの出来ないチャイナの一面を見ることが出来たので良しとした。そして真面目な俺はすごく、ものすごく名残惜しい気持ちを仕事モードに切り替えて屯所戻ってみれば…こういう事になっていたのだ。
チャイナをびっくりさせる為なんだろうが俺まで嵌めてどうする。
…ってアレ?

「沖田君随分強いじゃない」
「他が弱すぎなんじゃねーですかね。旦那も弱いと思ってやした」

近藤さんは脱いで全裸になって、山崎はどこから出したのかミントンの素振りを。万事屋のメガネはあんな声何処から出るのかというような酷い声で歌い、姐さんは素っ裸の近藤さんに殴りかかっていた。酒の力とは計り知れない。
チャイナは、と言うと部屋の隅で寝ている。チャイナの事だ、直ぐに顔に出てしまうと思い特に絡まずにいたけど真っ先に寝てどうする。やっぱりアホだろ、アホ。

こうしてまともなのは旦那と自分だけ。気づけば二人で冷酒を酌み交わしていた。

「銀さん舐めちゃいけないよー。あ、お宅の大将がダウンした」
「あらら、明日の仕事大丈夫ですかねィ…あとは山崎だけか、頑張れよー」
「沖田君…棒読みだけど」
「そんなことないですぜ、あダメだ」
「残ったのは俺たちだけかー。どう、沖田君。勝負してみる?」

そう言いながらまだ半分も残っているカップに波々と酒を注いでくる。今日は他が酷すぎてとてもじゃないけど純粋に酔える感じはしなかった。けど充分に体内にアルコールは入っているわけで。これ以上はマズイ、うんマズイ。

「止めときます」

そしてお返しと言わんばかりに旦那のカップにも注いでやった。

「随分と弱気じゃないの」
「皆のようにはなりたくねーんで」

会話が途切れ沈黙が訪れると頭がぼーっとしてくるような気がして。気づくと旦那は座布団を枕にして爆睡しているチャイナを見ていた。

「…マフラー」
「…」
「あれ、あげたの沖田君でしょ?」
「…」

やっぱりだ。絶対に聞かれると思った。
気づいているんだろう俺らの関係に。そもそも姐さんが近藤さんを誘うのだっておかしいじゃないか。朝の近藤さんも今日何があるのか一切話さなかったし。
隠しているつもりなのは本人達だけでまわりにはバレバレだったって事か。

「ええ、そうですが」

空になっていたカップに再び酒が注がれる。

「神楽に似合ってるじゃないのー。いいなー青春だなー」
「からかわないでくだせぇよ、…そういうの結構恥ずかしいんで」

視線をそらす俺をみて旦那は楽しそうに笑いだした。どうせこの人から見たら俺らなんて子供なんだろう。どう答えても笑われるのは避けられない事。

「へー沖田君でも恥ずかしい事とかあるんだ、意外だなぁ」
「いい加減にしてくだ―…」
「あー神楽な、家まで連れてってくれる?あいつ押入れじゃないと寝れないのよ。ったく誕生日迎えたってのにいつまで経っても子供染みていけねぇや」
「いや、がっつり寝てますが…現在進行形で」
「俺らは帰んのめんどうだからここに泊っていくから、うん。一応ゴリラにも布団掛けといてやるから心配しなくてもいいよー」
「だん―…」
「んじゃぁ、よろしくなー」

そう言ってぽんと肩を叩かれる。
何を急に言い出すのかと思えば。この人はすること言うことに全く予想がつかない。彼女の父親みたいになっているからてっきり咎められるのかと思えば、こんなことをさらりという。大体チャイナを万事屋に送って、自分は帰らないっていうのならこの先のどうなるかなんて―。

「旦那。どういうつもりで?」
「色々とあるんじゃないかと思ったんだけど違う?」
「…ま、旦那と違って青春してますんで」
「ぐっ…今銀さんに何か刺さったような…酷くない?この銀さんの配慮にもうちょっと感謝してもいいんじゃぁないの」
「じゃーお言葉に甘えてチャイナお持ち帰りさせて頂きやす」
「ちょっッッ、その言い方なんかやらしーからやめてェェェ」
「連れて帰れっつったの旦那じゃねーですか。今更遅いですぜ」
「そーだけどォ。そーゆー風に開き直られるとなんか腹立つってゆーかぁ―…」
「じゃ、とっととこの辺片付けて失礼しやしょうかね」

食器や食べ残しやゴミやらが散乱したテーブルに目をやった。まさかこのまま帰るわけにもいくまい。子供の頃から姉と二人だっただけあって片付けとかきちんとやりなさいと教えられてきた。意外にも家事とか一応できるのだ。普段は面倒だからやらないだけで。

「手際いいね」
「意外でしたか?…飯も作れますよ」

散乱した食器を重ね、食べられる物は別な皿にまとめておく。ゴミもまとめ小さな袋に一まとめにした。

「マジでか。そういや新八も片付けとか得意だよな。姉ちゃんいるとそうなっちまうもんなのかねぇ」
「…うちの姉上はもっとおしとやかでした」
「あぁ…味覚以外はな…」
「…食器、洗いたいんですがどこですかね?」
「あーこっちだよ」

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