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09 君と僕の絶対領域


目が覚めるとそこはベッドじゃなかった。 電気は付けっぱなしで、部屋は散らかったまま。そこら辺に転がって寝ている野郎ども。そして自分も野郎どもと同じ状況下にいる。テーブルを挟んだそれぞれのソファには志村姉とチャイナが、それぞれ寝ていた。
体を起こすと、頭がぐらっとする。
テーブルに散乱しているアルコールの空き缶が全てを物語っている。あの後、こっそり買っておいたアルコールに手を出してそのまま全員がダウンしたということか。 時計を確認すると夜中の3時で、チャイナを銀八の所に帰さないと、と一瞬焦ったがそういえば今日は志村姉のところに泊まるとかなんとか言っていたのを思い出してほっと胸を撫で下ろした。
しかし、これは酷い。 立ち上がり、踏みつけないようにしながらチャイナのいるソファに移動するが、そこで俺は見てはいけないものを見てしまう。
一言でいえば、スカートの裾が捲れて下着までまは見えずとも白い太ももが露になっている。チラリズムもいいところ、これは非常にヤバい。

「…」

飛んでいきそうになる理性を必死に引き止めながら裾を直してやった。最初に見たのが俺でよかった。そう思いながら未だにそこから目が離せない。いや、俺じゃなくてもそうなるだろ健全な男子だったら普通だ普通。…やっぱり最初に見たのが俺でよかった。 これじゃまたそのうちスカート捲れるだろ、なんて思っているとチャイナの目がばちっと開いた。それはもう急に。 なにもやましいことはしていないはずなのに焦ってしまう。

「…うー」

まだ寝ぼけているのか何も反応なし。

「おはよ」
「…」

まだ反応なし。
ばちばち。
未だに激しく瞬きするその顔を覗きこんでやると、状況が飲み込めたのかチャイナは慌ててスカートの裾を確認する。 …寝相悪いの自覚してるんだな、なんて思いながらその仕草が可愛くて、つい余計な一言を言ってしまう。

「あぁスカート、直してやったぜ」
「…!見たのかヨッッ―…むぐっ」

思わずチャイナの口元を押さえてしまった。ここで騒げば誰か起きてくるだろう。あたりまえだが奴等をゆっくり寝かしておいてあげたいなんて気持ちは毛頭ない。

「静かにしねぇとみんな起きちゃうぜ」
「このエロガキ」

なんとでもいえ、大体あっている。 時間は真夜中、ソファに寝そべるチャイナそして隣に座る俺。普段じゃ絶対にないこの状況にちょっとドキドキしている、と言えば可愛い。ムラムラしてます、というのが本音。こんなおいしい状況に誰か起きてきてみろ、そいつに明日はない。

「…酷いアルな」

起き上がって周りを見渡したチャイナがそういう。

「まぁ、明日は休みだし、チャイナも志村姉のところに泊まる事になってるからよかったじゃねぇか」
「…なんか銀ちゃんに後ろめたい事してるみたいネ」


切れかかかったものが完全に切れてぷつんと音がした、ような気がした。 なんて他人事。
チャイナの口から『銀ちゃん』と言う言葉を聞く度に彼女を自分だけのものにしてしまいたい気持ちになる。 独占欲、なんていうものが自分にあるなんて信じられないけど、これはつまりそういうことなんだろう。 少し背を向けて座るチャイナに後ろから手を絡ませると彼女の体が硬直する。

「後ろめたい、ってこんな事とか?」

大きな声が出せない状況下で、ただ黙っているチャイナ。 そういえばこんなことをしたのは初めてだった。こんな風に体温を感じてしまうともっともっと欲しくなってしまう。ちょっと自分の行動に後悔していると、チャイナがこちらを振り返る。

「…離せヨ」

そう真っ赤にした顔で言われても逆効果だって分かっているんだろうか。 確実に今の俺は夜のテンションで舞い上がっている。

「チャイナ、俺…」
「ちょっ…みんな起きちゃうから離してヨ…」

見ると視界の隅で土方が寝返りをうった、第一の被害者はおまえか土方。

「こっち」

そっと耳元に囁き、チャイナの手を引いて部屋を後にする。

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