星が綺麗ですね




(この設定)


まただ。またこの女の子。

___の未来を視ようとすると、必ず現れるひとりの少女。まだ出会ってはないけれど、出会った瞬間結婚までが確定する。何度おれが___を誘導させてもどこかで必ず出会う、安っぽく言えば___の運命の人。

取られたくないと、そう思わないのは嘘だろう。だっておれはずっと好きだったのに、ずっと好きで、誰よりも愛しているのに、___を幸せに出来るのはおれじゃない。幸せにするどころかおれは邪魔ばかりだ。だからって、___の幸せの為に身を引く?冗談じゃない。おれのこのサイドエフェクトは良いことばかりではなかった。辛いことだってたくさんあったんだ。だから、ちょっとくらいおれの為に使ってもいいだろう。絶対幸せにするよ。してみせる。だから、許してくれ。


「……よっ___、お疲れ!」

「悠一さん!お疲れ様です。本部に来るなんて珍しいですね」

「城戸さんにちょっとな。___はポイント上げだろ?」

「はい、もう帰るところですけど」

「あ、『___はおれを送ってった方がいい』っておれのサイドエフェクトが言ってる」

「っふふ、分かりました。送ります」


そうやって優しく笑って優しく手を引くから。全部全部、___が悪い。未来を視ることが出来るおれなんかを惚れさせるから、こうなるんだよ。

自分の隣を歩く姿を盗み見ると、向こうもこっちを見てたみたいで視線がかち合った。


「なんでそんなに見て…。あ、さてはおれのぼんち揚を狙っているな?」

「あはは、違いますよ。そうじゃなくて、悠一さんと会うの久しぶりだなと思いまして」

嬉しいです。


なんてはにかむ___が悪くなくて、誰が悪いんだろう。おれも嬉しいよ、と答えたこの言葉に嘘はない筈なのに、このじくじくとした痛みはなんだろう。息が苦しくなって、全身が鉛みたいに重い。

蓋を、しよう。この苦しみも痛みも全部知らないことにして、___への想いも視えた未来も何もかも、なかったことにしよう。そうすればきっと、___の隣にいることを許される。


「あ、見てください悠一さん。冬の大三角です」


___の華奢な指が南東の空を指さす。田舎ってわけじゃないのに、濃紺の空には確かに輝く星がちりばめられているのが良く見えた。


「……星が、綺麗だな」


(貴方は私の想いを知らないでしょうね)


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