寒いですね




はあ、と息を吐くとそれは真っ白で宮城の冬の厳しさが身にしみる。寒い。というか今は身も心も寒いからいつもの2倍寒い___ちゃんのバカ。横を睨むと鼻を真っ赤にしながらケータイを弄ってるゲーマーがいる。

なぜこの寒空の中、人気のない公園のベンチでゲームしているかというと、時間限定のイベントがあるのを忘れていたらしい。帰ってからすれば良いじゃんと言ったら、家に着いた頃には終わってるからムリと言われた。まあおれを送ってから帰ればそんな時間になっちゃうワケで、少しキュンとしたようなしなかったような。ぶっちゃけ早くやりたかっただけじゃないかとも思う。


「ねえ___ちゃん」

「んー」

「ゲーム楽しい?」

「んー」

「チューしてもいい?」

「ムリ、邪魔」

「ひっど」


酷いけどキチンとおれの話聞いててくれたみたいで嬉しくなる。おれってば健気だねー、___ちゃんはもっとおれに惚れるべきだよ。

暇なので横から彼が必死に食いついてる画面を覗くけど、やっぱりよく分からない。ただ___ちゃんがとても強くて、次々にイベント限定のカードやらアイテムやらをゲットしていってるのは分かった。ゲーマーってえげつない。細かい操作をしている指は文化部らしく細くて白くて、それなのに男らしく節くれだっているのが妙に色っぽい。おれだってその指に触れたいのに、___ちゃんのケータイに少し嫉妬。


「ねえ___ちゃん」

「んー」

「寒いね」

「帰っていいよ」


無感動な___ちゃんの声にムッとする。そんなバイト終わりの人に声かけるみたいなどーでもいい声音で言う?普通。___ちゃんの無防備な肩に額をグリグリ押し付けて、寒い寒いと恨みがましく訴える。___ちゃんが悪いんだ。俺が暖めてやるよくらい言えないの。


「さーむーいー」

「もっと素直に言えば」


え、

見上げると___ちゃんはしょうがないなあって顔でおれを見ていて、ドキリと心臓が跳ねる。えっと、ええ?なにそれさっきまで放置してたクセに急にそんな甘い顔するとかズルい、なんか悔しい。そんなの、そんなの、


「だきしめ、て」

「ん」


ぎゅう、とおれより細い身体に抱き締められて一気に顔が熱くなる。うわーもうなんなの___ちゃんのくせにかっこいい。


「徹、」

「なーに___ちゃん」

「寒い」


小さく聞こえたそれに笑って、おれもそっと彼の背中に腕を回した。


(抱きしめてください)

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