トリップ続編 | ナノ
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「捕まりやしたね」

「……捕まっちゃったねぇ」


私も狙われていたような気もするけど、周りに隊士さん達も居たし離れてたけど銀さんも居たんだから、あの場合なら私だけを逃がす事も簡単だったんじゃないかな。
でもそんな風に私を庇ったりしないで一緒に逃げて欲しいと、捕まるのなら私も一緒に連れてってと思ってしまう私の我儘に気付いてくれてる沖田くんは、私だけを逃がす事はせずに傍に置いてくれる。

私がそんな傲慢な事を望んだりしなければ、こんな事にはならなかったのかな……。


「状況はかなり悪いですせ。」

「本当にね、ちょっと流石に、どうしようかと思ってるよ」

「一緒に来た事、後悔してやす、?」

「沖田くんが、それ以上殴られたら、泣くと思う」

「既に顔歪んでやすけどね」

「随分余裕だな? 流石は1番隊隊長この期に及んで呑気にお喋りか。」


全然呑気じゃない。私の心は全然呑気じゃないから、平常心装ってるけど顔に出ちゃうくらいもうギリギリで、泣きそう。



目が覚めたら私は壁に頭上で腕を縛られていて、沖田くんは手錠を後ろに付けられて倒れていた。呼び掛けて起こすもかなり苦しそうで、それでも私の心配をしながら寄ってきてくれたけど、直ぐに数人が入って来て私の目の前で沖田くんはさっきからずっと殴られてる、私は、何も出来なくて、ただ目を逸らさないで見てる事しか出来なくて、倒れても、それでも話し掛けてくれる言葉に、せめて沖田くんが私の心配しなくて済むように冷静に返すようにはしてた。


「そろそろ大人しくなりました?」

「……誰だ、テメェ。」

「ただの暇を持て余してる者ですよ。天下の真選組一番隊隊長の悲痛に歪んだ顔でも拝ませて頂こうかと思いまして。」

「ハッ、俺の?とんだ物好きだな。こっちは暇人に付き合う程、つまんねぇ生き方してねぇんで。」

「たまには刺激も必要ですよ? そちらの女性、随分お気に入りのようで。今から貴方の目の前で輪姦します。」


その言葉に沖田くんの周りの空気が変わった、かなり怒ってる。後から入って来たこの人がリーダーか何かなのかな、そんなふざけた理由で沖田くんはあんなに殴られてるの?

……でもこの状況は結構厳しいと思う。2人とも拘束されてる上に、沖田くんはかなり傷を負っている、これ以上何かされたら本当に危ない。



男達がこっちに近付いて来たと同時に、既にボロボロなのに沖田くんは立ち上がった。


そこからは見るに耐えないくらい酷い、気を失わせる気も無いんだろう。散々殴る蹴るの暴力、動かなくなった所で男が私に近付いて来たら、また起きて抵抗し殴られる姿に大人しく見てるなんて出来なくなった私は、気付けば泣きなから叫んでた、冷静さも何も頭には無くて、今すぐ死ぬ事が出来ればとさえ思った。
そうすれば沖田くんは戦える、今ここに私が居るから沖田くんは殴られてるんだから。


ぐったりと倒れてる沖田くんを、涙を流しながら見てる私は、何でこんなにも無力なんだろう。もう声も出せなくて、早く彼から離れて欲しいと願うだけで私は何も出来ない。


「殺すんじゃねぇぞ。」


髪を掴み、ぐっと持ち上げられた沖田くんの顔は血に濡れていて、それでも薄く目は開かれ確かに私を見てる。
引き摺られながら私の隣に投げられるように置かれた沖田くんは、もう動ける身体じゃない筈なのに足で地面を蹴りその勢いのまま座ってる私に覆い被さるようにぶつかって来た。


「っ!……おき、」

「まだ抵抗するんですか? しつこいですねぇ、気絶されたら意味が無いので大人しくして貰いたかったのですが。……めんどくせェから一回落とせ、目が覚めたら変わり果てた女ってのも良いかもな。」


既にこんなにボロボロなんだ、これ以上は沖田くんの身体が持たないよ。きっと意地でも気を失わないようにしてる。


「……沖田くんもう止めて。これ以上は無理だよ、本当に死んじゃうよ。」


私を庇うように身体ごとこっちに倒れて来てるけど動いてはくれない、その直ぐ後ろまでもう男達は来ているのに。


「……沖田くんっ、」


容赦なく彼の背中を蹴り続ける目の前の男、その振動が触れている身体から痛いくらい伝わってくる。


「もうやめてっ!」


頭上で縛られていて抱き締める事も出来ない、蹴られているのを、ただ、見てるだけ、


「っ、……お願っ、…もぅやめて、…もう良いから、沖田くん、私もう良いから、っだからもう、離れて……」


だけど、どんなに懇願しても沖田くんは離れてくれる事は無かった。


……でも、もう駄目だ。呼吸がおかしい。

正常な呼吸が出来ていない。まだ気絶してないのは分かってるけど本来の目的は沖田くんを殺す事じゃ無かった。
ならば、沖田くんには悪いけど、もう駄目だ。


「ごめん。」と一言告げ挟まれていた脚を片方抜き沖田くんの横に付ける。私に出来る事はもうこれしか思い付かない。
今まで動かなかった彼が睨み付けて来たけど、それでも私の前からその身体を退かすように蹴って横に弾いた。

これで本来の目的に戻る、沖田くんは気絶してないし、もう動けない。


「……や、…め、」


声なんて出せる状態じゃないのに、それでもまだ私を庇おうとする。
どうか終わったら彼の記憶から消してあげて欲しい、この事全部、私ごと忘れてくれて良いから。


恐怖なんて無かった。これで時間が稼げて誰か来てくれれば沖田くんはきっと助かる、それだけを願った。だけど男が私に触れる瞬間、部屋ごと吹き飛ぶくらいの爆発が起き、勢い良く外に吹き飛ばされる。

咄嗟に閉じてた目を開けると、手の縄はほどけていて周りに倒れてるのはさっきの人達。

多分皆が助けに来てくれたんだろうと慌てて立ち上がり沖田くんを探すと、少し離れた所に倒れてるのが見えて急いで駆け寄った



「沖田くん!! 沖田くん大丈、……っぅ!?」

「何で邪魔した?」


倒れている沖田くんの肩に手を置いた瞬間に身体が起き上がり、肩で私を力強く押して倒された直後にみぞおちに体重をかけ座ってきた。
後ろ手に手錠を付けられたまま見下ろして来る顔は、最後に見た時と同じように睨み付けて来てる。


「……沖田くん、酷い怪我してたし、もうあれ以上は、」

「俺のやった事を無駄にするつもりだっだんで?」

「っ、……ごめん。でも沖田くんが私を守ってくれるように、私も沖田くんを守りたいって思うんだよ。……何も、出来ないけど、でも私が出来る事を、」

「俺は自分を犠牲にして守ろうとはしてねぇ、あの状況でも死ぬ気なんざ微塵も考えちゃいなかった。でもアンタは? 俺が殴られてんの見て、自分も無事に帰る事考えていやした? どうせ大人しくしてれば俺が助かるとでも思ってたんだろうが、攻撃も防御もしねぇアンタのそれはただの逃げだ。俺を守りてぇなら戦って守れよ。」

「っ、……ご、めんなさい、」


不機嫌に顔を逸らし私の上から立ち上がった身体がよろける、でも支えようと手を伸ばしても身体で振り払うように拒絶された。

凄く怒ってる、それもその筈だ、あんなに守ってくれたのに、私は攻撃も抵抗も何もしなかった。そんな事をして沖田くんが更に殴られたら嫌だったから。

沖田くん1人なら捕まりもしなかったかもしれない。こんなにボロボロになってる所なんて見た事が無い、凄く強いのに大して抵抗出来なかったのは私が捕まっていたから、じゃなかったらここまで酷い事にはならなかった。全部私のせいだ。


「総悟!」

「名前!!」


呼ばれた方を見ると、土方さんと銀さん、真選組の人達も駆け寄ってくるのが見えた。


「大丈夫か!?」

「沖田くん凄い怪我なんです!!」




隊士さん達が手錠を外し怪我の手当てをしてるのをホッとしながら離れた所で眺めてた。


「お前は怪我大丈夫なのか?」

「うん、沖田くんが庇ってくれたから」

「手首痣になってんじゃん」

「こんなの大丈夫だよ」

「おい、総悟これから病院連れて行くが、お前も付き添うか?」

「……いえ、やめておきます。」

「行かねぇのか?」

「沖田くん強いのに、私のせいであんなに殴られて、1人ならこんな事にはならなかった、沖田くんの優しさに私が甘えたせい、……もう顔も見たくなくなるよ。」


沖田くんの殴られてる姿がずっと頭の中で繰り返される。痛かっただろうに、なのにどんなにやられても庇い続けてくれた。


「……何で私、……こんなに弱いの……」


銀さんの胸元を見ながらボソボソと話していたら隣に人の気配がして顔を上げようと思ったら、突然胸元を掴まれて顔がぶつかってきた。

少しして突き飛ばすように離され地面に座り込みながら見上げるけど、

……今……キスされた、よね?
噛み付く勢いで唇を覆われて寧ろ噛まれた気もする。


銀さんじゃない、目の前で見下ろしているのは、沖田くんだ。


「俺言いやしたよね? 遠慮なり気ィ遣うなりしたら次はガッツリ行きやすって。 覚えてやす? まァ俺は覚えてるんでどうでも良いですけどね、アンタとの会話も約束も俺は全部覚えてやすんで、だから遠慮も何もしねぇ。例え危ねェ場所でもアンタがそこに居んなら傍に置くし、それで怪我しようが怖い目に遭おうが俺はアンタから離れねぇ。突き放さなかったのはテメェだろ、今更俺から離れられるとでも思ってるんで? アンタが誰の物だろうと、俺から離れるなんざさせやしやせんから。逃げるなり叫ぶなり好きにしなせェ、来世でだって見付け出して捕まえてやらァ」


そう言い放って何処かへ歩き出した沖田くんの背中を見つめ続けた。視界が歪んでも動けなくて、もう見えない背中を脳が追い続け、どうして、彼は……っ、


「さっきからすげェ機嫌悪いな総悟のやつ。お前ら喧嘩でもしたのか?」

「つーか宣戦布告? 彼氏の前でキスした挙げ句、愛の告白されてんじゃんお前、浮気か?」

「……っ、っ、いま、…お、きたく、っ、追い、かけたらっ、…う、わき、……っなる、?」


見上げた銀さんの顔も全然見えないし聞こえた自分の声は嗚咽と共に聞こえてきて、上手く発する事も出来ない。


「なんねーよ、なんねェからソレ止めてから行け」

「っふ、…ひっ、く、うぅ……っ、」

「にしてもアイツの執着心ヤバくね? 来世でもって、俺何がなんてもアイツより早くお前に会わねぇとじゃん。」

「テメェの執着心も負けてねぇだろ」

「…っ、は、……、ん、行ってくるっ」

「もう? 顔濡れてっけど。」

「行く」

「もうちょいアイツ落ち着いてからの方が良いんじゃねェか? 多分暴れてると思うぞ」

「行きます。悪いのは私、ダラダラしてる時間が勿体ない。行ってきます。」


馬鹿だ私、顔が見たくなくなるなんて言い訳だ。私のせいで怪我をしたからって沖田くんが離れて行く筈が無い、私が弱い事は沖田くんが一番知ってるんだ。
私は自分のせいであんなに傷だらけにさせてしまった彼に申し訳無さ過ぎて逃げたんだ。

戦う事を何も出来なかった私に彼が最初に手を伸ばしてくれた。
手を離された事は一度も無いのに、自分から離してしまうなんて、馬鹿すぎるよ私。







彼の向かった先に走ると直ぐに山崎さんの後ろ姿が見えた。


「あ、山崎さん!沖田くんは、って、……え!どうしたんですか!?」

「あー名前ちゃん。沖田隊長、今相当機嫌悪いみたいだよ」

「っえ、……それ沖田くんに?」

「そう、その辺に倒れるのも皆沖田隊長にやられちゃった隊士。」


見渡すと点々と人が倒れている。
……大変だ、関係の無い人達が次々に被害にあっていく。


「……あ、えと、沖田くんはどちらに?」

「あっちだけど。……もしかして不機嫌な理由名前ちゃんだったりする?」

「っ!っあ、…えと、……ごめんなさい……多分」

「そっか、なら気を付けて行って来てね? しっかりご機嫌取って来て、これ以上隊士減ったら帰るの大変だから。」

「……はい。」


……怒ってる? 山崎さんも軽く怒ってる?


取り敢えず教えて貰った方に進むと、どんどん死屍累々の如く倒れている隊士さん達。


心の中ですみませんと謝罪しながらたどり着いた先には沖田くんが隊士さんの胸ぐら掴んで腕高々と上げている所だった。


……凄い状況だ
周りには止めようとしたのか数名倒れていて、沖田くんが魔王みたいに見えてくる。


「……、沖田くん。」


呼べば目線だけ私の方へ向けられた、目付きは鋭くまだ怒ってる証拠だ。


「話がしたくて来たの」


離された手によって隊士さんは地面に落ち、私の横を走って去って行った。通り過ぎ様にお礼を言われたけど、ごめんね、私のせい。


そして沖田くんは何も言わず黙って私を見たまま動かない。


「ごめんなさい、私、逃げた。私のせいで沢山傷を作らせてしまって、罪悪感に押し潰された、私さえ居なければ沖田くんはそんなに怪我をする事もなかった、そう思えて仕方ない。でも私、沖田くんの傍に居たい、……もう1度チャンスを貰えないかな。私の意思で沖田くんと一緒に居たい、隣で笑ってて貰えるように頑張るから、私の意思で傍に居るって思って欲しい。」


沖田くんはいつも私の傍に居てくれた、私から離れて行くんじゃ無いかって言う不安を私に与えない安心感があった。私を傍に置くなんて相当のリスクを背負ってるのと同じなのに、あんなにボロボロにされても尚、それでも傍に置こうとしてくれてる。


「俺はアンタの為に傷を負ったワケじゃねぇ、俺がアンタを守りたくて受けた傷でィ。俺の傍に居てぇならこれごと受け入れな。」


不敵な笑みを浮かべながら両手を広げる胸に止まった涙がまた流れ出す、駆け寄って傷に触れないようそっと抱き付いたのに力強く抱き締め返されて私の弱めた意味は成さなかったけど、危うくこの温もりを自ら手離してしまう所だったんだ。


「ごめんね、沖田くん。」

「良いですぜ、何度だって許してやりまさァ。その代わり何度でも罰は受けて貰いやすよ。」

「うん」

「後、俺がキレて暴れたらさっきみてぇにアンタが沈めに来て下せェ。」

「うん、分かった。」

「名前さん、」


抱き付いたまま名前を呼ばれて顔を上げると、目の前に沖田くんの顔があって唇が合わさった。さっきとは違い、軽く触れるだけ。……だけどそうゆう問題じゃない。


「……え、沖田くん何するの」

「さっき1回しやしたし、もう2回も3回も同じじゃねぇですかィ」

「いやいや同じじゃないよ? 怒られる、流石に怒られるよ私。」

「じゃあ罰って事で。」

「罰ではないよ、もっと自分を大切にして。」

「結局甘ェな」

「っ!? 待って待ってして来ようとしないの! 」

「なんで?」

「何で!? こうゆうのは好きな人同士とするものなの!」

「俺の事嫌いですかィ?」

「いや好きだけど。」

「俺も好きですぜィ、好きな者同士じゃねェですかィ。」

「ほんとだ」

「なら問題ねぇや」

「っ、まっ!ある! 問題あるよ!? てか違う!私が言ったのと意味違う!!」

「触りたくなる意味で好きですぜィ」

「私もだけど!でも違う!……え、待って違わないの? …………え?これ浮気?」

「グレーに近い黒?」

「黒!? 黒駄目じゃん!え、黒 ……いや、そうか、黒か。こんな抱き付いて…………黒だ。黒じゃん!? っえ!?どうしよう、どうしたら良いの!? 」

「俺は離しやせんよ」

「私もだよ! …………それすら黒? 逆だったら、え?ってなるね。 ……え?…………やっぱりこれ浮気?」

「本人に直接聞いて見やしょうか。ねぇ、旦那?」

「っえ!? 銀さん居たの!?」

「これ浮気に入りやす? 因みに名前さん的にはされたら浮気らしいですが、だったら旦那もそうですかねィ?」

「そうだっつったらどうするかなんざ聞かなくても分かんだよ。んなモン今更だろ、いちいち気にしてられっかよ。」

「だそうですぜ、了承貰えたんで堂々と出来やすね。」

「……え? 浮気じゃない? 本当に? 私、銀さんが誰かとこんな事してたら浮気認定するよ?」

「俺だってソイツじゃなかったら縛り付けて監禁するわ。最初っからお前言ってたろ、触られるもの触るのも抵抗しないし止めないって、それを踏まえた上で来いと。だから今更だし、いちいち気にしてこっち拗らせんなよ。」

「……ありがとう、いつも私に都合の良い言葉を選んでくれてるよね、私は銀さんに何が……っ、ん、……え、ちょっと沖田くん。」

「おい、そんな何回も許した覚えは無ェぞ。」

「大丈夫でさァ、欲の為じゃねェんで。ただの愛情表現、スキンシップと思って下せェ。」

「いや、流石にこれはスキンシップの域を越えてるよね?」

「なら愛情表現だけで。」

「いや、うん、……うん? そうだけど、確かに愛情持ち合わせているけれど、……もっと違う表現の仕方をしよう?」

「ドキドキしやす?」

「いやしないけども、それが何?」

「俺もしやせん。旦那には?」

「……するよそりゃ」

「違いちゃんとあるじゃねぇですかィ、愛情の違う表現でさァ。」

「えぇ?でも私そんなヒョイヒョイ出来ないよ、ハグとは難易度が違い過ぎるし、ドキドキしなくても恥ずかしいよ。」

「慣れやすよ」

「……銀さん」

「いや無理だろ、ソイツの執着心のヤバさはさっき改めて思い知った。せめて俺の見えねぇ所でしろ。」

「えぇえ!?!? 銀さん!? 」

「ただし、した時は素直に自己申告しろよ。んでお前から俺にして来い。」

「は!? なんっ、何で!? 」

「軽くじゃねぇかんな、俺が満足するまで意識飛んでも起こすからな。」

「意識って……、いや、…………いや駄目だわ沖田くん、私無理だわ! 出来ない、銀さんの満足なんて分からないよ……!」

「旦那は執着心だけじゃなく独占欲も相当で。」

「たりめーだろが」

「しょうがねーんで、たまにで勘弁してやりやすよ。」

「いや本当無理だよ、私出来ない、」

「たまにくらい俺からの愛情も貰って下せェよ。」

「……私、沖田くんからのハグに愛情を感じるよ。」

「俺の愛はもっと深いんで。」

「沖田くんは私とのハグより唇だけ触れる方が愛情深いと思うの? 身体で体温感じながら引っ付いてるより手狭な範囲で心臓の音も聞こえないし頬もぶつかんないのに唇だけ触れてる方が上なの?」

「……」

「私の愛情は何処に欲しい?」

「…………ハグで。」

「ふふ、いい子。」

「…こわ、」


銀さんの言葉は無視して腕を広げて近距離を詰めれば、ぎゅっと抱き付いて来る温もりが唇なんかより下な訳ないと思う。


「……たまにしたら怒りやす?」

「怒んないけど、どんだけしたいのよ……。」

「名前さんの唇スゲェふにふにしやす。」

「え? 皆同じじゃないの? ねぇ銀さん。」

「っは!? えっ、え、今何で俺に振った?」

「どうなのかなって。」

「……だから、何で俺に聞いた。」

「だって、ねぇ?」

「直ぐ言えねぇって事はそうゆう事ですぜ、察しなせェ。」

「うん」

「いやいやいや待って何なの? お前ら何なの? つかさっきまでキレまくってたのに何でそんな直ぐいつも通りなんの?」

「話変えて来た。」

「大丈夫でさァ、名前さんが断トツでふにふにしてやすって。ねぇ旦那?」

「いや、そうだけど、……え? 何が聞きたいの……?」

「やっぱりそうなんだ……。」

「そりゃそうでしょう」

「何が!?!? え、待って何が? 何の話してる? お前らはもう心で会話出来ちゃう領域に達してるの? 」

「でも私、こんな醜い嫉妬心じゃお側に居られない、……頭冷やしてくるね!」

「……は?」


ポカン、としてる銀さんに背を向けて沖田くんの手を握り走り出す。
そこまで気になる訳でも無いから気にしないでね、ただ私の方に じわりじわりと気まずさが来まして、……置いてってごめんね?



「固まってやすけど。」

「早く逃げるよ。」







取り敢えず逃げたい



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