トリップ続編 | ナノ
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真選組で宴会があるそうで名前も誘われたらしく参加するんだと、別に行きたくは無ェが俺達の許可も貰って来たらから一緒に行こうと言うこいつに同行する事になり、それが今日を迎えた。


「何で赤飯?」

「沖田くんが急にお赤飯食べたい気分になったらしいから」


どんな気分だよ。つかお前は母親か? 食いたいと言われた物をせっせと作って持って行くのか。


「向こうに飯あんじゃねぇの?」

「でもお赤飯は無いからねぇ、お酒も沢山用意してくれたって言ってたし、手ぶらで行くのも気が引けるって思ってたから丁度良かった。」


オイまさか遠慮なく酒飲む為に赤飯作ってんじゃねぇだろうな


「良い感じ、良かった。久々過ぎて失敗したらどうしようかと思っちゃった。」

「こっち何入ってんの?」

「甘納豆だよ」

「マジで? つか何これすっげェ旨そうなんだけど、今ちょっと食いたい。」


皿に盛ってくれたピンクのご飯に大粒の甘納豆が入ってる。まだ湯気が上がる程の出来立てでふっくらしたもち米が食欲そそるし甘納豆って。


「っ、……うま、」

「本当? 良かったー、お赤飯って好みあるから心配だったの。」

「すっげ旨い、赤飯がこんな旨ぇなんて知らなかった。」

「ふふっ、嬉しい事言ってくれるね? ありがとう、これお婆ちゃん仕込みなんだ。甘納豆入ってない方はお塩なの、食べてみる?」

「食う食う」


だから分けてたのか、何も入ってねぇけど塩も良いな、つか旨いわマジか赤飯旨い。


お握りにするらしくラップを取りに向かった隙に甘納豆入り赤飯を皿に盛って食ってたら、一瞬驚かれたけど特に何も言われなかった。


「旨いこれ毎日食える」

「ははっ、でも3日くらいでやっぱり飽きるよ、たまに食べるから美味しいの。」

「いや3日で飽きるワケねぇわマジ旨い、おかわり。」

「これもち米だよ? どんだけ食べるの? 」


確かに腹に溜まるけど旨ぇし。それにどんだけ食べるのと言いつつ盛ってくれる、いつも一口ねって言うのに今日は言わねぇな。


「ん? あのお握り何? 」

「あれは土方さんの。マヨネーズ練り込んで作ったやつだから避けてるの。」


何だって? 何故アイツはそんなVIP対応受けてんだ、あんなマヨネーズ依存症に特別な物作る必要あるか? どうせ折角作ったモンにまでマヨネーズぶっかけて食うような人間だぞ。

しかも何だあの特別感は。あのお握りだけ特別に作られてるのか、一手間加えられたお握り、俺はこの甘納豆で十分満足だから他に手間なんざ加えるモンが無ェ。


「あれだけ特別感すげェな。」

「え? マヨネーズ入ってるよ?」

「いや食いてぇワケじゃねぇ。」

「んー、……はい。」


渡された今しがた出来上がったラップの巻かれたお握り、何てこった、ハートだ。
三角が少し形変わってハートになってる、しかも甘納豆が!甘納豆がハートに並んでるゥゥ!?
ねぇわざとだよね!? これさ、俺が言う前から握ってたじゃん先に並べてたの!? 俺に!?


「ふふっ」


笑ってる、わざとだこれ。お握り凝視してたら隣から笑い声聞こえるし視線向けたらちょっと照れながら逸らされた。ヤダこの子 愛情たっぷりじゃん。特別感すげェあった、一気に満たされたわ。可愛い事してくれんな全く。


「銀さんも握って?」

「ん?」


手の平にあった愛情が消え、代わりに薄いラップが乗せられた、そしてその上にピンクの米。しっかり巻かれたラップの上から言われた通り握る。


「わ、上手! これ私の。」


私の? 手伝って欲しいんじゃなくて自分の握らせたんか、俺の握ったお握り食いてぇの? んなのいつでも握るけど。


「俺の握ったお握りが良いの?」

「うん、手の平って不思議なパワーみたいなのがある気がするの。例えば近藤さんに頭撫でられると無条件でホッとする温かさと安心感がある、でもそれは私にとって特別なんじゃなくて近藤さんが特別凄い何かがあると思うの。銀さんは私にとって特別だからその手の平から私の欲しいモノくれる、疲れた時には癒してくれるし嬉しい時にはもっと幸福感くれるし、頬っぺ触られるだけで、ふふってなるの。意味分かんない?」

「……いや」

「銀さんだからって言うのもあるしハグも勿論温かいけど、でもやっぱり手の平で触れてくれるのは特別温かい気がするんだよね。温度じゃなくて心の深い所からじわじわ温かくなる感じ。その手の平で作ってくれたお握りが、こちら。」


そう言って指で撫でてるお握りは今俺が握ったモノだ。確かに茶碗に盛られた飯とお握りが違ェのは何となく分かる、例えお前の握ったお握りが大量生産されていても、俺の為に握ってくれた愛情たっぷりのお握りの方がそのパワーとやらが送り込まれてる気がするしな。

つーか何よりも俺の手にそこまで特別感宿してたっつー方がキたわ、手が好きだと言ってくれた事は覚えてるがそんな具体的な理由あったんか。

残り少ない赤飯をせっせと握る横顔は嬉しそうだ、だからつい触っちまうんだよな。もう既に無意識に触ってるなんざ日常的にあるだろうけど、そうだな、お前俺が頬触ったらすげェ嬉しそうに笑うわ。総一朗クン相手でも笑ってるが違いはある、上手く言えねぇけど確実にある。


「ふふっ、いつもより温かい。ご飯熱かった?」

「……俺興奮してんのかも」

「え」


笑顔が消えて不審な目を向けられたが頬だと振り払ったりもしねぇもんな。


「私まだする事あるんだからね、余った甘納豆あげるから大人しくしててね。」


頬に触れていた手に重ねるように握られ離すもんだと思ったのに、1度スリっと頬を寄せてから甘納豆の袋を持たされた。

何だ今のは、今日はいつもよりデレ強めだな。

あ、甘納豆うまっ。









「お赤飯ごっさ美味しいネ!!」

「沢山あるからゆっくり食べて、これもち米だからね」

「そうだよ神楽ちゃん、喉詰まったら大変だから良く噛んで食べるんだよ」

「年寄り相手にでもしてんのか」


勢い良く頬張る神楽も神楽だが、年寄りじゃねんだからんな見守んなくても。


「ぐっ!?……っっ」

「神楽ちゃん!?!? はいお茶っ!」

「そんなに沢山入れたら本当に危ないから!」


何なんだコイツら……大人しく飯も食えねぇのかよ。


「名前さんここは僕見てますから行って来て良いですよ、元々呼ばれたの名前さんですし沖田さんの所行きますよね?」

「あ、そうだね、行こうかな。神楽ちゃん大丈夫?」

「甘納豆美味しいアル」

「本当にゆっくり食べて、じゃ新八くんお願いね。銀さん私行って来るからね」

「おー」


再び頬張る神楽を心配そうに振り向きながら去って行ったが、流石にそこまで心配する程の事態にはならねぇだろ。
いや確かに口に突っ込み過ぎではあったが二人の焦りっぷりがまるで年寄りを相手にしてんのと同じだぞ。


「お酒はあっちにありますから自分で取りに来て下さいね。」

「肉アルー!! 」

「ありがとうございます山崎さん」

「なんだ俺達にも待遇良いのな。」

「名前ちゃんのお赤飯人気でしたからね。沖田隊長の所に居たので代わりに持って来ました、お酒は好きなの取りに行って下さいね。」

「そんな種類あんの?」

「名前ちゃんにはウチも色々お世話になってますから。」


この待遇の良さはあいつのせいか、書類手伝ったりしてんだっけ? 良くそんな面倒な事出来るよな、折角自分の仕事早く終わってんのにわざわざ人の仕事手伝いに行くなんざ理解は出来ねぇが、あいつが好きでやってるらしいから止めはしない。
それで体調崩されんなら考えもんだが元気そうだし嬉しそうに菓子貰ったと分けてくれるやつを俺も食ってるし、だから特別なマヨネーズ練り込まれたお握り用意されるくれェ構わねぇわ。なんせ俺は愛情たっぷりのやつ貰ったからな。


神楽は新八に任せて折角だしタダ酒でも飲むかと向かう途中に名前が居た。シートの端で総一朗クンと飯食ってる一見ごく普通の光景だが、……近くね?
いや知ってたけだよ、アイツらがパーソナルスペース狭ェのは元から知ってた、だけどそんな0だった? お握り片手に携帯持って画面を名前に見せてるらしいが、頭くっ付いてんな? 何あれ恋人同士なの? 近いとか言う問題か?


まぁ良いけどよ、普通なら有り得ねぇあの距離感もアイツらにとっては普通なんだろ。もはや見慣れたってのもあるし俺もだいぶ余裕が生まれたのか特に何も思わねぇな、ただ近ェなとは思うが今更だと直ぐ自己完結出来る程だ。

にしてもあのドSを良くもまァあそこまで懐かせたよな、俺も人の事言えねぇけどアイツあんな顔出来んだ。
違う世界から来たって理由じゃねぇ、名前そのものに安心感と癒し効果のようなモノがある気がする。それを感じてるのは俺だけじゃない、だから良い意味でも悪い意味でも引き寄せちまうんだ。けどまぁ、それもあいつの魅力の一つなんだろう。



すげェ種類の酒を立ち飲みして良いやつ見繕って戻ろうとしたのに、さっきまで総一朗クンが居た場所には知らねぇヤツが居た。
意味が分からねぇ、誰だ? 何で名前に酒注いで貰ってんの、何で今隣に座った? 手を伸ばせば届く距離だ、何で大人しくお前も座ってんだとも思うが立ち去るワケにも行かねぇか、多分便所か何かで居ねぇだけだろうし。


「お前突っ立って何ガン付けてんだ。」

「……アイツ何、名前と仲良いワケ?」

「は? あぁいや別に仲良い訳じゃねぇだろ、1番隊のヤツだから何かと顔合わせてんじゃねぇの」


顔合わせる程度で隣座ってんの、あの距離じゃ触りかねない。


「おい殺気しまえ、気になんなら行きゃ良いだろ。総悟だって直ぐ戻って来んだろうが」


あ、戻って来た。何を言ったのかは分からねぇが慌てて去って行った隊士に名前は呆れた顔して総一朗クンを見てるから牽制張ったか何かしたんだろう。そもそも傍から離れんじゃねぇよ、いや便所の外で待たせんのもおかしいけどよ、しかもこんな人の多い場所で何も無ぇだろうけど……つか余裕はどうした。無ェじゃねぇかよ俺の余裕何処行った、今殺気しまえって言われなかったか、んなモン出してた? 今は? 今は……無ぇな、アイツ戻って来たから安心したわ。

やっぱ俺気にしてねんだな。名前に今まで通りで良いっつったからじゃ無ぇ、俺自身が受け入れて来てんだ。マジで調教されてんのかな、俺あいつのお願いなら何でも聞いちまいそうじゃね? どんだけだ。



「副長!!」


血相変えて近寄って来たジミーに俺も視線を向けた途端に沸き上がる爆発音。
新八達の方からは遠いが名前の居る場所からは近い、煙が上がって姿が隠れ始めてる。

走り出そうとしたがここも既に囲まれてる、あいつの傍には総一朗クンが居るが新八達もここまで来ると気がかりだ。


「山崎、ここを抜けたら直ぐに眼鏡の所に行け。」

「はい!狙いは分かりませんが以前ウチに爆弾投げ入れてきた奴等が近くに居るって情報が入りました!」

「お宅ら狙われ過ぎじゃねーの? 随分嫌われてんのな。」

「んな頭おかしい奴等に好かれたか無ェんだよっ、!行け山崎!」

「はい!お二人ともお気を付けて!!」


俺も人数入ってんだ、まぁ真っ先に新八達の安全を確保しようとした精神は褒めてやるよ、仕方無ェここ突破するくれェは手ェ貸してやらぁ。


「折角のご馳走が台無しじゃねぇか、っと。」

「俺に文句言うな、ってやべ。」

「あーあ。酒のテーブルお釈迦にしちまって、あいつ怒んぞ。」


絶対ェ今もこの酒のテーブル心配してんぞ、全部倒れちまったけどな、静かに落胆する姿が目に浮かぶわ。


「……名前?」

「ヤベェなあっちに集中してる。何だ、何狙いだ?」


集中してるなんてモンじゃない、周りの隊士差し置いて何でアイツら二人だけ囲まれてんだ。
狙われてる、あれは恐らく両方だ。二人共捕まえるのが目的か?


「このままじゃ二人とも捕まる、おいさっさと突破するぞ。」

「……そうはさせてくれねェようだな、お前先に行ってろ。」


名前から目線を外しヤツの方を振り向けば、周りに居る雑魚じゃねぇな、首謀者か。


「宴会中申し訳ございませんねぇ、直ぐにお暇しますんで少々お待ち下さいませ。」

「あ? 何だテメェ何が目的だ。」

「只の暇潰しですよ。」


特に攻撃を仕掛けて来る気配が無ェ、薄気味悪ィ笑み浮かべて突っ立ってるだけだ。
罠か、にしても他に気配は……しまった!


「っ、名前!!」


居ない……、やられた。勢い良く振り返った俺に隣の野郎も振り返ったが二人とも居ェし周りの隊士も倒れてる。当然さっきの首謀者か何かも既に居ねぇし周りからも一斉に敵は消えた。
俺達の気を引く為にわざわざ出て来たのか、雑魚なら無視するものを首謀者なら多少警戒はする。


「クソッ、悪いなあいつも巻き込んじまった」

「……それあいつに聞かれたらお前蹴られんじゃねぇの」

「、くくっ、違ェねぇ、清々しい程毒吐いて来そうだ」


こうなる事を覚悟して傍に居るんだ。もしかしたら名前1人を逃がす事も出来たかも知れねぇ、でもその場合倒れてる隊士同様一緒に攻撃受けるか一人で応戦する事になっただろう、傍に置けばこれから起こりうる事態にも関わらせる事になる、どっちが正解かは分からねぇがアイツは多分迷わず連れて行く事を選んだんだろうな。

戦ってる最中、ずっと傍に居るのは煙の中でも見えた。


正直すげェと思った、俺がもし囲まれて隣にあいつが居たら、……多分、逃がそうと考える。
何とか、あいつだけでも逃がせねぇかなって……、ヤベェな、これあいつ言ってなかったか、マジか、俺より先に俺の事分かってたんか、そしてそれが怯えに繋がった。

……いや待て、あいつが怯えてたのは俺が離れて行くっつー事だよな? 無ェわ、それは無い。例えあいつが怪我して帰って来てもそれは無ぇわ。


ただ俺の覚悟も足りてねぇ事は分かった。巻き込むなんざ良く言えたな、あれはあいつを安心させる為に出た言葉だ何の覚悟も持たねぇで只あいつの為に言った。だからか、泣いて喜んでた割には効果無ェと思ったわ。
成る程ね、今回は俺の方が考え甘かったな、あいつは俺に覚悟が無ェ事に気付いてる。


面白ェなホント。俺すら気付かねぇ所は直ぐに気付く癖に、自分への独占欲には気付いてない。


けど、だいぶお互い成長してるよな、俺は今そんな焦って無ェし、あいつも自分が特別だっつー方は理解してきてる。


笑って帰って来んのか泣いて帰って来んのかは知らねぇけど、まぁ取り敢えずは無事で居てくれよ。







迎えに行くとしましょうか



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