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『恋バナで君の女装を改善してあげよう』


斉藤と朝御飯を食べた後、しばらく一緒に喋ることになった。といっても、私は仕事がある為、庭で掃除をしながらだけど。斉藤はよく喋る。私は適当に話を受け流しているが、斉藤は次から次へと話題がコロコロ変わる。でも、髪結いの話を1番長く喋ってた。



「そうだ! 冬さんの話を聞かせてください!」



ホウキを動かす手を止め、斉藤を見る。斉藤は、目を輝かせてワクワクしたような表情をしている。思わず「えー」と不満の声を口に出してしまう。しかし、斉藤は「是非!」といまだ目を輝かせている。えっと……、じゃあ何を話そうかな……。顎に手を当てて「んー」と、過去の記憶を思い出させる。だが、面白い話題など浮かばない。



「……何聞きたい?」
「え、僕に聞くんですか」



斉藤の言葉に、私はツーンとしながら「話題無いんだもん」と返事をする。私の言葉と態度に、斉藤は苦笑した。



「じゃあ、冬さんの初恋はいつですか?」
「初恋、は、多分十歳くらいのときだったかな?」
「相手はどんな子だったんです?」
「運動は出来るほうだったと思うよ。背はちょっと小さめかな。頭も良かった」



懐かしい思い出に、私は笑みを零す。初恋の相手は幼稚園、小学校、中学校は一緒だったけれど、高校で別々になって以来ずっと会ってない。元気にしているだろうか。といっても、今では相手に何の感情も持っていないのだけれど。



「まあ、結局告白は出来ず終いだったんだけどね」
「えっ。冬さんならグイグイ行くかと……」



斉藤の言葉に少し苦笑しつつ、「そうでもないよ」と返事をする。



「そういえば授業は? そろそろ始まる時間じゃない?」
「今日は四年生だけ休みなんです。補習もないし、今日はのんびりするんです」
「ほー、休みか」



納得しながら、集めた落ち葉をちりとりに入れる。これで庭の掃除は完璧だ。吉野先生曰く、「今日の仕事は庭の掃除、入門票出門票の管理だけです。小松田君のことは私に任せてください」とのこと。ということは、あとはのんびりしていても良いということだ。ふと斉藤の顔を見ると、斉藤は般若のような顔をして何処かを見ていた。初めて見るその顔に、私は思わず小さく悲鳴をあげてしまう。



「さ、斉藤……?」
「竹谷君の痛んだ髪、許せない……!」
「え」



急に何を言い出すかと思えば、斉藤は、ビューン!、と風のように何処かへ行ってしまった。斉藤が走って行ったほうを見ると、女装姿の五年生メンバーが固まっていた。その女装五年生の輪に、斉藤が割り込み竹谷の痛んだ髪の毛を掴んで説教。



「竹谷君! 髪をなんだと思ってるの!? いっそのこと刈るよ!?」
「いだだだだ! た、タカ丸さん痛いですっ……!」



……何やってんだか。
呆れつつも、私も斉藤と五年生達の元へ歩み寄る。私の存在にいち早く気づいた尾浜が私に手を振ってくれた。私も手を振り返す。「冬さん、今日は髪の毛結ってないんですね」と尾浜に言われ、「うん」と頷くと、三郎が「ふーん」と言った。



「いつもと違うから違和感ある。髪の毛結えば?」
「……言うと思った」



三郎の言葉に、眉間に皺が寄るのを感じた。いかんいかん、皺がついてしまう。



「皆普通に女の子っぽく見えるけど、……竹谷はモロ男じゃん」
「ううっ、冬さんまで……!」
「髪の毛おろさずに結えば?」



竹谷の髪の毛を指さしながら言うと、竹谷がキョトンとした表情をした。「ちょい貸してみ」と言うと、竹谷が「はあ」と戸惑いながら返事をした。斉藤は私と竹谷の言葉に、竹谷の髪の毛から手を離す。



「どんな髪型にするんです?」
「お団子」
「お団子……?」



竹谷の髪の毛を上のほうで、いつものようにポニーテール状で結う。そこから三つ編みで結い、ポニーテールの根本でぐるぐる巻いてお団子を作り、簪をさして完成。



「で、竹谷は着物来ても男体型が隠れないから羽織を着る。これで多少はマシになると思うよ」



竹谷を見てニカッと笑いながら言う。すると、竹谷が「おーっ!」と目を輝かせた。周りに居る斉藤や三郎達も感心しているようだ。良かった。



「冬さんのおかげで女装実習は上手くいきそうです! 頑張ってきます!」
「おー、がんば」



つーか、女装姿の五年生可愛いな。嫁にしたい。一夫多妻って有りだよね? ね? (冬さん、怒りますよ。 by.伊作) 調子ノッテスミマセンデシタ。その後、竹谷は無事に実習を合格できたらしい。良かった良かった。



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