変魂-へんたま- | ナノ

『喜八郎が何かしましたか? ……ほう、面白そうですね』


「ギンギーン!」
「……モソ」
「いけどんアタァーック!」
「おーっと、小平太のいけどんアタックが出たーっ!」
「ちょっと待て! アイツ等三人がタッグ組むとか卑怯じゃねぇか!」
「と、留三郎、そんなこと言ってる場合じゃないよ! 受け止めなk――ぎゃふんっ!」
「っ伊作ぅぅうう!?」



全く、留三郎はうるさい奴だな。
三人目の天女が来て、一週間以上が経った。今回の天女は今までの天女と違って、手がかからない。おかげで、このように六年でバレーが出来る。今までは天女が付きまとって出来なかったものだ。いつもと同じように審判を務め、頬杖をつく。小平太のいけどんアタックは衰えを知らないな。
ふと、「仙蔵せんぱーい」と隣から声がした。「ん?」と隣を見ると、喜八郎が鋤を片手に持って私を見上げていた。



「喜八郎、どうしたんだ?」
「此処に穴掘っても良いですか?」
「ああ、構わん」



私がそう返事すると、喜八郎はすぐに穴を掘り始めた。喜八郎は、此処に穴を掘ってどうするつもりなのだろうか。別に此処に掘らなくとも、他に掘れる場所がたくさんあるだろうに。



「ちょっと待たんかァァァアい!」



何処からか怒声が聞こえた。あまり聞いたことのない女の声だ。その怒声に、小平太達はバレーをやめ、怒声が聞こえてきた方へ顔を向ける。そこには、喜八郎に向かって走る袴姿の三人目の天女がいた。



「ありゃ、バレちゃった」
「バレちゃったじゃねェェエ! 私の本返せェェエエ!」



天女はそう叫び、地面に落ちている石を拾って喜八郎に投げつける。喜八郎は「おやまぁ」と能天気に言い、その石を避けた。そして…――、



ゴッ
「ゴフッ」



喜八郎が避けたことによって、石は私の額に当たった。それほど衝撃は無かったものの、固い石が当たって血が少し出てきてしまった。



「うわっ! ご、ごめん!」
「い、いえ……、大丈夫です……」



私の額に石が当たったことにより、天女が私に駆け寄ってくる。それに続き、文次郎は小平太達も駆け寄ってきた。くそっ……、喜八郎が避けなければ私に当たらなかったのに。
ふと気が付けば、喜八郎は何処かに消えてしまっていた。天女が「今度見つけたらぶっ殺す……」と恐ろしいことを呟いている。



「血が出てるみたいだけど、あまり酷くないみたいだ」
「そうか、それなら良かった」



伊作の言葉に、俺は心から安心する。顔に傷を作りたくないからな。顔に傷があると女装するときに困る。長次の女装はそれっぽいから問題ないんだが。
「何故綾部を追いかけていたんです?」という留三郎の言葉に、天女様は言いづらそうに口を開く。



「本を、取られてだな……」
「本? ……ああ、銀魂ですか」
「何っ!? 天女様には金○が付いているのk――」
「――付いてるわけねえだろ」



小平太の爆弾発言を言い終わる前に、天女が荒々しく否定する。その言葉に、小平太は「なーんだ」と少しつまらなそうに口角を尖らせた。
……この天女、今までの天女とは全く違う。色気を見せない袴姿に、気取らない髪型や顔、まるで男のような口調。今までの媚びた甘ったるい天女達とは、まるで正反対だ。この天女、まさか今までとは違って私達に害を及ぼさないのだろうか……。



「冬さん、銀魂の何巻を取られたんですか?」
「二十六巻。ちょうど吉原炎上編のところ」
「どうして綾部に?」
「さあ? 縁側で読んでたら、いきなりバッとね」



「はあ」と溜め息を吐きながら、頭をボリボリと掻く天女。……本当に女っぽさが無いな。
「バレーの邪魔してごめんね。私は行くから」と片手を挙げてそう言い、綾部を探しに小走りで行く天女。その際、「あっ! 落とし穴に気を付けてくださいねーっ!」「あいよーっ」と伊作と天女が会話した。



「今回の天女……、なんつーか、能天気だな」
「でも面白いぞ! 今までの天女と違ってな!」



小平太の言うとおり、今までの天女と違って面白そうな天女だ。そういえば、私はまだ天女の監視役にはなってなかったな。



「……仙蔵、その妖しい笑みは何?」
「ふふ、何でもないさ」
「冬さんに変な事しないでよ?」
「さあな」
「もう……」



悪いな、伊作。お前が懐いている天女、少しからかわせてもらうぞ。さーて……、どうからかおうか。



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