変魂-へんたま- | ナノ

『仙様のとんでもない遊び』


――…泣きたい。
昨日、綾部に銀魂を取られてしまった。結局取り返す事ができず、泣く泣く風呂に入って寝た。そして今日、朝から綾部を探しに出掛けた。しかし、またもや見つからず、とうとう放課後となってしまった。



「あー、えっと、冬さんです、はい」



只今、何故か作法委員会に参加しています。
放課後になっても頑張って綾部を探していたら、何故か立花に捕まり、「良かったら委員会に参加しませんか?」「いや、今とてつもなく忙しいんで」「そう言わずに、さあ」とういう感じで超無理矢理、立花の部屋に連れてこられました。



「えっ!? 冬さん何でいるんですか!?」
「はは……、何でだろう、私にも分かんないや……」



兵太夫の言葉に、私は改めて泣きそうになる。藤内と伝七からの視線が痛いのなんの。逃げてぇよーう……、滅茶苦茶逃げてぇよーう……。
「まさか天女様が委員会に参加するとは、誤算でした」と言う綾部の言葉に、「私も誤算だよ」と返す。本取り返そうとしてただけなのに、何で委員会に参加しなきゃなんないの。
俯いて目頭を抑える。なんて事だ。いつもなら今頃漫画読んだり寝てたりしてニートしてたのに。何故よりにもよって作法委員会に参加しなければならないんだ、何故!



「喜八郎から聞きました。天女様はまだ本を取り返していない、と」
「僕がまだ持ってまーす」
「そこで、天女様には楽しい楽しい遊びをやってもらいたいと思います。本をかけて」



ソレなんていう拷問。下手したら私死ぬよね、きっと。



「天女様がやるべき事は、至って簡単。各委員会委員長、委員長代理に平手をかまし、”浮気者!”と言うだけ」
「ねえ、ソレ私死ぬよね? 本格的に殺されかねないよねソレ?」
「私達は、っふふ……、影ながら、見守っていますからっ…、プッ……!」
「笑い堪えてんじゃねえよ。楽しそうだなァオイ」



笑いを堪える立花に、私は思わずイラッとする。だが、これも全て銀魂を取り返す為。私が此処で度胸を見せなければ、銀魂は永遠に帰ってこない。渋々部屋の障子を開け、歩き出す私。後ろからは立花達が隠れながら着いて来るのが分かる。……どうにでもなれ……。さて、まずは何処から行こうか。




 ***




とりあえず、一番近い医務室に居る伊作から行くことにした。伊作には申し訳ないけど、これも銀魂の為。後でお詫びをしよう。
医務室を開けて、「伊作、」と声をかける。保健委員が全員集まっている為、伊作だけではなく他の保健委員の視線も私へと向けられた。その瞬間、数馬と左近、伏木蔵は「ヒッ……!」と小さく悲鳴を上げて後ずさった。……失礼な。



「冬さんが来るなんて珍しいですね。……あっ! まさか怪我!?」
「怪我はしてないよ。ちょっと伊作に用事」
「用事?」



首を傾げる伊作。伊作を叩くなんて気が引けるけど、立花達は今も何処かで私を見てる。
でも、叩くっていっても強くなくて良いんだよね? 別に弱く痛くない程度に叩いても良いんだよね? とりあえず、伊作の目の前でしゃがむ。



――ペチン
「浮気者」
「……へっ?」



痛くない程度に、伊作の頬を叩いて言った。当然、伊作も他の保健委員も唖然と私を見る。その時、「駄目じゃないですか、天女様」と立花が医務室に入ってきた。



「もっと力を込めてパァンッとやらなければ、迫力がありませんよ」
「んなこと言われても、相手が伊作じゃ力なんて出せないし……」
「甘い! 甘すぎます! 力強くやらなければ面白くないじゃないですか!」
「暴力に面白さ求めんな」



私がそうツッコムと、立花は「次に行きましょう」と医務室から出て行ってしまった。アイツ人の話聞かねえな、本当。私は渋々、立花に着いていく。その際、伊作に「じゃあね」と言うのを忘れずに。



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