Oh!MyLord-4

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南の島よりはただの田舎みたいな場所。
でも目の前に広がる海は見渡す限り青く綺麗。
俺達の城は家賃2万円(価格破壊!)の小さな民家。
俺はお金持ってないから心配だったんだけど鷹は違った。
通帳には見たことない金額のお金が入ってた。

「売春した金で生活してたし家賃以外はほとんど金使ってないし退職金結構出たし。贅沢しなきゃ当面の生活費の心配はいらない」

俺と違って正社員だった鷹の給料は怖くて聞けなかった。
どれぐらいの頻度で売春していたかは知っていたけど。
本当にお金欲しかったわけじゃなかったんだ。
俺の通帳なんか見せたら笑われそうだ。
桁が違う。
鷹も俺も物欲はそんなにないから(鷹の欲しいはいいな、コレってことらしい)通帳のお金は消えない。
食費もいらないのはこの島ならでは。
近所の人がたくさん野菜とか魚をくれる。
島では珍しい若い人ってこともあってよく農家の人が手伝いを頼みにくる。
わずかなお金とたくさんのお礼の品を貰って、生活の不自由が無さ過ぎて怖いぐらいだった。
まぁ不自由と言えばケーキ屋がないこと。
記念日にケーキを買おうと思ったのに島にはケーキ屋がなくて。
パン屋のバターケーキしかなかった。
鷹はバタークリームがあまり好きじゃないし俺はケーキなんか作れないし。
しょんぼりしながら帰宅したら鷹がケーキ買っててくれた。
小さなスーパーのゼリーとかヨーグルトとかと一緒に並んでるパックに入ったショートケーキ。

「どうせ倫太郎じゃ見つけらんないと思って。小さいけど我慢しろよ」

鷹はなんて頭が良くて頼りになるんだろう!
馬鹿な俺じゃそんなこと思い付きもしなかった。
プレゼントは近所のお土産屋を経営しているお母さんと一緒に作った貝殻のブレスレット。
それから手紙をあげた。ブレスレット作るのものすごく大変だったのに鷹は手紙の方を喜んだ。
でも俺は鷹が笑ってくれたからそれでいい。
毎日毎日鷹が名前を呼んでくれて、笑ってくれるだけで俺は幸せなんだ。



今日はたくさん貝を拾った。
海に行けば山のように貝がある。
最初は怒られるかと思って見つけたら元に戻してた。
そしたら近所のおっちゃんがそれを見て笑ってた。
兄ちゃん達が食べる量ぐらいで怒る奴もいなければ食うに困る奴もいないって。
だから暇があれば俺は貝を拾ってる。
釣りが苦手(餌がうまくつけられない)な俺のできること。
鷹は俺に何にも言わないし望まないから俺は毎日毎日できることをする。
バケツに食べれるだけの貝を入れて城へ戻る。
開けるのに少しコツがいる玄関、もう慣れた。

「ただいま」
「おかえり。また貝拾ってきたのか?」
「うん。見て、これお味噌汁にしたらおいしいやつだよ」
「じゃあ今日の夕飯貝汁な」
「うん!」

鷹は砂抜きをすると言ってバケツを持って台所に行く。
俺はその間に風呂で手足を洗ってついでに風呂掃除。
それから服を着替える。
麦わら帽子をかぶったままだったとTシャツを脱ぐときに気付いた。

「倫太郎、今日日焼け止め塗った?」
「あ、忘れてた」
「また真っ黒なるぞ。前火傷みたいになって服着れなかったろ?」
「でも朝からだったし暑くなる前に戻ってきたから平気じゃないかなぁ」
「平気じゃないだろ。ローション塗ってやるから早く着替えてこい」

島に来た次の日、はしゃいで遊んで馬鹿をみた。
日焼け止め忘れて遊んでいたら真っ赤に日焼けしたのだ。
元々あまり日焼けをしたことがなくて、痛くて服も着れず寝れなかった程。
ちゃんと日焼け止めを塗った鷹でさえ少しだけ日焼けしてた。
それから必ず日焼け止めを塗ってから外に出るようにしてたのに。
朝は割と涼しかったから忘れてた。
タンクトップにハーフパンツで座れば首の後ろとか腕は鷹がローションを塗ってくれる。
俺は自分の足にローションを塗る。

「しみる?」
「ううん。そんなにはしみない」
「風呂はいる時気をつけろよ」
「うん」

全身がひんやりしてすーすーする。

「昼何食べる?」
「お隣に貰った魚の煮付けがまだ残ってる」
「じゃあご飯炊く?」
「ご飯も朝のが冷蔵庫にある」
「何にもすることないね」
「ヤる?」
「お昼前からそんなことしてたら馬鹿になるよ」
「だってすることない」

とりあえず畳に2人して寝そべる。
定職に就かず、呼ばれた日だけしか働かない俺と鷹は大抵暇してる。
先週はきゅうりの収穫と漁のお手伝い、来週はお花の出荷のお手伝い。
今週は特に予定がない。

「あ、地元のお祭り8月末だって」
「知り合いいそう」
「その前に親に会わなきゃ、俺」
「絶縁状態なんじゃないの?」
「そうだったんだけどね。保険とか事故とか色々」

1億かけた保険は鷹が解約した。
解約後の書類を送る場所がなくて実家を指定してたら親に見付かってしまったのだ。
しかも事故のことも聞かれて今鷹といるのもバレて。
うちの親と鷹の親も知り合いだからうちの親は慌てふためいていた。
息子はほっといても近所付き合いは気にするらしい。

「うちの親も倫太郎といるの知ってんのかもな。連絡して来ないけど」
「そうかも」
「じゃあ慌てふためいてんのはうちの親だな」
「どうして?」
「俺親にゲイなんだって言い逃げしたから。だから絶縁状態」
「あはは!鷹らしいね!」
「倫太郎は?」
「俺は半家出だなぁ。鷹を追い掛けて来ちゃった」
「倫太郎らしいな」

高校卒業して、気が付いたらもういなくなってたんだ。
鷹がどこにいるのか探して、見つけたその日に家出してしまった。
俺の世界は昔から鷹を中心に回っているんだ。
うんと小さい時から今日この日まで。
これから先もそう。
好きだって気付いた日からそれは加速するように。
眼鏡越しに見える鷹の顔、前より少し日焼けして色が黒くなってる。
幻想じゃないかと思って手を伸ばしてみた。
ちゃんとそこに鷹がいた。

「ふは、鷹だ」
「俺以外がよかったわけ?」
「まさか。鷹がいないと俺の世界は止まるんだよ?」
「何それ」
「鷹を中心に俺の世界は回ってるんだ。最近はね、鷹がいっぱい笑ってくれるから俺の世界は日照りになりそうなぐらい晴れてるの」
「じゃあそろそろ泣かなきゃな」
「嘘、冗談!天気雨降るから日照りにはならない!」
「ははっ倫太郎の世界は面白いな」

あ、また笑ってくれた。
畳の上に寝そべっているはずなのに花畑にでも寝そべっている気分だ。
お腹に手を当てて、足をばたつかせながら鷹は笑ってる。
この顔を見たいが為に馬鹿な俺は何年も鷹を追いかけ回した。
鷹にたった一言、真剣な顔して言うだけでよかったのに。

「鷹、愛してる」
「ホント、いつも突然なのな」
「ふと口から出ちゃうんだ」
「恥ずかしいからやめろよ。分かってるから」
「やめられないの。だって鷹が好きで好きでたまらないんだ。俺の頭のてっぺんから足のつま先まで、全部鷹への愛でいっぱいで。もうどこにも入らないから口から溢れてくる」
「そーゆーのが恥ずかしいんだ」

鷹がそっぽを向いてしまった。
身体を小さくして顔を隠してる。
鷹の照れ隠し。
初めてこの姿を見たときには嫌われたのかと思ってすごく焦った。
だって初めてセックスした後だったから。
セックスが下手で嫌われたとか痛かったのかとか顔も見たくないのかと思って泣きそうになったのを覚えてる。
それを察した鷹がちゃんと説明してくれたけどやっぱり恥ずかしくてその時もそっぽ向かれた。
気持ちよくて幸せで俺の顔見たら顔が熱くなって恥ずかしいから落ち着くまで待ってほしかったんだって。
今も落ち着くまで待ってほしいってこと。
顔を見ないように気をつけながら鷹に寄って、鷹の背中に俺の背中をくっつける。
これなら顔見えないから鷹は怒らないよね。
しばらくの間、鷹が落ち着くまでいつも俺はこのままでいる。

「ねぇ、鷹」
「何?」
「まだ顔見たら駄目?」
「駄目」
「俺、キスしたい」

そう言ったら背中越しに鷹が動いた。
振り返れば鷹の顔。
目元を隠して、口をぎゅっと結んだままおおよそで俺の方を見てる。

「してもいいの?」
「ん!」
「ありがとう」

少しだけ突き出された唇。
そのまま触れるだけのキスを何度かして、少しだけ開いた口に舌を差し込んだ。
鷹の動かない舌を撫でてそのまま舌を抜く。
それから目元を隠してる手にもキスをした。

「鷹」
「何」
「やっぱりシたい」
「馬鹿になるんじゃなかったのか?」
「鷹が頭いいから俺は馬鹿でいいかなって」
「ははっ酷い言い訳!」

ようやく見えた鷹の顔。
鷹の腕が俺を捕まえて、それから鷹の唇が俺の唇を塞いだ。

「倫太郎、愛してる」
「・・・俺もっと馬鹿になりそう」
「手遅れだ」

そう、もう何もかも手遅れ。
鷹が好きすぎて俺の頭は鷹の事しか考えられないんだ。




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