Oh!MyLord-3
続
Oh!MyLord
続
Oh!MyLord-2
倫太郎が事故って保険会社から電話がきた時、正直ゾッとした。
冗談だったのに本当に死んだのかと思った。
内容は入院した費用とかその辺の支払いについてだったんだけど。
全部俺の口座を指定していたらしい。
倫太郎に連絡取ろうにもケータイの番号なんか知らないから実家に電話した。
絶縁状態だった親に連絡して、それから倫太郎の実家に聞いたら倫太郎も親と絶縁状態だった。
事故ったらしいって話をしたらケータイの番号教えてくれた。
変わってなければって言われて、かけてみれば病院の人が出た。
病院の人はなんとか生きてるとは言ったけど危険な状態だからいつ死んでもおかしくないと言った。
病院の場所聞いて行ってみればミイラみたいな倫太郎がいた。
それからムカついてたまんなくなって、吐けるだけの暴言を吐いた。
それからしばらく会いたくなかったから病院には行かなかった。
次に病院に行った時には話をする事に支障はなくなっていた。
医者は傷は残るけど視力低下以外に後遺症はないと言った。
目に傷が付いたんだと。
でも眼鏡かければ見える程度らしい。
だから気紛れに眼鏡を買ってやろうと思って、倫太郎には内緒で詳しい検査してもらった。
眼鏡作って、ひっそり寝てる倫太郎にかけた。
飲み物買うために部屋を出て、喜んだかなとか驚いたかなとか考えながら部屋に戻れば倫太郎は眼鏡外していた。
だからイライラしてぶん殴ってやった。
それから久々に話をしてみればわけのわからないことを言う。
正直ここまで馬鹿だとは思わなかった。
それからあんな事考えてたのも知らなかった。
倫太郎の入院期間が長かったから倫太郎の住んでたアパートは引き払った。
金の無駄だと思ったから。
それから倫太郎の荷物は大半を処分した。
服とか本以外は全部。
やたらにあるアルバムの中は高校の時の俺と倫太郎の写真だけが入っていた。
同じような写真もぶれた写真も全部。
俺はこんな風に笑うのかと思った。
そのアルバムも含めて残った倫太郎の荷物は全部俺の部屋にある。
でももう俺の部屋の荷物も少ない。
必要最低限のものだけになった部屋は寂しいものだった。
俺はでかい鞄を1つ手にとって病院へ。
倫太郎は今日退院する。
「鷹!」
「元気そうだな」
「うん。鷹は元気?」
「おー、元気元気」
倫太郎がまとめた荷物をでかい鞄に突っ込んでいく。
その間に倫太郎を世話になった先生とか看護師に挨拶をしに行かせた。
ほっとくとだだそこにいるだけなのだ。
約束通り毎日毎日飽きもせずに俺にしてほしい事を書いたノートは7冊。
パラパラめくればなんてことはない、要は俺に笑ってほしいって事。
それからたくさんの愛の言葉。
そのノートも全部鞄に詰め込んで倫太郎がいるであろうステーションに行く。
看護師に囲まれてる倫太郎はにこにこ笑って退院祝いだという菓子やら花やらを受け取ってる。
割と顔の良い若い男なんてそら狙い目だよな。
倫太郎は母性本能くすぐるタイプだと思う。
あんなに綺麗な女に囲まれてるくせに俺に気付くと俺の方に走ってくる。
そして転けた。
「もう、急に走ったらいけないって言ったでしょ」
「す、すみません」
「立てますか?」
「平気です。ありがとうございます」
倫太郎の筋力はまだ元に戻ってない。
もやしだとは思っていたけど余計にもやしになった。
「ほら、しっかりしろ」
「ありがとう」
手を貸してやればヘラヘラして俺の手に掴まって立ち上がる。
倫太郎はしばらく筋肉痛に悩まされるに違いない。
「気をつけてね、倫太郎くん」
「もう信号無視したら駄目よ」
「はい、大丈夫です」
「先生方にもコイツがお世話になりましたと伝えて下さい」
「お世話になりました」
一通り看護師さん達に挨拶してから病院を出る。
適当にタクシーを捕まえて目指すは俺の城。
部屋に入ってでかい鞄ももらった菓子も花も玄関先に放り投げる。
倫太郎のシャツを剥ぎ取ってベルトを外してそのまま床に倒れ込む。
「鷹、鷹待って」
「何ヶ月待ったと思ってんの?」
「でも、」
「また売春しても俺はいいんだけど」
「駄目だよ、絶対駄目」
「じゃあごちゃごちゃ言うなよ」
いつの間にかちゃんとした恋愛の仕方を忘れた俺にはこんな事しかできないんだ。
好きだってどう表現するもんだった?
愛してるってどう囁くわけ?
あの時の倫太郎と一緒に忘れたものはたくさんある。
倫太郎を忘れてた間に手に入れたのはセックステクニックだけ。
何の反応も示してない倫太郎のペニスを口に含んで舐める。
倫太郎の太股がビクッと跳ねて、徐々にペニスも硬くなる。
喉にくわえてストローク、苦しくはない。
慣れた行為だから。
倫太郎のペニスは硬いのに倫太郎は気持ちよさそうではない。
ペニスから口を離して顔を上げる。
「ペニスガチガチにさせてるくせに何か不満なわけ?」
「鷹、こんな事しなくていい」
「何今更」
「鷹は笑ってくれればそれでいい」
「ハァ?俺のテクが不満なわけ?ちゃんと気持ちいいだろ?」
倫太郎はゆっくり起き上がって俺の目に手をかぶせる。
それから俺の唇に震えてる唇が当たった。
「俺はこれで満足だよ。このまま鷹とシちゃったら、俺は3万くれる人と何も変わらない」
「何なの、お前」
「俺は鷹が何もしなくても何もできなくても鷹がいればいいの。だからまずはいっぱい話をしよう?俺鷹に話してないことも話したいこともたくさんあるよ」
「それで?」
「俺の知らない鷹も、鷹の知らない俺も知って、それから明日からの予定を決めよう。鷹にしてほしい事はたくさんあるって言ったでしょ?」
「セックスは?俺としたくないわけ?」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあ何なの?」
「俺はセックスするためだけに鷹を欲しいと言ったわけじゃないんだよ。俺は鷹に笑ってほしいの」
そんな事言われなくてもわかってる。
でも俺にはその気持ちに答える方法がもうわからないんだ。
「大丈夫だよ、たくさんたくさん教えてあげる。俺は馬鹿だけど、少しは鷹が知らないことを知ってるんだよ」
「人の心を読むな」
「ごめんね、ごめん。謝るから、だから泣かないで。もう鷹は俺のだよ。俺の鷹は笑ってるんだよ。いつもいつも綺麗に花が咲くみたいに、色で言うならオレンジと黄色で目を細めて笑ってるんだ。俺は鷹が笑ってるだけで幸せなんだ」
俺の目に被された倫太郎の手が涙で濡れていく。
溢れた涙は倫太郎が拭き取ってくれる。
ドライアイで悩んでいた目元は溢れた涙が滲みて痛いぐらいだ。
ようやく倫太郎の手が離れて、ぐちゃぐちゃになった顔は自分のシャツで拭く。
それから倫太郎の眼鏡を外した。
「鷹、眼鏡ないと俺何も見えないよ」
倫太郎を無視してそのまま倫太郎の首に腕を回す。
鼻先を付けて、視界いっぱいに倫太郎の顔。
「これで見えるだろ?」
「うん。鷹がいる」
少しだけ首を傾けて、それから触れるだけのフレンチキス。
倫太郎が教えてくれた好きって表現方法。
でも笑ってるのは俺じゃなくて倫太郎。
「何?間違ってた?」
「ううん。大正解」
「俺はお前と違って頭いいんだ」
それからまた唇を重ねて、何度も何度もフレンチキスだけを繰り返す。
唇が痺れるまで何度も何度も。
唇が乾く暇だってない。
馬鹿の一つ覚え、ガキでも出来る簡単な好きって表現方法を俺は飽きもせずに繰り返した。
***
何もなくなった俺の部屋、こんなに広かったかと思う。
結局この部屋で俺と倫太郎がセックスをする事はなかった。
「鷹、行くよ。不動産会社の人待ってるよ」
「うん」
スニーカーに足を突っ込んで紐を結ぶ。
玄関先にいる倫太郎は麦藁帽子をかぶってキャリーバックとボストンバックを持っている。
「気が早いんじゃねーの?」
「楽しみで寝れなかったの知ってるでしょ」
「ガキ」
玄関のドアを閉めて、倫太郎と一緒に外にいた不動産会社の人にカギを渡す。
これで俺の城は無くなった。
後の事は不動産会社に任せてある。
俺は先に歩き出した倫太郎を追いかけて、倫太郎の手からキャリーバックを取る。
「晴れてるといいなぁ」
「予報は雨だったろ。まず無事に到着するかが先だ」
「海綺麗だといいね」
「雨降った後の海が綺麗な訳ないだろ」
「俺が掃除する」
「できるもんならしてみろ、海洋汚染なめんな」
俺達が向かう先は南の島。
とりあえず1冊目のノートの一番最初に書いてあることをする予定だ。
「島ついたらセックス解禁な」
「うん、そうだね」
「・・・また嫌って言うのかと思った」
「言ったでしょ、シたくない訳じゃないって」
今更なのに顔を赤くして笑う倫太郎につられて俺も笑った。
「倫太郎、早く行こう」
「う・・ん・・・?えっ名前、俺の」
「倫太郎」
「うん、俺、倫太郎っ!鷹っ俺、俺っ」
「飽きるまで呼んでやるよ」
「うん!鷹、鷹!」
「倫太郎まで俺を呼ぶ必要はないだろ」
「鷹!」
倫太郎が教えてくれた2つ目の好きって表現方法。
俺はまた馬鹿の一つ覚えで飽きるまで倫太郎を呼んだ。
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