そしたら俺は
・この
ネタから。
・くっついた後のお話。
・雰囲気で読んでほしい。
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透き通る海に沈めば、少しは綺麗になるだろうか。望まぬものに変わってしまったこの身を、清めることができるだろうか。
こみ上げる衝動のまま、冷たい水に足をひたす。ゆっくりと膝をついて倒れこめば、どこまでも高く澄んだ空が見えた。それは、とても美しい色をしていた。大好きな妹の色を。
思わず手を伸ばすけれど、触れることはできなくて、俺には許されなくて。胸が締め付けられる。こぼれた涙は海に溶けた。
不意に、にじむ視界に青がよぎる。溢れた涙を拭えば、美しい不死鳥が空を舞うのがよく見えた。空と海と同じ色をしていながら、決して溶けてしまうことのない輝く青い鳥が。
「…マルコ」
空に届くことのない手で、彼を捕まえるなんて出来ないけれど、それでも両手を天に伸ばす。
なぁ、降りてきてくれないか。そしたら、俺は。
ばさり、羽音が響く。その音と共に近づく大きな影。俺を潰さないようにか勢いを殺して、不死鳥は広げた腕の中に舞い降りてきた。
熱をもたない青い炎が俺を包んで消えていく。人間の姿に戻ったマルコは穏やかに微笑んでいた。
「呼んだかい、フィン」
「っ…」
広げたままの両手でマルコを抱きしめてみれば、背中に腕がまわされ、そのまま膝に乗せられる。海水のせいで冷えた身体には、少し高い体温が心地よかった。
届かないと思っていた温もりが俺を包む。零れた涙を、無骨な指が拭ってくれて、自然と唇が綻んだ。
「マルコ……」
泣き笑いで名前を呼べば、返されたのは優しい口づけだった。
あの空に手は届かない。この海に溶けることもできない。あの頃には戻れない。俺は変わってしまった。
だけど青い鳥がそばに居てくれる。それだけで俺は幸せだ。
そしたら、俺は
幸せだって笑えるから
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