その日、一年Bクラスはいつになく騒めいた。
HR中に蹴り開けられた教室のドア、厚顔無恥に佇む部外者は金髪緑目のとんでもない美形で。一部の生徒から黄色い声が上がりながらも、怯えが走る面々に異邦人は全く表情を変えない。
その眼光がさっと教室中を見回し、目当てを見つけ唇に笑みを張りつければ。
教師は愚か、不良的な生徒達まで失神し掛けたらしい。
「松原瑪瑙」
低く良く通る声で囁いた男の名は、大河朱雀。二年Fクラス総代、帝王院の裏番とでも言おうか。
そうやって人を見下す様と声音が何よりも似合い、また、何より神々しく見える。
哀れ、狙われた子羊は寝坊して朝飯抜きの刑に処された所を、心優しいクラスメートから貰ったお菓子で乗り過ごしていた所だった。
齧っていたじゃがりこをポロッと落とし、見るも無惨に悉く青冷め、ぶわっと浮かぶ目尻の涙を拭いもせずただ見ている。
「…付いてこい」
逆らう事を許さない声で告げた男が背を向ける。
皆が沈黙している中、ゆるゆる立ち上がった子羊は何を思っていたのか。
「何でオタクさん達と山田先輩達が天井から見てるんだろ…ぐすん」
「早く来い、まめりーな」
以下次号!なんつて。