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全てが失われようとも、
 まだ未来が残っている



プロローグ


長い間、世界の四隅の一角を担っていた、偉大だった海賊が死んだ。

ある者は華々しいと讃え、ある者は馬鹿馬鹿しいと嘲笑し、そして、ある者は惨めと嘆くような「死」だった。つまりは見る者によって彼の死の意味も価値も全く違うものとなり得るのだ。


任侠に等しい立場から、海だけではなく陸をも睥睨し、堅気の人間たちには「必要悪」として存在していた彼の死の余波は意外と大きく、さまざまな町を村を次々と押し流していった。

今まで、この世の悪と呼べる部分と、ほぼ無関係に在り続けたこの村も例外ではない。

「……」

女は、一人、沈黙と共に佇んでいる。

村は、狂乱の時代の幕開けによって惨憺たる様相と成り果てた。見慣れた風景は、いずこへか消え去っている。どうしても、元の姿を思い返すことができなくなるほどに。

あの焼け焦げた木の根元には、家があったのか。それとも何か違うものがあったのか。記憶を何遍ほじくろうが、顔を出すのは昨夜の業火の光景のみだ。

偉大だった海賊に焚きつけられた、ただの無法者たちが放っていった火は、彼女の故郷を呑み込みつくした。今在るのは、文字通りの残骸でしかない。命を落とした者は、何人いるだろう? いや、生き残った者は何人いるかを数えた方がきっと早いのだ。

ひと通り周囲を眺めた彼女は、黙祷の意を込め、しばし俯く。そして顔を上げた。歩き出すために。



 @海兵として海に(×クザン)
 A賞金稼ぎとして海に(×アプー)
 Bこのまま陸に(×シャンクス)

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