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イチャイチャアンバランス(1)

「恋はいつでもハリケーン、って誰かが言ってたけどよ……マジだったんだな」
「シカマル、うるせぇっ! まだそうだと決まった訳じゃねーだろ!!」
「黙れナルト、ヒナタが何か言ってるぞ」
 微妙にかっこつけたがるシカマルに、ナルトが反発する。と、すぐにサスケがナルトの頭を押さえつけ、ナルトは身動きが取れなくなった。
 第三小隊の談話室において、事務机の後ろからオタサーもとい暗部小隊の姫の姿を監視しているのは、ナルト、サスケ、シカマル、キバ、ネジ。シノは野郎同士狭いところでぎゅうぎゅう押し合うのは好かないらしく、少し離れた場所からヒナタの様子を見守っているというか監視している。
 本来なら極めて高い察知能力及び感知能力を誇る日向ヒナタともあろう者が、そんな彼らの怪しげな行動にまるで気づかないのは、彼女が完全に他のことに気を取られているからだ。

「……せんせい」

 上の空で、そう呟くヒナタ。手元の仕事は先程から少しも進んでいないように見える。実際、進んでいない。何よりも早く仕事を終わらせてから他のことを始める彼女にとっては、元来有り得ないことである。

「い、今、“先生”って……」
「……う、嘘だッ!! 言ってねー、言ってねーってばよっ! 誰が何と言おうとっ、オレは絶対に信じねーぞ!!」

 両手に最大限の力を込めて耳を塞ぎ、そう叫びながら、ナルトは猛スピードで部屋を出て行った。現実逃避した脱落者、一名。

「おい、ナルトっ! ……ったく」
「ヒナタ様、やはり……やはり、あの男のことが……」
「ネジ、お前まで……って、おいお前泡吹いてんぞ!? 大丈夫か!?」

 シカマルがそう言うや否や、がたん、と大きな音を立ててネジも気を失った。従兄妹同士の関係ではあるが、シスコンと呼ぶべきか親馬鹿というか。どちらかといえばそういう目でヒナタを見ているらしいネジにとって、ヒナタが他の男に夢中になる姿なんてものは、もっとも見たくなかったに違いない。

「チッ……倒れるならもっと静かに倒れろってんだ。ヒナタに気づかれ……」
「いーや。幸か不幸か、あいつの耳には届いてねーみたいだ」

 舌打ちをしてヒナタの方を見やるサスケと、苦笑いしてそれに答えるシカマル。そのとき、二人は同時に気づく。自分たちはともかく、この状況でキバが取り乱していないのは明らかに不自然ではなかろうか。

「キバ、お前は大丈夫なのか? 珍しいな」
「あん? オレをナルトやネジと一緒にしてもらっちゃ困るね。こいつらに比べりゃメンタル弱くねーよ」
「……少しは成長したんだな。昔はヒナタが他の男の名前呼ぶ度に嫉妬ですげー顔になってたのに」

 眉を上げ、感心したようにサスケは言う。それにムッとしたらしく、キバは少しサスケの方を睨んだ。

「……おい、お前ら静かにしろ。ヒナタが何か喋る」

 シカマルの一言で、その場に緊迫した沈黙が流れる。

「先生……、会いたい…………」

顔を紅潮させ、そう呟くヒナタ。その姿はまさしく、恋する乙女以外の何者でもなかった。他の男どもが固唾を呑んで見守る中で、あのミステリアスな少女が胸の内を明かすなんて。というか、ヒナタがこんな顔を見せるなんてこと自体、誰にも想像がつかなかった。初めてのことだらけで頭がパニックを起こしたのか、キバは先程の余裕など微塵も感じさせないような情けない声を上げて、姿を消した。

「あいつ瞬身の術使って逃げやがった……」
「フン、腰抜けが。一度でも認めて損した」
「ちなみにオレは最初からあいつの言うことなど信じていなかった。何故ならキバとはそういう男だからだ」
「シノ……そうかお前も居たんだな。これで生き残りは三人だけか……」

 ふう、とシカマルは溜息をつく。サスケやシノも考えていることは同じらしく、陰鬱そうに顔を下に向けた。

「あいつがこんな風に男に惚れるとは……」
「しかも相手があのスケベ上忍ときたもんだ」
「まったくだ、先が思いやられる……」

 やれやれと肩をすくめる同期には目もくれず、ヒナタは夢見がちに両目を閉じた。


読んでくださりありがとうございました!
すっかり御無沙汰しているにもかかわらず、続きものを載せてしまいすみません(土下座)
スレヒナの恋の行方やいかに!

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