己の未熟さが隙を生み攘夷派の刀をこの身に受けることになってから数日が経った。
共にいた隊士は皆息を引き取って逝ってしまってたというのに、運良くともしぶとくとも言えるが私はあの刀傷を受けてもなおかろうじて生きていた。そして浪士達と斬り合いをしたあの場所で三途の川を渡ろうしていたところを土方さんと総司に見つかったのだ。 運ばれ医者に出来る限りの最善の治療を受け今現在に至る。そう出来る限りの最善の治療を受けたのだが、いまだに私は片足を三途の川に突っ込んだままだった。簡単に言うならば今現在も死にかけている状態。意識はあるんだが目が霞む、人の声は聞こえるんだが喋れない、身体を起こそうにも激痛が走り身体が軋んで起き上がれない。私はこんなにも軟弱だったのかと苦汁を嘗める思いで呻いた。
医者には傷が思っていた以上に深くこのまま衰弱死するか縫った傷口から菌が入り死に至る可能性が高いと言われていた、例えこの死の淵から抜け出せたとして刀を握ることはできぬだろうとも。その言葉を聞いた時、私の頭に浮かんだ言葉は「役立たず」。刀を握れず戦うことも、もしかするなら立つことすら出来ずに寝たきりになるのならば…それでは私は役立たずではないか。役に立とうと、その思いで此処まできたのに。 死にかけながらも焦りが生まれた瞬間だった、それが私の中で全ての切っ掛けとなった。
覚悟とともに全てを決める切っ掛けとなったのだ。
「土方さん…」
「……」 「…なまえちゃん、どうするんです?」
なまえが攘夷派の刀を身体に受けてから数日が経った。虫の息だったなまえを見つけてから、運び医者を呼び出来る限りの治療をさせる、それはできた。しかし実際のところ、その身体は回復の兆しを見せるどころか悪化の一途を辿り、あいつを三途の川へと導かんとしていた。 いまはあいつを少なくとも医術の知識がある山崎と同じ女である千鶴が看病をしているが、あの場にいてもその横にいるだけでなにもできない俺達。その歯痒い状況に腹が立つ。
近藤さんに至っては、なまえを此処に連れてきた自分の責任だといつもは笑い溢れる唇を噛みしめていた。
「土方さん」
総司が俺を呼ぶ。わかってるわかってはいるんだ。ちゃんと今の現状のこともこのままなら遠くない未来あいつがいなくなってしまうことは理解している。
一時的だがあいつを救う方法があることも。
「わかってる…」 「……」 「危篤の状態とはいえ、そう簡単に決められることじゃねえんだ」
酷い言い草になるが、こうなっていたのが平隊士だったのなら悩む必要なんてなかった。そのまま死んでゆくのと、己が変わってでも生きるという道を選択させられた。 だが、その選択を迫られようとしているのは平隊士ではなくあいつ。まだこのことは話はしていない。いや話せないんだ。
俺はどうすればいい。
終わりは 見えていた(もうすでに覚悟を) (決めた自分がいる)
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