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そのままで





「大地さーーんっ」

後ろから飛びつけば、大地さんは「なんだよ」って笑う。

「んーんなんでもないです」

「甘えん坊かよ」

背中から離れてたら、大地さんはこっちを向いて頭を撫でてくれた。


「なんか兄妹みてー」

「わかる」

龍と夕にいつもそんなことを言われる。
たしかに私の方が一つ年下だし、身長も小さいし、いつも私が大地さんに甘えて、大地さんはそれを受け止めてっていう感じ。

最近の悩み事の一つ。



「やっぱりそう見えるよね…」

俯いて呟いたら、龍と夕は私が泣いていると思ったのか、慌てて、

「い、いや!恋人同士に見えるぜ!うん!見える!!!」

「その通りだ!龍!」

って訂正してくれた。

「へへ、別に大丈夫だよ。どうやったら大人っぽくなれるかなぁ…。潔子さんみたいになりたいなぁ」

「大地さんはそのまんまのお前が好きなんだろ?」

「そうだぜ!!!自信持てよ!」

「ん……ありがと龍、夕」

甘えるのがいけないのかな。
大地さんってなんか甘えたくなっちゃうけど、もう少し大人になろう。



次の日から私はとにかく大人になろうと頑張った。
いつも二つ結びしていた長い髪を下ろして、巻いて…。
スカートも少しだけ短くして。

「おはようございます、大地さん」

少し寂しかったけれど、挨拶する時も抱き着くのはやめた。



部活が始まる前。
早くホームルームが終わった私は体育館で準備をしていた。


「あああ…寂しい……」

飲み物を作りながら、ぼそりと呟いたらちょうどやって来た潔子さんに聞かれてしまった。

「どうかした?」

「潔子さん!?えっ、あ……いや」

「澤村も寂しがってたわよ」

「へ…?」

潔子さんは全てを分かっていたようで、楽しそうに笑っている。

「なまえが冷たいーって」

「ええっ、冷たくなんて……」

「澤村ね、いつもなまえがニコニコしながらくっついてきてくれるの幸せだ、って言ってたわよ?」

そんなこと言ってくれてたんだ…。

「なまえが思ってるより澤村は子どもよ?なまえに他に好きな人出来たのかもって焦ってたわ」

「私は大地さんだけが好きなのに…大地さんに近付きたくて大人になりたくて…」

「澤村、体育館にきてたわよ?」

「……はい!」


私は走って体育館へと向かった。
息を切らしている私を不思議そうに見つめる大地さん。

「なまえ?」

「大地さん、大好き」

いつものように大地さんに抱きつけば、しっかりと受け止めてくれた。

「大地さん、私ね、大人っぽくなりたくて…大地さんに釣り合うようになりたくて。でもね、このままの私でもいいですか?」

「…なに言ってんだよ。当たり前だろ。そのままのなまえが好きなんだ」


けれど大地さんは、「あ」と言って続けた。

「でも、その髪型も似合ってる」


そう言って頬に優しいキスをくれた。





そのままで
(「でもスカートは短すぎ」)





あとがき

お兄ちゃんみたいな大地さん。
でもきっとヤキモチもやくし、子どもみたいなところもあると思います。



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