7、男子バレー部にお邪魔しました
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「お待たせー」


バレー部の監督にお願いしたところ撮影許可を快く頂いて、写真部の後輩二人のところに戻ってきた。






「ど、どうでしたか!? あのイケメンさんを撮っても良いですか?」

「もしかして駄目でした?」

「ちゃんとOK貰えたよ。ただボールの流れ弾には気を付けてね」

「は、はい!!」

「分かりました、よしっ……良い写真が撮れそう」



後輩二人に伝え、私達は試合をしているバレー部員にカメラを構えた。




ファンの声援が騒がしく、初めて来た男子バレー部に「凄い」と改めて思った。行き交うボールも凄く早くて、バレーのルールなんて詳しく知らないけど、とにかく私はバレーの試合に見惚れていた。




シャッターを切るのを忘れずに、彼らを捉えた。今まで、動きのある写真なんてあまり撮っていなかったから、



今が凄く楽しかった。








でも、




「(さっきから、徹の視線が痛い)」


徹の事だから、どうせ「何でいるの!?」って言いたいんだろうな。練習してるところなんて見に来た事なかったし、でも徹はバレーが上手いんだなぁって素人目でも分かった。

何枚か徹を中心にファインダーに収めていたが、少しカメラを動かして岩泉君を撮った。バレーをしている岩泉君に、思わずシャッターを押す手が止まり、気付いたらカメラを降ろして、自分の目で彼を見ていた。





「(……初めて、見た)」


岩泉君のバレーは、とにかく凄くかっこ良かった。





また、私の胸がズキッと痛くなった。


もっと彼を見ていたい。









「及川先輩かっこいいですー!」


後輩の女の子は男子バレー部の噂のイケメンの名前をすぐに覚えたのか、かっこいい!を連呼しながらカメラで撮影していた。きっと彼女は徹しか撮って無いんだろうな。

もう一人の後輩の男の子は、人というよりは試合全体をファインダーに捉えていた。うん、コートの全景って良い写真になると思う。





「(私も、撮ろう)」










****








試合は進み、

あと4点でマッチポイントだった。





「岩ちゃんナイス!」

「おー!」

「葵、ちゃんと見てくれてるかなー」

「あんまキョロキョロすんなよ」

「だって葵がバレー部を見に来るなんて初めてじゃん!かっこ良い所ちゃんと撮ってくれてるかなー?」

「ん?……ああ、葵は写真を撮ってるのか」

「多分そうだと思うよ、あそこにいる二人も写真部っぽいし。ほら葵の隣にいる男子とか」

「……。」



及川の言う通り、葵の隣にはカメラを持った男子生徒がいた。ジャージがほとんどの男子の中では、制服姿がやけに目立った。

ここからでは全く聞こえないが、二人は何かを話しているようだった。







「何を話してるんだろーね。岩ちゃん気になる?」

「あ? 何で気になるんだ?」

「別にぃ」

「意味わかんねー事を言ってねぇで次行くぞ!」

「はいはーい」


試合が終わったら葵の所に真っ先に行こうっと、そして撮った写真を見せて貰おう!






ボールをちょうど良い高さに上げて、岩ちゃんが力強いスパイクを打ってまた点が入った。いいねー、その調子で早く試合を終わらせてしまおうと、サーブを打つと


少し力が入らず、

弱いサーブを打ってしまった。






「(あ、これ取られるかも)」


そう思った通り、向こうの部員にサーブを簡単に拾われてしまった。これ絶対あとで怒られるなぁと思いつつ、コートの中に戻り、向こうの攻撃を備えた。



向こうのトスでボールが高く上がり、スパイクがこっちのコートに向かってきた。うちの部員はレシーブを構えたが、弾かれてしまった。そういや今スパイク打った人、あっちのエースだったなぁと呑気に弾かれて飛んで行ったボールを見ていると、



弾かれたボールは、カメラを構えている写真部の女の子の方に向かっていた。







「!」




危ない! と声をあげる間も無く



ボールが人に当たる音がした。
















「……ひっ!」


こっちに飛んできたボールを避けようにも全然体が動かなくて、バレーボールって当たると痛いのかな?怪我しちゃうかな、と思いながらギュッと目を瞑った。










「あれ?(ボールが来ない?)」


「っ……」

「え……葵先輩!!!?」




ボールが当たると思って身構えていたが全然痛くなくて、おそるおそる目を開けると、葵先輩に抱きしめられていた。


葵先輩はとても痛そうな顔をしていた。






「葵先輩!」

「大丈夫?」

「何言ってるんですか! 先輩の方が!」

「私は平気、良かった怪我がなくて」

「葵!」
「葵っ!」





ボールが当たった肩を押さえて立ち上がると、徹と岩泉君が辛そうな顔をして飛んできた。






「葵!? 大丈夫っ!?」
「バカ及川! 強打だったんだぞ! 大丈夫なわけねーだろ!!」



慌てている二人を見て、

思わず、ぽかんとしてしまった。






「葵先輩ごめんなさい!私が写真を撮るのに気を取られて前に出過ぎたばっかりに!!」

「すみません! 俺が弾いたボールです! ホントすみません!!」



写真部の後輩と、男子バレー部の男の子が一緒になって謝ってきて


どうしようかと考えていた。








「えっと、大丈夫だから……ね?」

「葵先輩ごめんなさい!!」

「(どうしよう)」

「葵、本当に大丈夫?」



泣いている後輩の女の子の頭を撫でていると、徹が真剣な顔で聞いてきた。

ボールは肩に当たった時は痛かったけど……今は大丈夫そうだ。


骨も折れていないっぽいし。






「うん、大丈夫みたい。試合を中断させてごめんね。私達もう戻るから」


口元に手を当てながら二人にそう言った。







「……。」

「(う……岩泉君の視線が痛い)」



きっと、呆れられただろうなぁ。

試合を中断させるし、後輩には怪我させそうになるし。ちゃんと周りを見ておかないと。



でもそれなりに写真も撮れたし、
そろそろ戻ろうかな。






「お邪魔してごめんなさい、じゃあ二人共そろそろ行こうか?」


泣きじゃくる女の子にハンカチを渡して、私達3人は体育館を出た。











「葵先輩、ごめんなさい」

「ううん。私は大丈夫だし、部員に怪我をしなくて良かったよ。良い写真は撮れた?」

「ハイ! バッチリ及川先輩をいっぱい撮れました! あとで見て下さい!」

「うん、見せて貰うね」

「あ、そういえば及川先輩が葵先輩の事を名前で呼んでたんですけど……知り合いだったんですか?」

「え? お前気付いてねーの?」

「え?」



一緒にいる写真部の男子部員に言われ、女の子はぽかんとしていた。







「葵先輩の名字って知ってる?」

「……及原さんでしたっけ?」

「誰だそれ。葵先輩の名字は「及川」だよ、あの及川徹と同じだろ」

「えええええええ!?」

「どう考えても親戚だろ、同じ名字だし」

「惜しいなぁ」

「「え?」」




部室に向かう廊下を3人で歩いていたが、私が立ち止まると後ろにいた2人も立ち止まった。



徹と親戚か。

いい線いってたけど、惜しい。






「残念だけど親戚ではないよ。正解は、徹と私は双子の兄妹でした。ちなみに徹が兄ね」

「「えええええええ!?」」



後輩2人にそう言うと、
2人揃って「似てない!」と言った。





(部室に帰ると、明らかに泣いた跡の後輩を見た茜に何事かと聞かれた。)





男子バレー部にお邪魔しました

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