10、イケメン王子様と男前魔法使い
───────----‐‐‐ ‐












「茜……」

「おー、葵、って何で顔赤いの?」

「別に何でもない……」

自由時間になったので写真部室に入ってすぐに扉を閉めた。部室の中には座って焼きそばを食べている茜がいた。



「葵の分も焼きそばあるよ、早く食べて体育館行こう」

「ありがと……」

「で、誰に告られたの?」

「!?」


思わず持っていたカフェラテを落としそうになった。





「こ、告られてないっ」

「へぇ?」

「う」

「誰? バスケ部の主将、は断ったんだっけ?」

「うん……」

「じゃあ誰かな、葵の顔をそんなに真っ赤にさせた野郎は」

茜は嬉しそうな顔で、ペットボトルに入ったお茶をのんでいた。




「あ、生徒会の山田か! アイツ葵の事狙ってたし」

「ち、違う」

「えー、じゃあ2年? 私そんなに後輩詳しくないんだけど」

「いや、だから告られたんじゃないってば」

「もしかして岩泉?」

「!」

「え、マジで?」

「ち、違う!」

「そうかそうか、岩泉だったのか、まぁアイツは葵の事好きそうだし」


けらけらと茜は楽しそうに笑った。




「そんな事、絶対ない」

「葵?」

「だって私、岩泉君の事避けてばっかりだし、なんか苦手だし、好きとかじゃないと思う」

「えー?でも岩泉って葵に優しいじゃん」

「それは、幼馴染のくされ縁だよ」

「ふーん」


焼きそばを食べながら茜はこれ以上追求するのはやめたようだった。







食事を済ませ、茜と一緒に体育館へと向かった。体育館はまだ開演前なのに人がいっぱいいた。


「人いっぱい、今から何が始まるの?」

「え、知らないの? 今から男子バレー部の劇が始まるのよ。葵の兄貴が主役の」

「ああ……」

なるほど、通りで女の子がいっぱいいるのか。ここにいるの女の子はほとんど徹のファンって事?



どうしよう、帰りたい。



「ほら、葵、嫌そうな顔しない!」

「でも茜、もう座るとこないしやめようよ」


なんでわざわざ徹が主役の劇を見なくちゃいけないの。どうせ徹はいつも通り格好良いと思うし、劇とか簡単にこなしちゃうでしょ。







「お、いたいた!」

「茜遅いよ! ほら葵も早く!」

「ありがとー!」

「え」


どうやら茜は他の女子に二人分の席を確保して貰っていたようだ。もうこれ見なくちゃいけないパターンじゃん。





「……。」

「え、なんで葵の機嫌悪いの?」

「あー、ちょっと無理やり引っ張って来たから」

「ほら葵、イチゴ牛乳あるよ?機嫌直しな?」

「……ありがとう」


隣にいた友人にパックのイチゴ牛乳を貰い、ストローをさした。イチゴ牛乳はカフェラテの次に好きな飲み物だからちょっと嬉しい。




「あ、葵の機嫌が治った」

「ほら葵も徹君の劇見ようよ」

「徹君は何の役をやるんだろー?」

「葵はいいよねー、徹君の顔を毎日見れるんだもん」

「毎日見れるけど、もう見飽きたよ」

「それが羨ましいの!」

「えー、徹の顔ってそんなに良いかな?」


「「「かっこいいよ!」」」


茜まで一緒になって言っていた。
そういえば徹は苦手だけど、顔はかっこいいって言ってたっけ。


時間になり、体育館が暗くなった。
そろそろ始まるみたいだ。


特に楽しみではないので、イチゴ牛乳をちゅーっと吸いながらステージの方を向いた。観客席にいる女の子が「きゃあ!」と騒がしくなった。


ステージにいる徹は王子の格好をしていた。相変わらずああいう服が似合うなぁ……とボーっと見ていた。周りの女の子達は自分の王子様!とでも言わんばかりのキラキラした目で魅入っていた。







****






観客席から聞こえる女の子達の黄色い視線。俺にとってはいつもの事だ。

ファンのみんなが見てるから頑張らなきゃ、今日だけの特別な王子様を見て欲しいから。





さーて次の台詞を言わなきゃ


「魔法使い様! 是非、俺に似合う素敵なお姫様を探して下さい」


ステージから観客席に向かって


一生懸命に覚えた台詞を言った。





「見つけて下さ……っ!」

「?(おい及川、台詞、早く言えよ)」


魔法使い役で同じステージにいた岩泉は、突然黙った及川に小声でそう呟いた。





「見に来てくれたんだね!」




「は!?」

「(あ、やば)どうか、俺に似合う素敵なお姫様を見つけて欲しいんだ!!」

「(何なんだ?)……では、私の魔法で探してみせましょう」


ヒヤッとしたが、なんとか台詞を繋いでステージから裏手に回ると、及川が嬉しそうな顔をしていた。






「お前何だその顔、緩んでんぞ。つーかさっきの何なんだよ? 台詞忘れたのか?」

「岩ちゃん、葵が見に来てる!毎年何回も見に来てってお願いしても絶対来ない葵が!」

「おまっ、声がデケェよ! 裏では静かにしろ! まだ劇は終わってねェんだぞ!」

「岩ちゃんも声デカイ!(小声)」

「わりィ!(小声)」


二人で大声を出してたらクラスメイト達に怒られた。






「で、葵がなんだって?」

「葵がいるんだよ、葵が見に来てるんならいつも以上に頑張らなきゃ! どうしたんだろ、最近の葵は俺に優しくなった気がする、ついに俺のファンになったのかな?」

「は……?」

「あ、岩ちゃんはいつも通りでいいよ、葵も女の子も誰も岩ちゃんの事を見てないから!」

「……。」


ゴツン!!と鈍い音がした。




「い"っ! 痛いよ、岩ちゃん……」

「あ? ならその辺の女の子に看病して貰え」

「……なに拗ねてんの?」

「拗ねてねぇよ」


さっさとステージ戻るぞ、お前一応この劇の主役だしな。
















「どうだった?」

「やっぱり徹君かっこいいー!」


一緒に見に来てた友人達は、嬉しそうに徹の話で騒いでいた。それを隣で聞いていた茜はニヤニヤと葵の方を見ていた。





「……なに?」

「さっき及川さ、葵の事気付いてたよね」

「はぁ、目立つの嫌いなんだけど」

「そりゃ無理でしょ、あの及川徹の双子の妹だもん。兄貴が人気過ぎるのが悪い!」


あははと茜は笑ったが、こっちとしてはいっつもファンの女の子達が敵意剥き出しでジロジロ見てくるから嫌なんだけど……今だってさっきから凄く見られてる。



早く体育館出たい。




けど、別に徹は嫌いじゃない。


「(徹の事は好き、家族だし)」



でも目立つ兄がいると大変。







「あーあ、岩泉君が兄だったら良かったかも」

「俺でいいのか?」

「!」

「おや? 岩泉じゃなーい」

「どーも」

「あ、あの……」


き、聞かれてた!
思わず呟いた独り言を聞かれてた!





「あのね、今のは……」

「ああ、大丈夫だ。及川には言わないから安心しろ」

「え? ああ……うん」


そういう事じゃないんだけど。
徹に聞かれてたらショック受けそうだし、黙ってて貰えるならそうしよう。





「で? 岩泉はなにかご用?」

「ああ、葵を借りていいか?」

「!?」

「………理由は?」

「及川が葵を連れて来いってよ、中学最後の学祭だから一緒に周りてェんだと」

「え、やだ」


徹と一緒に周りたくないので、はっきりと嫌だと言ってしまった。




「……。」

「ねぇそれって私も行っていい?」

「え、茜?」

「いいと思うぞ」

「よーしじゃあ4人で行こう!」

「え」


結局何も言えず、茜に引っ張られて連れていかれてしまった。衣装から制服に着替え終わった徹の前に現れると徹は凄く喜んでいたし、岩泉君も茜も楽しそうだった。


思わず私も、笑顔になっていた。



中学最後の学祭は、三年間で一番
楽しかったかもしれない。










学祭で撮った私達4人の写真を部屋のコルクボードに貼っていると、



自然と笑みがこぼれた。





(来年も、私達は一緒にいるのかな)




イケメン王子様と男前魔法使い









『…茜』

「おー、葵…って何で顔赤いの」

『別に何でもない…!』

写真部室に入って、すぐに扉を閉めた。
部室の中には座って焼きそばを食べている茜がいた。



「葵の分もあるよ、早く食べて体育館行こう」

『ありがと…』

「で、誰に告られた?」

『…!!』

思わずカフェラテを落としそうになった。





『こ、告られてないっ』

「へぇ?」

『…う』

「誰?バスケ部の主将?…は断ったんだっけ?」

『…うん』

「じゃあ誰かな、葵の顔をそんなに真っ赤にさせた野郎は」

茜は嬉しそうな顔で、ペットボトルに入ったお茶をのんでいた。




「あ、生徒会の山田か!アイツ葵の事狙ってたし?」

『ち、違う…』

「えー?じゃあ2年とか?私そんなに後輩詳しくないんだけど」

『だから告られたんじゃないって』

「じゃあ岩泉?」

『!』

「え、マジで?」

『…ち、違う!』

「岩泉だったのか、まぁアイツ葵の事好きそうだし」

けらけらと茜は楽しそうに笑った。




『…そんな事、絶対ない』

「葵?」

『私、岩泉君の事避けてばっかりだし…苦手だし…好きとかじゃないと思う。』

「えー?でも岩泉って葵に優しいじゃん」

『幼馴染のくされ縁だよ…』

「ふーん」


焼きそばを食べながら茜はこれ以上追求するのはやめた。







食事を済ませ、茜と一緒に体育館へと向かった。体育館はまだ開演前なのに人がいっぱいいた。


『…人いっぱい、今から何が始まるの?』

「え、知らないの?今から男子バレー部の劇が始まるのよ。葵の兄貴が主役の」

『ああ…』

通りで女の子がいっぱいいるのか…。
ここにいるのほとんど徹のファンって事?


帰りたい…。




「葵、嫌そうな顔しない!」

『…茜、もう座るとこないしやめようよ』


なんでわざわざ徹が主役の劇を見なくちゃいけないの…




「お、いたいた!」

「茜遅いよ!ほら葵も早く!」

「ありがとー!」

『…え』

どうやら茜は他の女子に二人分の席を確保して貰っていたようだ。…もうこれ見なくちゃいけないパターンじゃん。




『…。』

「え、なんで葵の機嫌悪いの?」

「あー、ちょっと無理やり引っ張って来たから」

「ほら葵、イチゴ牛乳あるよ?機嫌直しな?」

『…ありがとう』

隣にいた友人にパックのイチゴ牛乳を貰い、ストローをさした。イチゴ牛乳はカフェラテの次に好きな飲み物だからちょっと嬉しい。




「あ、葵の機嫌が治った」

「ほら葵も徹君の劇見ようよ」

「徹君は何の役をやるんだろー?」

「葵はいいよねー、徹君の顔を毎日見れるんだもん」

『もう見飽きたよ』

「それが羨ましいの!」

『…えー、徹ってそんなにかっこいい?』


「「「かっこいい!」」」


茜まで一緒になって言っていた。
そういえば顔はかっこいいって言ってたっけ。


時間になり、体育館が暗くなった。
そろそろ始まるみたいだ。


特に楽しみではないので、イチゴ牛乳をちゅーっと吸いながらステージの方を向いた。
観客席にいる女の子が「きゃあ!」と騒がしくなった。


ステージにいる徹は王子の格好をしていた。
相変わらずああいう服似合うなぁ…とボーっと見ていた。周りの女の子達は自分の王子様!とでも言わんばかりのキラキラした目で魅入っていた。







※※※※※※※※※※




観客席から聞こえる女の子達の黄色い視線。
俺にとってはいつもの事だ。


ファンのみんなが見てるから頑張らなきゃ、今日だけの特別な王子様を見て欲しいから。





さーて次の台詞を言わなきゃ…


「魔法使い様!是非、俺に似合う素敵なお姫様を…」


ステージから観客席に向かって


覚えた台詞を言った。





「見つけ…!」

「…?(おい、及川…台詞、早く言えよ)」


魔法使い役で同じステージにいた岩泉は

突然黙った及川に小声でそう聞いた。





「…見に来てくれたんだ!」




「はァ!?」

「(あ、いや…)…俺に似合う素敵なお姫様を見つけて欲しいんだ!!」

「(何なんだ?)…では、私の魔法で探してみせましょう」

ヒヤッとしたが…なんとか台詞を繋いでステージから裏手に回ると、及川が嬉しそうな顔をしていた。






「お前何だその顔…緩んでんぞ」

「岩ちゃん、葵が見に来てる!毎年見に来てってお願いしても絶対来ない葵が!」

「おまっ、声がデケェよ!」

「岩ちゃんも声デカイ!」

「わりィ!」

二人で大声を出してたら他の奴らに怒られた。




「で、なんだって?」

「葵がいるんだよ、いつも以上に頑張らなきゃ!どうしたんだろー最近の葵は、ついに俺のファンになったのかなー?」

「は…?」

「あ、岩ちゃんはいつも通りでいいよ、葵も女の子も誰も岩ちゃんの事見てないから!」

「…。」


ゴツン!!と鈍い音がした。




「い"っ!…痛いよ、岩ちゃん…」

「あ?その辺の女の子に看病して貰えば?」

「…なに拗ねてんの?」

「拗ねてねぇよ」


さっさとステージ戻るぞ、お前一応主役だしな。
















「どうだった?」

「やっぱり徹君かっこいいー!」


一緒に見に来てた友人達は、嬉しそうに徹の話で騒いでいた。それを隣で聞いていた茜はニヤニヤと葵の方を見ていた。





『…なに』

「さっき及川さ、葵の事気付いてたよね」

『…目立つの嫌いなんだけど』

「そりゃ無理でしょ、あの及川徹の双子の妹だもん。兄貴が人気過ぎるのが悪い!」


あははと茜は笑ったが、こっちとしてはいっつもファンの女の子達が敵意剥き出しでジロジロ見てくるから嫌なんだけど…さっきから凄く見られてる。



早く体育館出たい。




…別に徹は嫌いじゃない。




『(…徹の事は好き、一応…家族だし。)』






でも目立つ兄がいると大変だ…









『……岩泉君が兄だったら良かったかも』

「俺でいいのか?」

『!』

「おや?岩泉じゃなーい」

「どーも」

『あ、あの…』


き、聞かれてた!
思わず呟いた独り言を聞かれてた…!





『あの…今の…』

「ああ、及川には言わないから安心しろ」

『え?ああ…うん』

そういう事じゃないんだけど…
徹に聞かれてたらショック受けそうだし…黙ってて貰えるならそうしよう…。





「で?岩泉はなにかご用?」

「ああ、葵を借りていいか?」

『!』

「………理由は?」

「及川が連れて来いってよ、中学最後の学祭だから一緒に周りてェんだと」

『え、やだ』

「…。」

「ねぇそれって私も行っていい?」

『茜!?』

「いいと思うぞ」

「よーしじゃあ4人で行こう!」

『…!』


結局何も言えず、茜に引っ張られて連れていかれてしまった。衣装から制服に着替え終わった徹の前に現れると徹は凄く喜んでいたし、岩泉君も茜も楽しそうだった。


思わず私も、笑顔になっていた。



中学最後の学祭は、三年間で一番
楽しかったかもしれない…。










学祭で撮った私達4人の写真を部屋のコルクボードに貼っていると、



自然と笑みがこぼれた。





(来年も、私達は一緒にいるのかな…)


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