倉庫 | ナノ

書き掛け多数
今後再利用したりしなかったり

跡ジロ
その他


跡ジロ

ジローが事故に遭ったと聞いたのはもう一ヶ月も前の事である。連絡を受けた直後は全身の血の気が引いたような感覚に陥り病院のベッドでまるでミイラのように寝ているジローを見た時は卒倒しそうになってしまったほどのショックを受けた。どういう事だ!と思わず声を荒げると誰ひとりまともに答えないなか唯一「ごめんなさい」と震える声を発したのはまだ10代にも満たないジローの妹であった。
妹を庇うようにして車にぶつかったジローはぶつかりどころがややよろしくないところだったらしく目覚めるのに二日を要した。外傷は見た目のわりには軽くすぐにミイラのような包帯も取れ目が覚めた後も心配したのが損に感じるほど元気にすくすくと回復した。そうしてあっという間に退院し事故からちょうど一ヶ月ほど経った日の事である。学校も部活もオフの土曜日にジローの両親から連絡があり何事かと呼び出された病院へ急ぐと診察室の前でボーッと眠たそうに下を向いているジローがいた。その手前にいた両親はすぐにこちらに気がつき悲しそうな顔をしながらにわかに信じがたい言葉を俺に向かって吐いてきたのだ。

「慈郎の耳が聞こえなくなった」

その事を裏付けるようにすぐそばにいる筈のジローはずっと俺に気がつかなかった。


聞こえない、と言っても完全に音が遮断されたわけではなくあくまで聞こえづらいという程度のものだと医師は説明する。だが、ジローが時折全く聞こえないような素振りを見せるので、もしかしたら心因性もあるのではないかという結論に至った。あのジローがストレスを抱えているという事がなにかと信じがたいが、事実聞こえていないようなので医師でもない俺は信じる他に術がない。


「ジロー、昼飯」

昼休みになり机に突っ伏して寝ているジローの肩を叩きながらそう言うとジローはのっそりと身を起こし未だに眠たそうな顔でとろんと俺を見上げてくる。しばらくそのままきょとんとした表情を向けてくるジローに俺はもう一度、今度はやたらと大口を開けてゆっくりと「め、し」と短く言葉を紡ぐとようやくジローはハッとした表情をして時計を見やった後にニコーッと笑い椅子から立ち上がった。そして俺の手を引っ掴んでは学食へと足を運び日替わりメニューのハンバーグを注文した。
予鈴の音も聞こえないジローは常に寝ているせいもあって時間の感覚がズレる一方である。

「結局、ジローの耳の原因ってなんなん」

と、俺に問いかけてきたのは向かい合わせに座ってきた忍足だった。約束し合っているわけではないが学食で顔を合わせると自然と同じテーブルに集まり昼食をともにする。ジローの隣には岳人が座りいつものように身振り手振りで楽しそうに会話をしていた。

「考えられる理由としてはひと月前の事故の後遺症、心因性も可能性としてあるって話だ」
「事故のせいだとして、こんな時間差でくるもんなん?」
「珍しい話ではねぇらしい」
「元には戻るん?」
「……さあな」

本人は至って元気そうではあるが、テニスがまともに出来ないとあっては不安やストレスは今後自然と蓄積されていくだろう。寝ていれば元々静かな奴だったが喧しいあの声をしばらく聞いていないと思うとずうんと重い塊が胸に沈んでくるようだった。食欲もなく一番量の少ないものを選んだつもりだが全てを喉に通すには時間が足りなそうである。

「当事者よりお前の方が落ち込んでてどうすんだよ」

呆れたように、けれども自分もやりきれないような表情でそう横やりを入れてきた宍戸も本人を尻目に難しい顔で向かい合う。宍戸の隣では鳳が熱心に手話の本を読み込んでいた。
手話か。
こいつが覚えるとも思えないな。



***
ずっっっと続きが思いつかずに放置してたのでひとまずこちらへ。



跡部景吾の消失

気がついたら目の前には目覚まし時計が置かれていて朝七時の時を刻んでいた。あれ、こんなに立派な目覚まし時計なんて俺持っていたっけ、と首を捻りながらそれでも深く考えずに俺はけたたましく鳴るその時計の音を消す。支度しなくちゃ、と駆り立てられるように支度を始め、電車に飛び乗り学校へと向かった。

「おーっすジロー!お前が電車通学とか珍しいな!」

と混雑している車内からひょこりと顔を出し陽気に声を掛けてきたのは幼馴染みの岳人である。人の事は言えないが小さな背を必死に伸ばして俺の方へと手を振ってくる様子はなんとも可愛らしく、そんな姿に俺も手を振り返しながら確かに久々のような気がするな、と内心ふと不思議に思った。幼稚舎から氷帝にいる俺たちはその頃から電車通学だったし俺の親はどちらかと言えば放任で厳しくもないが必要以上に世話も焼かない。そのため遅刻しようがなんだろうが自己責任のひと言で送迎してくれる事なんてほとんどなかったのだ。電車以外の通学手段は無い筈なのに、なぜ、久々なんて気がしたのだろう。
電車を降り横に並んできた岳人に「俺、電車久々だっけ?」と確認すると「え?そうだろ?だっていつも……あれ?」と岳人も目を丸くした。同じ理由で違和感を感じたのだろう岳人は「んん?」と混乱したように首を捻るがしばらくしてポンッと手のひらを叩くと「お前朝練来ねぇし、今日久々に一緒に乗ってたからそう感じただけかも!」と笑う。ああなるほど、と俺も納得してテスト期間中で朝練のない今日を嬉しく思うやら悲しく思うやらだった。

岳人と別れ教室に入ると既に隣の席で教科書を広げている宍戸がいた。今日の一時限目に行われるテスト科目の英語である。頭を抱えながら教科書を眺める宍戸をぼんやりと見つめ、なんとなく湿っている髪の毛が気になり声を掛けると「朝自主練してシャワー浴びた」とだけ返ってきて感心する。髪を切ってからというもの見違えるように泥臭い熱血野郎になった宍戸は朝練がないとかテスト期間であるとかそんな事は関係ないらしい。おそらく巻き込まれたであろう鳳を思うとまだ見ぬテスト結果に少しばかり同情するが、しかし宍戸は洋楽を好んで聞く意識高い系のくせに英語が苦手なのはなぜなのだろうか。そう素直に口にすると「うるせぇ、お前もどっこいもどっこいだろ!俺はこれでもそこそこ勉強もしたんだぜ。どうせお前はなにもしてないだろ」と悪態を吐かれた。「いや俺、結構やったよ。ていうか前回が赤点ぎりぎりだったからやらされたっていうか……」とそこまで反論してまたも、はて?と俺は首を傾げる。やらされたって誰にだろうか、確かに前回は三教科が赤点ぎりぎりでもしそれらが赤点に届いていたら追試や講習を受けるはめになっていた。そうすると部活にも出られなくなるため今回はスパルタ気味に勉強をさせられていたのである。もし今回赤点をとればテスト後すぐに控えている合宿に支障をきたすという理由もあった筈だ。しかし、当の俺にスパルタ教育をした相手の名前や顔が出てこず、そもそもそんなやついたか?とさえ今の俺は疑問に思っている。宍戸は「どうだか」と俺の言葉にそう返事をするとまた教科書に向き直った。のちに返却されてわかる事だが、その日の二限目に受けた古典漢文は、クラス最高点だった。

テスト期間中の唯一いいところは午前で学校が終わるところである。軽くテニスをしてから帰路につきカラオケへと行き着いた俺たちは明日もテストがあるという事を一時無理やり忘れはしゃぎにはしゃいでいた。「政経なんて死ねぇ!滅べぇ!ハゲもろとも消え失せろ!」と今日の三限目の出来が散々だったらしい岳人が歌詞を無視してマイク越しにそう叫んでいる。政経担当の先生と折り合いがつかない岳人は政治経済が死ぬほど嫌いだった。反対に宍戸は意外と英語の出来がよかったらしく、さらに明日は得意分野の科目とあって余裕ぶっている。付き合いの悪い日吉はとっとと帰宅し現在この場にいるのは忍足と鳳を入れた五人だった。「鳳はテストどうだったの?」と問えば「可もなく不可もなく……どちらかと言えば不可寄りですけど」と苦笑いをする後輩は芸術方面以外はわりと平均点よりちょっと上程度らしい。勝手に勉強が出来ると思っていたが日吉のほうが断然出来るそうだ。「へぇー」と自分から話を振っておいて適当に相槌を打っていると「ジロー先輩はどうなんですか?」と笑顔で聞かれいやぁ俺はぁなんて言葉を濁すが鳳の隣にいた宍戸が「こいつは馬鹿」と容赦なく一刀両断した。そこまでバッサリ言わなくてもよくない?
「というよりは、馬鹿と天才の紙一重だけど」
「どういう事ですか?」
「普段はろくに勉強しないしテスト勉強だってろくにしねぇけど、いざきちんとやらせると高得点を出したりする」
「やる気次第って事ですね!」
「そのやる気を出すのに一苦労なんだよ」
「今回は頑張ったよー、俺。多分だけど」
「どうだか。岳人は好きな科目はバリバリやるけど嫌いな科目はとことんやらないから点数のムラがやばいよな」
「忍足はオールマイティだねぇ、一位は取れないけど」
「おいなんの話だあ!」
あはは、と和やかに笑っているとマイクを忍足に交代した岳人が会話に参加し、ますます学生らしい言葉が飛び交っていった。忍足の歌ういつの時代の歌だよ、と突っ込みたくなるほどの渋いラブソングをBGMに鳳が楽しそうに「じゃあ三年生学年一位は今回も不動ですね!」なんて言い出して、宍戸も「悔しいがそうだな」とかなんとか言って苦笑いを返したりする。そして岳人が「あーくそくそまたデカい顔されるのかぁ!」と心底嫌そうに喚いたところで、みんながみんな同じタイミングできょとん、と間の抜けた表情を浮かべ固まった。
「あれ?」と言ったのは誰だったか。「学年一位って毎回同じやつだっけ?」と疑問を口にしたのは顎に手を添え宙を仰いだ宍戸だ。「なんか知ってるやつのような気がしたんだけど」と怪訝そうに腕を組み地面を見るのは岳人である。鳳からも笑顔は消え賑やかな筈のカラオケボックスは忍足のねちっこい歌声を除くと驚くほど静かだった。まただ、朝から感じるこの違和感は一体なんなのだろう、なにか欠けているような、なにか矛盾しているようなそんな違和感の正体がわからない。
誰もが沈黙し微妙な空気が流れた。なんとなく気まずい雰囲気になったのを察した鳳がパンッと手を叩いて「まぁとりあえず今は歌いましょうよ!」と元気よく軌道修正をしてくれる。それにならい宍戸や岳人も「そうだよな!」と同調し端末や本を操作して曲を物色し始めた。一様にから笑いをして誤魔化そうと必死のようにも見える。洋楽をよく聞く宍戸はそのわりには歌えないので岳人に歌えとせっついていた。
「ほら、宍戸さんあれ歌いませんか!盛り上がりますし」
「あ、ああ……そうだな!そういや前もすげぇ盛り上がったよな、レギュラー全員で来た時」
「あーあの時な!日吉も無理やり連れて来てさ。でもなにが面白かったってあいつが一番はしゃいでマイク手放さなくなった事だよな」
「はは、そうそう。行く前は一番ぶつくさ言ってたくせにいざ始まると引くほど楽しんでたよな…………って……あ」
しかしまたもすぐに訪れた違和感に再度沈黙が訪れる。なにかを考えるたび、なにかを思い出すたび湧き上がる違和感。そしてなにかのおもかげ。
ラブソングを歌いきった忍足がマイクを片手に「どしたん?」と尋ねてきたタイミングで、神妙かつ真剣な顔つきの宍戸がようやくその重たい口を開き、誰もが抱く違和感の正体の核心をとうとう突いたのだった。

「なあ、誰か、足りないよな?」


***
見切り発車を増やすだけ増やすシリーズ
「跡部景吾の消失」
誰か続き書いてくれ…



跡ジロ

「あ、跡部ー!セックスってどうやんのー?」
「ぶはあ!」
「うわ、きたねぇ!」
「ゲホッ、テメェが出会い頭に変な事言うからだろうが……」
「だって気になったからさぁ」
「俺様がいながらそんな予定があんのかテメェは」
「痛い痛い痛い、やだなぁ、跡部とやるんじゃあん」
「アーン?」
「男同士のやり方知んないし俺。つーか男同士でもやるんだって事さっき知った!考えた事もなかったっつーか」
「……誰に教わったんだ」
「忍足」
「そうか……」
「?」
「おい、代わりの飲みもん買ってこい」
「えー?俺があ?」
「お前のせいで盛大にこぼしたんだろうが」
「痛い痛い痛い、わかったよー、もおー」
「あと忍足はどこだ」
「え?教室にいたけど?」
「そうか」
「?」
「ミロとか買ってきたら走らせるからな」
「えー?美味いのに。つーかセックスはー?」
「でけぇ声で言うな!また今度な」
「えー」
「…………」


* * *
お互い男同士のセックスとか考えた事もなかったプラトニック跡ジロが読みたい
ふしだらな事は忍足先生に学ぼう!



鳳長太郎

うちで飼っている猫は宍戸さんに似ていてすごく照れ屋だ。ぶっきらぼうに甘えてくる仕草が可愛らしくてキラキラの毛ヅヤやその尻尾なんかは髪を切ってしまう前の宍戸さんを彷彿とさせる。男前な性格はそれはもう瓜二つであって、初めてスズメを獲ってきた時は情けないながらも倒れそうになってしまった。そんな貧血ギリギリの俺の前に、食べずにぺいっとスズメを置き去りにした愛猫はもしかしたら俺のために獲ってきてくれたのかも知れない。だからちょっと、わからないけれど俺はその時ありがとうと愛すべき家族にお礼を言ってしまったんだ。



跡ジロ

ジローと跡部が喧嘩をしている。
5日前くらいからろくに口も聞いてなければお互いにムスッとしている。ジローはサボり癖が酷くなり、跡部は部員に当たり散らしている。
お互い仲直りをしたいくせに、お互いに全く譲らない。
これって実は、とても珍しい事だったりする。

跡部とジローは普段、全くと言っていいほど喧嘩にならない。跡部が一方的に叱りつけている事はあれどそれは喧嘩とは言えないし、ジローが一方的に不機嫌になっている事はあれど跡部の無駄に落ち着いた対応で丸く収まっている。そんな二人が言い争いをするならまだしもこうもお互い譲らず長く喧嘩しているだなんて事は本当に稀だった。
そんな二人を傍目に見ながら俺はフルーツ牛乳をズルズルと飲んでいる。あーまだやってんだなぁなんてまるで他人事だ。(他人事なんだけど。)
俺はジローと跡部の事に限らず、宍戸や鳳が喧嘩しても、跡部と侑士が喧嘩しても、誰と誰が喧嘩しようが全く干渉する事なく我関せずで過ごしてきた。そいつらの問題にわざわざ俺が足突っ込んで引っ掻き回すのも変だし、仲直りを仲介するような義理はないと思っている。なにより面倒だ。
そんな俺だから、今日もジローと死ぬほどくだらない犬のクソほどにもならない会話を繰り返すのである。「あそこに出来た新しいローソン広くない?」「わかるマジ広いよな、広いローソン。……ヒローソン」といった今後の人生でなんの役にも立ちやしねぇ会話だ。自分の尻尾追いかけ回してる犬の方が何倍も有意義な時間を過ごしているであろう自信がある。
ただ、いつまでもさすがに3日、5日と長続きしている喧嘩は見ていてあまり面白くはない。


***
広いローソンに対して姉が放ったヒローソンっていう今世紀最大にクソつまんないギャグのくだらなさを拡散したかっただけの見切り発車




<< HOME >>



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -