こばなし ::黒尾 「ハンバーグ食いてえ」 そう言った俺に、彼女は若干嫌そうな顔をして「わかった」と返事をした。 夕方、彼女からのメールは「買い物して帰るから」というもので。材料なんかを買ってくるのだろうかと期待した俺は、彼女の帰りを今か今かと待っていた。 そうして帰ってきた彼女の手には、 「はい、ハンバーグ弁当」 「……は?」 「? ハンバーグ食べたいって言ってたじゃん」 「いっ…た、けど」 これ、と手渡されたのはお弁当屋さんの袋で。中にはハンバーグ弁当がみえていた。 「ちょ、俺はお前が作ったハンバーグが食べたいって意味でだな!」 「ハンバーグは作れません、ごめんね!」 「え、ええー……」 「面倒じゃん」 「チキンのトマトソース煮とか作ってるだろ!」 「あれトマトソース既製品だし」 「…ハンバーグだって弁当じゃなくて、焼くだけは家でとかさ…ソースはケチャップでいいからさ…そういうさ、既製品でも別のものがあるだろ…?」 「面倒じゃん?」 ―――――――― ハンバーグが無性に食べたくてお弁当買ったら思いついたネタ。相手は誰でもよかった。 back |