こばなし


::五色


*主ちゃん名前:三浦あかね
*五色くんと同中、白鳥沢在学。五色→→←←←←三浦の図。付き合ってる。





工くん、そう呼ばれた声に振り向けば、思った通りの人物がそこにいて。

「どうした」
「ううん、特に用事はないんだけど」

これから部活に向かうのに、一分でも早くと思っていたのに。彼女がHR後に声を掛けてくるのなんて珍しくて答えてしまった。
なにか変な様子などはない。けれど何処か気になってしまう。

「…行っていいか?」
「あ、うん。早くいきたいよね。引き留めちゃってごめん」
「美浦も習い事あるんだろ。早く帰れよ」
「う、うん」

そうして部室へ向かうために彼女に背を向けて歩き出す。じっくり話を聞いてやれる時間はない。もし聞くとするならば部活が終わって帰ってから。そう、帰ったら連絡を取ろう。そうして部活の時間は余計なことを考えない様にしよう。
そう思ったはずなのに。


「工くん!」
「!」
「いってらっしゃい、部活頑張ってね!」

母さんとはちがう「いってらっしゃい」に、何故かくすぐったくなった。口が緩むのがおさまらない。いつもよりなんだか、調子よく部活が出来る気がする。
朝、家を出るときにいつも聞いている言葉なのに、彼女に言われると違う言葉に聞こえる。不思議だ。もしかして「いってらっしゃい」とは魔法のことばなんじゃないか?いや、彼女が言うと魔法がかかるのか?兎も角、これからは彼女に毎日いってもらおう。そうすれば俺はすぐにエースに呼ばれるにふさわしい男になれるはずだ。



――――――――
五色くんにいってらっしゃいって言いたかっただけなんです。
 

2015.11.22 (Sun) 20:43
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