こばなし ::五色 *主ちゃん名前:三浦あかね *五色くんと同中、白鳥沢在学。五色→→←←←←三浦の図。付き合ってる。 工くん、そう呼ばれた声に振り向けば、思った通りの人物がそこにいて。 「どうした」 「ううん、特に用事はないんだけど」 これから部活に向かうのに、一分でも早くと思っていたのに。彼女がHR後に声を掛けてくるのなんて珍しくて答えてしまった。 なにか変な様子などはない。けれど何処か気になってしまう。 「…行っていいか?」 「あ、うん。早くいきたいよね。引き留めちゃってごめん」 「美浦も習い事あるんだろ。早く帰れよ」 「う、うん」 そうして部室へ向かうために彼女に背を向けて歩き出す。じっくり話を聞いてやれる時間はない。もし聞くとするならば部活が終わって帰ってから。そう、帰ったら連絡を取ろう。そうして部活の時間は余計なことを考えない様にしよう。 そう思ったはずなのに。 「工くん!」 「!」 「いってらっしゃい、部活頑張ってね!」 母さんとはちがう「いってらっしゃい」に、何故かくすぐったくなった。口が緩むのがおさまらない。いつもよりなんだか、調子よく部活が出来る気がする。 朝、家を出るときにいつも聞いている言葉なのに、彼女に言われると違う言葉に聞こえる。不思議だ。もしかして「いってらっしゃい」とは魔法のことばなんじゃないか?いや、彼女が言うと魔法がかかるのか?兎も角、これからは彼女に毎日いってもらおう。そうすれば俺はすぐにエースに呼ばれるにふさわしい男になれるはずだ。 ―――――――― 五色くんにいってらっしゃいって言いたかっただけなんです。 back |