安らぎのカモミール
この前電話してきた女性が店に現れた。こちらに軽く会釈してテーブルについた彼女は、そわそわと店内を見渡す。あいにく、彼女が本日最初のお客だった。
几帳面な人、という印象は間違っていなかったようだ。時計の針が示すは14時50分。カップに紅茶を注ぎ、テーブルへ運ぶ。
「カモミールティーです」
女性が目を丸くし、こちらを見上げてくる。
「あの、でも、私……」
「カモミール、苦手ですか?」
否との答えに微笑んで続ける。
「私からのサービスです。どうぞ、ごゆっくり」
納得したのか、笑みを浮かべて礼を言う彼女を好ましく思いながらカウンターに戻り、ドアに目を向ける。
次の客はどの様な人だろうか。
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