6つの花のお話[3]

  優しく鳴るカンパニュラ


 きょろきょろと辺りを見回しながら、ポシェットのチャックを開ける。取り出したのはプリントアウトした地図。そろそろ目的地であるカフェに近いと思うのだが。
「桜並木があって、ここを――」
 ぶつぶつとつぶやきながら地図の上で指を滑らす。と、誰かに肩をつつかれる。顔をあげると、青年が何かを差し出してきた。
「落としましたよ」
 見覚えのあるカンパニュラのしおりに思わず声をあげる。地図を取る時に、一緒に出てしまったのだろうか。
「ありがとうございます!」
「あ、いえ……」
 はにかむ様子がかわいく見えて、年上と思われる彼を、くすり、笑ってしまった。

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