花開くアマリリス
カラン。ドアを開けると鐘が鳴った。先程一緒になった少女を通し、カフェに入る。
店内に人影が2つ。店員の男性と紅茶を飲む女性。テーブルに歩み寄ると女性が目線をあげた。この人、バスで妊婦に席を譲った人だ。
「こんにちは」
やわらかな微笑みに、ぎこちなく笑みを返して座る。空席は一つ、まだ来てないようだ。
「いちごのシフォンケーキでございます。お好みで生クリームをのせてお召し上がりください」
運ばれてきた皿とカップは4つ。
「もう一人はまだ――」
女性の言葉を笑顔で遮った男性は、お盆を隣のテーブルに置き席に着いた。「もう一人は僕、カミツレです」
テーブルに飾られた花が揺れた。
【end】
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