真っ暗だった世界に光が差し込む。
眩しくって目を開けてみれば、その瞬間目に飛び込んでくる真っ青な大空。
どうして……。
『うっ……』
?『あ、よかった。起きたんだね』
『…………た』
?『えっ?』
『死ねなかった』
やっと……終わったと思ったのに。
終わってなんかいなかった。
?『……氷の波動が流れているから、ある程度の傷はすぐに塞がった(凍った)よ』
『どうして……。こんなモノ、欲しくなかった』
父さんたちには言ってなかったけど、あの日から怖くなって何度も捨てに行ったんだ。
だけどその度に、いつの間にか僕の許へ戻ってきていた。
捨てたいのに捨てられない。
そして、死ねない。僕は生きていてはダメなのに……。
黙って見ていた赤ちゃんが不意にこう提案する。
?『お墓、作らなくていいのかい?』
『…………作る』
酷いことを沢山言われた。
だけど、どうしても父さんと母さんを嫌いになんかなれなかった。
やっぱり、何があろうと僕の父さんと母さんは二人だかだったから。
赤ちゃんにも手伝ってもらいながら、重たい体を引きずってお墓をつくった。
『手伝ってくれてありがとう。……えっと』
バ(マ)『あぁそう言えば名前を言ってなかったね。僕はバイパー。君と同じアルコバレーノだ。……君は?』
『僕は…………フィオレ。フィオレ・グレイシア』
バ『フィオレか。……良い名前だね』
『……うん。大切な名前だ』
赤ちゃん……バイパーによると、アルコバレーノは僕を含めて全部で8人いるらしい。
長い間欠員だった氷のアルコバレーノの報告のついでに、僕も彼らに会いに行くことになった。
だからもう、ここには戻って来ない。
完成したお墓に祈りを捧げる。
そして、誰にも荒らされないよう、誰にも邪魔されないよう、すべてを氷の中に閉ざした。
『どうか、安らかなる眠りを……』
涙は出なかった。
泣いたら、何かが狂ってしまいそうで……。
だから僕は、僕自身も凍らせた。
27輪 : 大切なモノ
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