咲きほこる氷の華

27輪


真っ暗だった世界に光が差し込む。
眩しくって目を開けてみれば、その瞬間目に飛び込んでくる真っ青な大空。

どうして……。


『うっ……』

?『あ、よかった。起きたんだね』

『…………た』

?『えっ?』

『死ねなかった』


やっと……終わったと思ったのに。
終わってなんかいなかった。


?『……氷の波動が流れているから、ある程度の傷はすぐに塞がった(凍った)よ』

『どうして……。こんなモノ、欲しくなかった』


父さんたちには言ってなかったけど、あの日から怖くなって何度も捨てに行ったんだ。
だけどその度に、いつの間にか僕の許へ戻ってきていた。

捨てたいのに捨てられない。
そして、死ねない。僕は生きていてはダメなのに……。


黙って見ていた赤ちゃんが不意にこう提案する。


?『お墓、作らなくていいのかい?』

『…………作る』


酷いことを沢山言われた。
だけど、どうしても父さんと母さんを嫌いになんかなれなかった。
やっぱり、何があろうと僕の父さんと母さんは二人だかだったから。

赤ちゃんにも手伝ってもらいながら、重たい体を引きずってお墓をつくった。


『手伝ってくれてありがとう。……えっと』

バ(マ)『あぁそう言えば名前を言ってなかったね。僕はバイパー。君と同じアルコバレーノだ。……君は?』

『僕は…………フィオレ。フィオレ・グレイシア』

バ『フィオレか。……良い名前だね』

『……うん。大切な名前だ』


赤ちゃん……バイパーによると、アルコバレーノは僕を含めて全部で8人いるらしい。
長い間欠員だった氷のアルコバレーノの報告のついでに、僕も彼らに会いに行くことになった。

だからもう、ここには戻って来ない。
完成したお墓に祈りを捧げる。

そして、誰にも荒らされないよう、誰にも邪魔されないよう、すべてを氷の中に閉ざした。


『どうか、安らかなる眠りを……』


涙は出なかった。

泣いたら、何かが狂ってしまいそうで……。
だから僕は、僕自身も凍らせた。


27輪 : 大切なモノ
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