『これがすべての真実だ。だから僕は16歳でもあり、26歳でもある。あの時から僕の時は一向に進んでいないのだから』
シーンッ
ス「そんな、ことが……」
『慰めなら結構だ。生まれてきた僕が悪いんだ』
柄にもなく声が震える。
僕が生まれてきたせいで、拾われたせいで……。
多くの人に迷惑をかけてしまった……。
ベ「違うっ!フィオレは悪くない!!!」
『…………ベル?』
ベ「どうしてそんな泣きそうな顔して言うんだよ……」
『別に僕は泣きそうになんか「なってるだろ」なってない!!!』
「「「!!!!」」」
ここへ来てからの僕はおかしい。
感情何てものとっくの昔に捨てた筈なのに……。
『僕が生まれてきたせいでどれだけの人が傷ついたか知らないくせに勝手なこと言うなっ!!!』
口が勝手に動いてしまうんだ。
『僕が《ギュッ》離せ!!』
ベ「確かにわからない。けど俺はフィオレがここにいて、生きていてくれて、嬉しいんだぜ?だから……生まれてこない方がいいなんて言わないでくれよ」
『…………の?本当に僕が生きていていいの?』
ベ「あぁ。生きてちゃいけない奴なんてどこにもいないんだからな」
((お前がそれを言うのか!?))←
ポタッ ポタッ
固く閉ざしていた氷が溶けていくのが分かる。
まだ、会ったばかりなのにどうしてベルは僕が本当に望んでいる言葉を言い当てるのだろう。
『ほん……とは…っ…………すごく……怖かった……!僕が………生きていることで……また、誰かを……不幸に、するんじゃ……ないか…………って…!』
ベ「誰も不幸になんねーよ。むしろ、もっと幸せになってやるぜ♪だってオレ、王子だもん♪だからフィオレ…………我慢しなくていいんだぜ?」
『うっ…………うわぁぁ〜〜〜〜んっ……ヒック…ヒック……』
父さんと母さんが死んだ時から出ていなかっ10年分の涙があふれ出す。
僕が泣いている間、ベルはずっと抱きしめていてくれた。
みんなも何も言わず、ただ寄り添うだけ。
10年間、ずっと一人だった僕にとって、人のぬくもりはとても……温かかった。
28輪 : 10年分の涙
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