咲きほこる氷の華

26輪


『終わっ…………た…?』


気がついたら、辺り一面は真っ赤に染まった氷原に包まれていた。
その中心にいる僕自身も傷だらけで……。

氷原は僕に近くなればなるほど、鋭く、冷たく、華のように咲き誇る。


これが、僕がおしゃぶりに認められ、初めて力を使ったときだった。


そのまま、一人その場で佇んでいるとおしゃぶりが光始める。
まるで、何かと呼応するかのように……。


  ザッ


?『これは……!君がやったのかい?』

『赤……ちゃん?』

?『ム。それは……!君、そのおしゃぶり…………どこで手に入れたんだい?』


その言葉で、おしゃぶりを見つけた日の夜のことがフラッシュバックした。


  * * *


あの日、寝付けなくて1階に降りてくると、リビングに明かりがついていた。

そこでは、父さんと母さんが深刻そうな話をしていることがわかった。

聞くつもりはなかった。
と言えば嘘になるけど、僕は偶然聞いてしまったんだ。


このおしゃぶりのことを……。


父『何故、あのおしゃぶりがフィオレの手にあるんだ!海へ捨ててきた筈なのに……!』

母『ちょっとあなた!あのおしゃぶりのこと知ってるの!?』

父『詳しくは俺も知らない。だが、あのおしゃぶりはフィオレが赤ん坊の時に握りしめていたものだ』

母『なら、何で捨てるのよ!』

父『おしゃぶりが銀色に光っていたんだ!光るおしゃぶりなんて聞いたことないっ!だから!!!』


銀色に、光る……?
赤ちゃんの時に私が持っていた?

そのことばかりが頭を占めていて、父さんと母さんの言い争う声もどこか遠くの出来事のように思えた。


  * * *


そのことを思いだした僕はこう答えた。


『1回目は赤ちゃんの時に。2回目は森の中で』

?『じゃぁ君は……氷のアルコバレーノに選ばれたんだね』

『氷の……アルコバレーノ…………。だからこんな風に……。でも、もう関係ないや。私はすべてを━━━━━終わらせるんだ((グサッ』

?『━━━ッ!!!!』


持っていた剣で自分を貫いた。

あの赤ちゃんが何かを言っているけど、もう何も聞こえない。聞きたくない。


目の前が真っ暗になる。


あぁ、これですべてが









オワッタンダ。


26輪 : フラッシュバック
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