結局ここに集まる奴ら [ 52/87 ]


「うぇい。酒持ってきたぞ。」

「お、こりゃどうも。」

「航矢田くん久しぶりー。」

「つってもたったの一ヵ月ぶりだろ。」


特に理由はなくても集まる、高校の頃からの友人たち、なっちくん、クソカベ、モリゾー。

高校の頃からのノリがいつまでも抜けないこいつらは、大人になった今でも変わらないノリで、酒を片手に俺とるいの家に押しかけてくる。


「矢田くんさらにイケメンになった?」

「お前会うたびにいちいちそれ言わなくていいから。」

「てか聞いてくれよ矢田くん!俺有給使いきったら仕事やめるかも!上司がクソすぎてもうやってらんねえ!」


さっそくるいに仕事の愚痴を言い始めたのはクソカベで、るいはグラスに酒を注ぎながら「おーおー。お前が上司をクソ扱いする日が来るとはな。」なんて冷静にコメントをしている。


「てかその上司不倫してやがること俺知ってるから、腹いせにチクってやろうか考えてる。」

「お、それならうまくやれよ。上司やめさせりゃお前やめる必要ねえじゃん。」

「おぉぉ…!矢田くんナイスアイディア!」

「いや普通だろ。お前がバカなだけ。」


クソカベの仕事の愚痴を聞くことに慣れているるいは、ゴクゴク、調子良く酒を飲みながら、今日もテキトーにクソカベの相手をしていた。


「航と矢田くんは相変わらず仲良くヤってる?」

「はいはい、仲良くヤってるよ。モリゾー毎回それ聞くのやめてもらえる?」

「お前らが仲良くヤってるなら俺は幸せだ。」

「モリゾーキモぉ〜。こいつ前自分のことエロの神様とか言ってたからね?」


チータラをパクパク食べながら口を挟んだのはなっちくんで、チューハイ片手にもう顔が赤くなっている。


「なっちくん顔赤くなんの早すぎだろ。アルコール分3%のチューハイなのにザコくね?」

「航、エロの神様についてのツッコミをなにか入れてくれないか。」

「え?相変わらずのキモさだなーお前は。はい以上。」


エロの神様についてのツッコミを求めるモリゾーを罵りながら、俺は缶ビールをグビグビ飲んだ。


「航はビール好きだよなぁ〜。俺ビール無理ぃ。」

「えーじゃあなっちくん飲み会の乾杯ん時どうすんだよ。」

「飲んだフリぃ〜。」

「女子みたいだな。」


すでにほろ酔いのなっちくんが、俺の肩に腕を回してやたら引っ付いてきたから、その瞬間るいが俺となっちくんの間に割って入った。


「なちくん酔うと誰彼構わず引っ付くのやめなね。」

「え〜?矢田くんなぁに〜?」

「こら!おい!だから引っ付くなっつってんだよ!おら!」


比較的クソカベやモリゾーよりはなっちくんに優しいるいだが、なっちくんが酔った時だけは別で、るいの腰に抱きついてきたなっちくんをるいは強引に引き離し、クッションで頭を殴りつけた。


「ぐへぇ。」


顔面を床に突っ伏して、なっちくんは早くもダウンだ。

グースカ眠り始めたなっちくんを見て、スマホを持ったるいが誰かに電話をかける。


「あ、もしもし雄飛?今俺ん家で飲んでんだけどなちくん潰れたから連れて帰って。」


るいが電話をかけたのは毎度お馴染み、なっちくんのお迎え役の雄飛で、一言二言会話をしてからるいは電話を切った。


「雄飛残業中だって。一時間後くらいに来るってさ。」

「うわーおつー。」

「なんか飯食わせてくださいって言われたからテキトーに焼き飯でも作ってくるわ。」

「おー作ってやれ作ってやれ。」


そう言ってその場からるいが離れた瞬間、クソカベとモリゾーが俺の両隣へやって来て、ニヤニヤしながら二人から肩を組まれた。


「で?矢田くんこの前朝帰りしたらしいじゃん?」

「未遂?それともヤっちゃった?」


まるでこれを聞きたかった!というように、二人はヒソヒソ声で俺に問いかける。

その話は、なっちくんにチラッと話したことだったが、どうやらなっちくんから話が漏れたらしい。このおしゃべり野郎め。

俺はグースカ寝ているなっちくんのケツをゲシッと蹴ってやった。


「んぅ…。」


ゴロンと寝返りを打ったなっちくんの着ているシャツが捲れ上がり、腹が出る。


「いや〜ん、なっちくんの腹チラ〜。」

「や〜んセクシ〜。」

「乳首までまくってやろ〜。」


完全になっちくんに気を取られたクソカベとモリゾーは、俺の肩から手を離し、なっちくんのシャツに手をかけた。


「…うわ。」


そこで、なっちくんの乳首を見たクソカベが固まった。


「…噛み跡あるんだけど。」

「…見なかったことにしてやろう。」


そう言って、優しげに微笑み、シャツを戻してやるモリゾーは、ズボンの中にシャツをインまでしてやった後、なっちくんに向かって何故か拝み始めた。


「…なに拝んでんだよ。」

「いや、尊いなと思って。」

「意味がわからん。」


相変わらずド変態なモリゾーにはついていけん。


「あー良い匂いするー。矢田くん俺も食べたーい。」


その後、台所から漂う香りに、スンスンと匂いを嗅ぐクソカベが、立ち上がってるいの元へと向かっていった。


人ん家にも関わらず、こいつらが自由すぎるのはいつものことで、皆バラバラなことをしていた時、インターホンの音が部屋の中に鳴り響く。


「あ、雄飛来た。」


玄関へ鍵を開けに行き、扉を開けるとそこには、今では立派にサラリーマンをやっている、黒髪、スーツ姿の雄飛の姿が。

かつてヤンキーヤンキーと言われまくった雄飛は、社会人になってからはもうヤンキーとは言われなくなったものの、『絶対あいつ元ヤンだ。』とは言われるらしい。…まあ、それは仕方ねえと思う。


「雄飛おつかれー。」

「うーす。奈知は?」

「グースカ寝てる。」

「ったく、酒飲むなっつってんのに。」


ブツブツ文句を言いながら家の中に上がる雄飛は、眠っているなっちくんの姿を目にした瞬間、ペシペシとなっちくんの腹を叩いた。


「ん〜ぅ…。」

「宇野くんお世話大変そうだな。」

「この子この前居酒屋でやらかしたんすよ。だからあんまり外で酒飲むなって口うるさく言ったんすけどね。」

「メンバーが俺らだから良いと思ったんじゃね?」

「多分そうっす。」


雄飛はモリゾーの言葉に頷いたあと、今度はピン!となっちくんのシャツの上から乳首あたりの位置に向かってデコピンした。


「……あ、もしかしてアレおしおき?」

「ん?なにがすか?」

「…なっちくんの乳首あたりにあった噛み跡…」


俺は自分がるいにおしおきしたことがあるから、なんとなくそうかと思って雄飛に問いかけてしまった。

すると、雄飛は「え、んなとこ見たんすか?」と言ってなっちくんが着ているシャツを捲り上げた。


「痛い思いしないと反省しないかと思ってね、噛んでやりましたよ。」


そう言いながら、なっちくんの乳首を摘んで引っ張った雄飛に、モリゾーはニヤニヤしながらまた拝んでいる。

お前はキモイからもうさっさと帰れ。


「あ、雄飛ー焼き飯できてるぞ。」

「お!矢田先輩サンキューっす!」

「うわ、俺も食べたくなってきた。」

「俺も。」


その後、良い匂いにつられるようにるいが作る焼き飯の元へと向かっていった俺たちは、なっちくんを一人残してみんなで焼き飯を食べたのだった。


「ん…?良い匂い。

……焼き飯?俺も食べたい!」

「残念、もうご飯なくなった。」


結局ここに集まる奴ら おわり

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