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「ほな航、また今晩試合終わったら連絡するわー。」

「すんな!!!」

「じゃあいとこくんまたなー。」


ヒラヒラ、と手を振りながら、クズ男2人は昼休みになりようやく俺の前から立ち去った。


「どこで飯食う?」という会話をしながら立ち去ったから、どこかで昼飯食ってそのまま講義には出ないのだろう。悪い奴らだ。


「ああもう!!!うぜえ!!!」

「うわーさすが航のいとこ、航よりやんちゃそー。」

「おいどういう意味だ!!!」

「てかなんか二人とも近寄れないオーラ出てたんだけど。」

「あ、わかる!ちょっと怖かった!」

「いや、でもあたしは航のいとこさんの顔結構タイプだ。」

「あかり男ならなんでもありかよ。」

「いやイケメンならなんでもありよ。」


ああそうですか。あかりちゃん変な男に引っかかりそうで俺ちょっと心配だ。


その後は、いつもどおり飯食って講義に出て、夕方になる。

昼間に大和が立ち去り際に言っていたことさえスルーしてしまえば、いつも通りの午後。

プロ野球の試合が始まるのは18時からだから、まあだいたい終わるのは21時前後くらいだろう。


……よし、今日は早く寝ちゃったことにしておくか。んで、連絡あっても気付けなかったことにして…、

って、どうにかして大和から逃れようと考えていた。





「わたるくーん、ただいまー。」

「おー!るいおかえり!」


食器を洗っていたから水の音でるいが帰ってきていたことに気付かなくて、背後から声をかけられてるいが帰ってきたことに気付く。そして、食器を洗う俺の顔をるいが覗き込んできた。

そのままチュッ、とキスされて、ふへへと笑ってしまった。隙あらばチューするんだからも〜るいきゅんったら俺照れる。ふへへ。


「航もうお腹減ってる?俺さー、課題でレポート出されてさぁ、ちょっとやってもいい?」


帰ってすぐに鞄の中から資料を取り出したるいが、ノートパソコンを用意しながら俺に問いかけた。

夕飯を作ってしまおうか、どうしようか、と気を遣ってくれたのだろう。でもるいからはさっさとレポートをやってしまいたいっていうオーラが出ている。


「どうぞどうぞ、やってください。」って返事をすると、るいはラフな格好に着替えてから、カチャッと眼鏡をかけて、パソコンの前に座った。


わー、頭良さそー…。

あ、良さそうじゃなくて良いんだった。


パソコンはるいパパからのおさがりのノートパソコンらしい。そして眼鏡はブルーライトカット眼鏡。準備万端なるいが、キーボードを凄まじい速さでカタカタと叩き始めた。


わー、頭良さそー…。

あ、良さそうじゃなくて良いんだった。


集中しているるいを邪魔してはいけないし、俺は静かに冷蔵庫の中を覗く。


俺にも作れる夕飯ねえかなー、って。

あ、カレー作れるように材料買ってあるぞ。

さすがは俺のるいきゅん。

ちょっと俺も自分でカレー作ってみようかなー、

って、

そんな事を考えていた時には、

もうすっかり忘れていた。


大和が試合後、俺に連絡すると言っていたことを。



「おっ、航がカレー作ってる。」

「ジャガイモ大きく切りすぎた。」

「大丈夫大丈夫。」


うんと伸びをして、ノートパソコンを閉じたるいは、俺が作っている途中の鍋を嬉しそうに覗き込んできた。

お皿とスプーンを用意して、「航くん手作りカーッレエー」って鼻歌を歌っている。おちゃめか。


「レポート終わった?」

「まだだけどひとまずご飯。」

「もうちょっと待ってね。」


るいが作ってるところを何度も見ていたから、わりと難なく作ることができた。味はさておき。

カレーが出来上がり、火を止めて、白ご飯をお皿によそう。それからカレーをお皿に流し入れると、ゴロゴロとでっかいジャガイモがお皿の中に転がり込んだ。


「いいじゃんいいじゃん。航上出来。」

「ゆでたまご用意するの忘れた。」

「あらま。」


まあいいや、いただきまーす。って、るいと一緒に俺が作ったカレーを食べる。

るいは美味しい美味しいと無駄に褒めながら、カレーを綺麗に食べてくれた。


「ごちそうさま。航ありがと、腹ふくれた。」

「よろしゅうおあがり。」


慣れない料理もやらなきゃ上手くはなんねえからな。また作ろう。るいはなんでも喜んで食ってくれるから。


「お風呂入ろ?」

「うんいいよ。」


カレーを食った後のるいは上機嫌だ。

べたべたと身体を寄せてくっついてくる。

こういう時はだいたいえっちに誘ってくる日で、風呂に入る準備している時も、風呂に向かう時も、べたべたとくっついてくる。


分かりやすすぎるるいと共に風呂に入って、数十分。


身体を洗って湯船に浸かって出てきてから、身体を拭いた後さっそくるいが俺を抱きしめてチュッチュと首筋に唇を寄せてきた。


「航くんこのままベッド行こ?」

「そうくると思った。」


って、服は着ないままベッドに向かう。

またチュッチュと唇を寄せてくるるいのされるがままでいた時だ。



『ピーンポーン…』



…ちょっとこれはタイミング最悪すぎる。

二人揃ってインターホンの音にハッとした直後、



『ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン』


インターホンが連打される音がした。


「は!?誰だよ!!」

「……あっ!!!」


やべぇ、完全に忘れてた。


多分、大和が来たんだ…………。


「……大和だ…。」

「はっ!?」

「わーたーるー!はよ開けろや!!」


うわっ今扉蹴ったな!?
DQNが外にいるっ。


「連絡するて言うたやろ!!!」


うわぁめっちゃ近所迷惑だ……。

俺はとりあえず、るいの腕からスススと抜け出して服を着た。るいも渋々服を着る。

るいきゅんごめん…怒んないで。


るいの顔はめちゃくちゃ不機嫌そうで、怖かった。


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