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渋々カチャ、と家の鍵を開ければ、外から扉を勢い良く開けられた。
「おまえさてはシカトする気やったな?」
そう言いながら、家の中に入ってこようとする大和と、その隣には大和の友人。
「ははは!!!いとこにシカトされるとかやっぱおまえ嫌われてるやんけ!」
ケラケラ笑っている大和の友人の手には缶ビール。やっぱりこいつらDQNだ!!!
しかし、DQN2人が部屋に上がり込もうとしている時、2人の前にどどんと仁王立ちしている不機嫌そうなるいが立ちはだかった。
「大和さんお久しぶりっす。こんばんは。」
丁寧に挨拶してるけど、仁王立ち。愛想良さげに笑み浮かべてるけど、目元ピクピク痙攣してる……
「うわ!誰!?めっちゃイケメンや!!」
「いや誰って、それこっちの台詞ですよ。つーか酒飲みながら家ん中入ろうとしないでもらえません?てか何歳だよ。まさかの未成年ならぶっ飛ばすぞ。」
るいは大和の友人に声をかけられた瞬間思いきり眉を顰めて、大和の友人が持つ缶ビールを奪い取ろうと手を伸ばした。
「ぅわっ!ハタチハタチハタチ!俺ハタチやで!!!ちょっこのイケメンくんめっちゃこわい!!!」
ササッと缶ビールを奪われないようにるいから距離を取った大和の友人に、るいはチッと舌打ちする。
「おーおー!お前本性そっちか!こりゃ怒らせたら怖そうやなぁ!」
るいの大和の友人への態度を見て、大和はハッハと笑いながら靴を脱いだ。
「大和さんまた野球見に行ってたんですか?」
「そうそう、で試合終わったら連絡するーて航に言うてたのにこいつシカトしよるし。ゆりおばちゃんに家の住所教えてもらったわ〜。」
と、るいと話していると思いきや、ニッと笑って俺の頭を鷲掴む大和。
「痛い痛い痛い!!ああもう!!クソッ!!」
「お、なんかええ匂いするな。カレーか?」
「おっじゃましまーす!」
「お前もかよっ!」
結局、大和に続いて大和の友人まで家の中に入ってしまい、俺とるいは玄関で無言で目を合わせ、それからるいは、ペシと俺の頭を軽く叩いた。
「良いところだったのに。」
むっとしながら、るいは大和たちに続いて部屋に入った。
いや確かに良いところだったけど。
もっと他になんか怒るところあるだろ。
「あー、ゆりおばちゃんにくれぐれもるいきゅんに迷惑かけんよぉにて言われてるし手土産持ってきたでー。」
…もう十分迷惑かけてるから。
手土産でなんとかなると思うな、クソ大和。
「ッくは〜!」と酒を飲むDQNは、持っていた袋の中からおつまみを取り出した。
「こいつ初対面の人の家に上がり込んでよくもまあこんなに寛げるな。」
るいは呆れたように初対面のDQNを見下ろして吐き捨てている。
「しゃあねえよ、DQNはこういう生き物だ。」
「はぁ〜?どきゅん〜?誰がどきゅんや言うてみぃ〜?ちょぉこっち来いや、ここ座れ。」
「うわ、絡み酒めんどくせ、おい大和、お前の友達酔ってるぞ。どうにかしろ。ってお前もなに勝手に人ん家ウロウロしてんだよ!」
面倒な酔っ払いから距離を取り、ふと大和の方を見れば、奴は台所でカレーが入った鍋を覗き込んでいた。
「俺腹減った、なぁこのカレー食っていい?」
なんなんだこいつら自由すぎにもほどがある!!!
俺が作った貴重なカレーに手を付けようとする大和の元に、るいがやれやれ、と言いたげに立ち向かった。
少しだけカレーを温め、お皿に白ご飯をよそっている。
温めたカレーを白ご飯の上にかけ、「はいどうぞ。」って差し出するい。人が良すぎか。
「サンキュ〜」とるいにお礼を言った直後、大和は友人が持っていたビニール袋の中に手を伸ばした。
「俺も一本くれ。」
と、その手には缶ビール。
缶ビールを持って、カレーの前に戻ってくる。
プシュ、と大和が缶ビールのプルタブを開けた瞬間、るいがすぐさま大和の手首を掴んだ。
「大和さん、一応聞きますけどまさか未成年ってことはないっすよね?」
「んあ?おお、ハタチやで。」
「いやお前確か誕生日まだだろ!!!」
るい騙されんな!こいつ未成年だ!!
俺の発言に、るいの目付きが鋭くなった。
「るい!こいつ未成年!!!」
「は?お前は黙っとけや。」
「はい、没収な。」
「あっ!ちょぉ!」
無理矢理大和の手から缶ビールを奪い取ったるいは、缶ビールを逆さにして流しにビールを流してしまった。
「うわ!もったいな!!!ええやん一缶くらい!」
文句を言ってる大和の声を聞き流して、るいは冷蔵庫を開け、お茶を取り出した。
コップにお茶を注ぎ、『ダン!!!』と大和の手元にコップを置くるいは、大和の顔を睨みつけながら吐き捨てる。
「未成年は黙って茶でも飲んでろよ。」
コップの置く音に驚いてビクッと身体を震わせた大和が、るいの大和への態度に唖然としている。
しかし、すぐにるいは取り繕うような笑みを浮かべた。
「ハタチの誕生日がくるまでの辛抱です。」
るいにそう言われた大和は、むっすりしながら何も言わずにカレーを食べ始める。
俺は、そんな大和の拗ねたガキみたいな様子が、物珍しすぎて、面白くて仕方なかった。
そして、さっきからぐびぐびとビールを飲んでいた大和の友人のDQNは、いつの間にか大人しく床にごろりと横になって眠っていた。
そんなDQNを、「てめえ、んなとこで寝てんじゃねえよ」と罵りながら、DQNの身体をゲシゲシと蹴っているるいを尻目に、大和は無言で食い終わったカレーのお皿を洗っていた。
「なんなんあいつ、めっちゃこわい。」
その大和の呟きは、ジャーと流れる水の音でかき消された。
11. クズいとことその友人 おわり
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