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「お母さん聞いて聞いて!ゴールデンウィークに航くんたちとバーベキューするー!!」

「へぇそうなの?良かったわねぇ。じゃあお兄ちゃんも?」

「そりゃーそうだろうね!お兄ちゃんからは連絡ないけど!航くんが誘ってくれたんだよー!」


母さんとりなの会話に、思わずスマホを持っていた手が止まってしまった。

『航くん』…その名前に、すぐに反応してしまうのだ。

興味ないふりしたいけど、気になってしまって仕方ない。そんな意識を他に向けたくて、スマホゲームを開ける。

でもまったくゲームをする気は無くて、一度開けたゲーム画面を閉じようとした時……スマホが震えた。


【 着信:友岡 航 】


航からの電話だ。俺は、ちょっとビクッとして、慌ててスマホを持って自分の部屋に移動する。

りなと母さんのあの会話を聞いた直後だったから、少し期待してしまっている自分がいた。





「どこでバーベキューする?てかりなちゃん誘ったのはいいけど一人で来させるの危ないよな。」

「あ、やっぱりりな誘ったんだ。」


夜、るいとバーベキューの話をしていると、るいはりなちゃんを誘ったことを知らなかったようだった。


「クソカベに迎えに行かせる?」

「どうせりとも雄飛に誘われて来るだろ。二人で来させりゃいいよ。」

「あ、そっか。りとくんも来るか。」


と、そこで登場したりとくんの名前に、俺は先日りとくんとの間に起こった不思議な出来事を思い出してしまった。


あれはやっぱり、どう考えてもキスだよな。なんでりとくんがあんな行動に出てしまったのか、俺は不思議でしょうがない。


「道具は俺ん家にあるもんはりとに持って来させて、足りないものは買ってくか。」

「りとくん持ってきてくれるかな?重たいっつって嫌がりそう。」


もしかしてりとくん、俺のこと好き?

…って考えたりして、いやでもないない。絶対ないわ。って変な考えを振り払いながら、「ちょっと電話して聞いてみるか。」ってりとくんの携帯に電話をかけると、すぐに電話に出たりとくん。

やっぱ俺のこと好きだろ。

っていやあほか。今のは冗談だ。


「あ、もしもしりとくん?」

『…航?…なに?』


りとくんの俺に対する受け答えで、ちょっとはりとくんの考えが分かるかも、って思って電話を自ら進んでかけてみた。


「雄飛からなんか連絡きた?」

『え、ううん別に何も。』


あ。なんだ連絡いってないのか。


「ゴールデンウィークにバーベキューするんだけどりとくん来る?」


まずは話はそこからだな。って問いかけている最中、るいからの視線が痛いほど突き刺さっている。あまりにジー、と見つめられているから、サッと視線を逸らせば、るいの手が俺の腰に伸びてきた。

そのまま身体を引き寄せられ、俺に抱きついてくるるいが、俺の持つスマホに耳を当ててりとくんとの会話を聞こうとしてくる。お兄ちゃんちょっと離れなさい。


『……行く。』


数秒間の沈黙後に、頷いたりとくん。

行くかどうしようかちょっと悩んだのだろうか。

やっぱ電話ではりとくんの考えはよく分かんねえな。

でも行くって言ったから今度は道具のこと言おうとすると、るいにスマホをひったくられた。

突如電話で弟に命令し始めるお兄ちゃん。


「もしもしりと?りなと仲良く二人で家にあるバーベキューの道具持ってきて。」

『……え、重くね?』

「大丈夫大丈夫。お前ならいける。」

「…お兄ちゃん鬼畜…。」

『……分かった。』


それからるいお兄ちゃんは一言二言りとくんと会話をし、すぐに通話を切った。


「りとくんなんだって?」

「持ってくるって。」


るいお兄ちゃんは目を丸くして、バーベキューの道具を持ってきてくれると頷いたらしいりとくんの返事に驚いている。お前自分から頼んでおいてなに驚いてんだ。


その後、るいお兄ちゃんは嬉しそうに「あいつが俺の言う事聞くとは…っ!」って喜んでいた。


…まあ、確かに驚くか。

絶対嫌がるって思ったよな。

りとくんやっぱり謎すぎる。


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