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「いやぁ!!ちょっとぉ!るいくんの薬指に指輪はまってた気がするぅ!!」

「あっやっぱり!?あたしもそれ思った!やだーっ!」


るいの指に指輪がはめられていただけでこの反応。いつの間に指輪の存在に気が付いたんだか…と、少し恐怖を感じながら、「お前も大変だな。」とるいを労るようにポンポンと肩を叩いた。


「…はぁ。」とため息を吐いて、スマホを手に取るるいは、写真一覧画面を開いて友岡くんの写真を眺めている。


「はぁ…癒される。この航可愛くね?」

「あーはいはい可愛い可愛い。」


ベランダで洗濯物を干している友岡くんが、カメラ目線で笑っている写真だった。それから写真をスライドさせ、ソファーに座ってテレビを見ている後ろ姿とか。完全に盗み撮りだ。こいつどんだけ写真撮ってんの。


「はぁ。癒される…。」

「分かった分かった。」


重々しいため息吐いてたくせに、友岡くんの写真見た途端に元気になったから、こいつの心配は無用かもしれない。


「高校ん時は楽しかったなぁ。」

「あ、それは同感。」


何気なく口にしたようなるいの呟きに同意する。今となっては食堂でみんなでワイワイご飯食べてたのとか、些細なことが楽しかったなぁ、って。

大学生活が楽しくないわけではないけど、レポートとか多いしそのうちバイトも始めようかなって思うし、サークルも入っといたほうがいいかなとか考えたりして。

あれもこれもはできないけどまあ、上手いことやってかなきゃいけない。


「なんか高校ん時はすげえうざかったモリゾーとかクソカベも居なかったら居なかったでちょっと寂しいかもって。」

「それ本人たちに言ったら調子乗りそう。」

「言わねーよ。絶対調子乗るから。」


そんな話をするるいの表情は、ほんのちょっとだけ楽しそうだった。


「今度みんなで遊びに行く?気晴らしに。」

「あー…いいかも。」


何気なくるいに提案してみると、るいは笑顔で頷いた。

今度のゴールデンウィークなんてどうだろう、と話していた時、るいはスマホ画面に視線を向けながら笑っている。


「なに笑ってんの。」

「クソカベからラインきた。すっげえこいつタイミングいいな。」


そう言ってるいに見せられたライン画面には、【 ゴールデンウィーク遊びませんか。矢田くんの家で。お返事待ってます。 】とやたらと丁寧に書かれたメッセージ。


「てかこいつりなに会いたいだけだろ。なんで俺ん家なんだよ。」


るいはそんな文句を漏らしながらもちょっと楽しそうだ。


「せっかくだからどっか出掛けたいな。」

「あ!バーベキューしようよ、バーベキュー。」

「それもいいな。」


俺の提案に頷きながら、るいは友岡くんにメッセージを送っていた。

日下部くんへの返信より先に友岡くんに送っているあたり、さすが。好きだねぇ。





「あ、るいからメールきた。」

「ん?なんて?」

「ゴールデンウィークみんなで遊ぼう、だって。珍しいな、るいからそんな提案してくるとか。」

「おお、いま日下部とモリゾーともその話してるところだぞ!航が未読無視してるライングループで。」


講義中、なっちくんとコソコソ会話をしながら、スマホを机の上に置き、画面を見せ合う。

るいにオッケーの返事をしてから、なっちくんとクソカベとモリゾーの4人のグループトークを開くと、ポンポンと現在進行形でメッセージが表示されていく。


【 お、ようやく航既読したな。 】


そんなメッセージがすぐにクソカベから送られてきたから、こいつトーク画面監視してやがる。


【 俺は決めた。ゴールデンウィークにりなちゃんに告白をするのだ。 】


「クソカベりなちゃんも誘う気満々だな。」

「告白って。どうせいつもラインでしてんじゃないの?」


なっちくんとクソカベのメッセージを見ながら失笑する。


【 今お兄様に矢田家宅に訪問をお願いしました。 】


それから、クソカベのそのメッセージと同時にるいから届いたメッセージは、【 バーベキューしたい 】だった。クソカベのメッセージはシカトして、るいに【 バーベキューいいね。 】と返信。

るいからの提案は珍しいから、俺は喜んで賛成した。

るいは最近あまり元気がなかったから、気晴らしにもなっていいと思う。


「なっちくん、るいバーベキューしたいんだって。どう?雄飛も誘えよ。」

「おお!いいね!誘う誘う!」


なっちくんも大賛成で、ゴールデンウィークはバーベキューの方向で進み始める。

クソカベが言う矢田家宅訪問って、どうせりなちゃんに会いたいからってだけだろ。だから、バーベキューのことをクソカベに話して、【 りなちゃんにもお前から声かけろ 】とラインすると、クソカベからすぐに【 おう!!! 】と返ってきた。

だからお前、ライン監視しすぎだっつーの。


その後、クソカベから【 りなちゃんから返事返ってこない(´・_・`) 】というラインが何度も送られてきたが勿論スルーだ。りなちゃんにも都合というものがあることを忘れるな。


しかしあまりにもクソカベがしつこいから、昼休みに【 りなちゃんゴールデンウィークにバーベキューする予定だけど来る? 】とりなちゃんにメッセージを送れば、りなちゃんからすぐに【 りなも行っていいの!? 】って返ってきたから、クソカベ多分お前ライン送りすぎでスルーされてんじゃねえのって思った。


【 りなちゃん来れるってさ、クソカベよかったな。 】って親切で送ってやれば、クソカベから【 俺が送ったやつまだ未読だぞ!ふざけんな! 】ってキレられたからクソカベくたばれ。

お前はラインに張り付き過ぎなんだよ。


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