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るいは俺があかりに抱きつかれていたのが嫌だったのか、あかりにチラリと視線を向け、口を開いた。


「あかりちゃん?次航に抱きついたら怒る。」

「はいっ!すみませんでしたっ!」


にこにことやたらといい笑顔を向けながらあかりに声をかけたるいに、あかりはピシッと背筋を伸ばして謝った。

イケメンるいに笑みを向けられたあかりは、るいに言われた内容はともかく顔面を真っ赤に染めている。

そんな嫉妬心丸出しなるいに、会長は面白そうに「矢田は相変わらずだな。」と言ってから「じゃあ航またな。」と手を振って去って行った。

最初から気付いていたけど、最初から最後まで会長すっげー注目されてた。会長も相変わらずだな、って思った。



「…え、もしかしてあれがるいくんの彼女…?」

「…うそでしょぉ?なんか普通ー…。」

「釣り合ってないよねー…。」


るいがその場に現れてから、ふと気付く。背後からこそこそとこっちの様子を窺いながら、不満気に話している女の子たちが居ることを。

真っ赤な顔でるいを見ているあかりに、るいは笑顔で接しているから、はたから見ればなんだか少し仲よさ気に見えたのだろう。


「後ろで女の子がるいのこと見てる。…なあ仁、後ろにいる子るいの知り合い?」


コソッと俺は仁に問いかけると、仁は「知り合いっつーか、…まあ、狙われてる?っつーか…」と苦笑しながら答えた。


……狙われてる?

おいこら、それはどういうこった!と仁にもっと詳しく話を聞こうと思った時、後ろにいる女の子たちが動いた。


「あ!るいくーん!」

「るいくん見つけたー!」

「あれ?誰この子、るいくんの知り合いー?」


偶然を装ったようにるいに話しかけた女の子たちが、るいの周囲を取り囲む。そして、るいの側にいたあかりに見下したような視線を向けた。

どうやら彼女たちは、あかりをるいの彼女とでも勘違いしているのか。側に居るなっちくんと由香には目もくれず、彼女たちはあかりだけを、敵視しているような目で見ている。


そんな彼女たちに、るいは困ったように視線を向けた。


「なんか俺に用事?」

「うん!これから遊び行かない?」


にっこり男受けしそうな笑みを浮かべて、るいを上目遣いで見る。

おいおい、勘弁してくれよ。と目の前であからさまに好意ある目を向けられていて、女の子に誘われているるいに、憂鬱な気分になってきた時、るいはチラ、と俺に視線を向けてきた。

そしてるいは、女の子たちに言い放つ。


「ごめん、好きな人に他の子と居るとこ見られたくないから。」


きっぱり告げたるいのその言葉に、女の子たちは物凄く不満気に、「えー、それってこの人?」とまたあかりのことを見下した目を向けた。


良くない視線を向けられてしまったあかりは、ブルブルと激しく首を振りながら、無言で俺のことをグイグイ指差してくる。おいあかりやめろ。


やっべ、あの子らに敵視されるとかやだやだ、と、俺はササッとその場から離れる。

そんな俺に気付いたるいが、「あっ航くんどこ行くの」と素早く俺の後を追いかけた。

そこで初めて、彼女たちの視線が俺に向けられた。


「「「…えっ?」」」


キョトンと、間抜けな顔をして声を漏らす彼女たちの声が聞こえた時には、背後からるいの両腕が俺の首に回っていた。


「えっなに?」

「え、誰?」

「るいくんのお友達?」


ほらほら、すっげー見られてんべお前。

るいがいきなり俺に抱きついてくるから。

ジタバタと俺はその場で暴れ、るいの身体を振り払った。


「るいきゅん、目立つから。キミ場所を考えようか。」

「え、だって航が嫌そうにしてたから。」

「嫌だよ?るいがギラついた目してる女の子に狙われててやだけど。」

「だからこっちおいでって。」

「こらこらこらぁ!!!」


今度は真正面から抱きついてこようとしてきやがったから、俺は素早くるいから距離を取った。


「えー、逃げんなよ。」

「じゃあ抱きつくな!」

「分かった分かったから、こっちおいで。」

「やだ。」

「あ、ここのカレー美味しいよ。奢ったげる。」

「え、いいの?」


おいでおいで、と手招きするるいに、カレーに釣られて近寄ると、るいはよしよしと俺の頭を撫でてきた。

まあ頭撫でられるくらいなら良いか。と、その後は気にすることなくるいに触られていた俺だが……


グサグサと周囲から突き刺さっている視線にはまったく気付いていなかった。


「ははっ、あいつら相変わらずかよ。」


そんな俺とるいを眺めていた会長は、声を漏らしながら笑っていたそうだが、そんな会長の姿も、周囲は珍しそうに見ていたとか。


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