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「ニヤニヤしちゃってぇ。ずるいよ、あたしもイケメンの彼氏ほしい。航がフリーだったらあたし狙ってたよ。」
「お前えらいぶっちゃけてくるようになったな。」
「ぶっちゃけた方が仲良くなれる気がしてね。イケメンは目の保養だからできればずっと仲良くしときたいじゃない?」
「あかりちゃん心配すんな、お前が俺のダーリンを横取りしようとしない限り俺はずっと仲良くするぞ。」
「じゃあもうひとつぶっちゃけるね、航のダーリンはハードル高すぎ。無理。どっちかというと航ダーリンから航を横取りする可能性の方があり得る。」
おいおい。にこにこ可愛い顔をしてこの子、なんかちょっと恐ろしいことを言ってきたぞ。
また俺は乙女のようにサッと胸にクロスした手を当てると、あかりは「へっ。」とニヤニヤしながら笑ってきた。なにが「へっ。」だ。
「あっ!ちょっ航!!あそこにいんの会長じゃね!?」
あかりとそんな会話をしていたところで、由香と喋っていたなっちくんが突然、俺の服をグイグイ引っ張りながら興奮したように言ってきた。
「ん?」となっちくんが指差す方向を見れば、男が三人に対し、女が七人という割り合いでテーブルの真ん中の席に座っている会長が居た。
「おお、まじだ。あかりちゃん、あそこにイケメンいるよ。」
ポンポン、とあかりの肩を叩いて教えてあげると、あかりは「ドコドコドコドコドコドコ」と太鼓のような声を上げながら周囲を見渡す。
「あそこ。あそこあそこ。」
「……ぁっ…はぁん……。」
会長に指を差しながら教えてやれば、あかりは会長の存在に気付いたようで、へなへなと腰を抜かしたように俺の方へ寄っかかってきた。
「おいおい、あっはぁんっておまっ…!」
あかりのこの反応…俺はどこか親近感を感じてしまった。
ええっと…女版、モリゾー…っ、ゴホゲホ。やめやめ、それはちょっとあかりが可哀想だから今の無し。
寄っかかられながら、笑い混じりにあかりを支える。
あかりとそんなやり取りをしていた俺を、驚いたように目を見開いて、会長がこっちを見ていた。どうやら俺が居ることに気付いたらしい。
席から立ち上がった会長がこっちに歩み寄ってくる。
「えっ待って、イケメンこっちに歩いてきた!やだ!同じ空気吸っていいの!?」
「いや吸って。でないと死ぬから。」
この子まじでモリゾー2号って言ってもいいか?
そんなことを思っている俺の隣で、なっちくんが「あかり面白い」と笑っている。
なっちくん…この子女版モリゾーだぜ…。
っとは可哀想だから言わないでおこう。
「おいおい航じゃねえかー!お前なに女の子連れて来てんだよー!」
数秒後、俺の目の前にやって来た会長が、ペシンと俺の頭を叩きながら話しかけてきた。
すると、俺の隣に居たあかりがギョッとした顔で、俺と会長に視線を交互に行き来させている。
「えっ!?知り合い!?」
「俺の高校んときの先輩。」
「お前の彼女?」
ニタリと笑った会長に言われ、知ってるくせになに言ってんだと会長の頭をペシ、と叩けば、周囲の全然知らない人から『えっ』て顔で見られてしまった。
「黒瀬さんの頭叩くとか…」
「え、あの人なにもん……」
えっ…
寧ろ俺からしたら黒瀬さんがなにもん……
と周囲の反応に戸惑っていると、会長は「嘘嘘、冗談。矢田に会いに来たんだろ?」と俺の頭をワシャワシャと撫でてきた。
「…なにこのイイ男…」
隣からはあかりのうっとりしたような声がする。
「会長、紹介するな。俺の大学の友達のあかり。かなりのイケメン好き。イケメンの彼氏募集中。」
「ちょっ待ってやめてっ航、このお方はハードル高すぎるっ無理っ近寄れない!あっ酸素が足りないっ」
「ぶふっ、あかりおもしろ。」
再びなっちくんがあかりを見て笑っている。
どうやらこのあかりちゃん、仲良くなりたての頃は猫かぶってたな?と思うくらい、いじれば面白い反応をしてくれる。
顔を真っ赤にして会長から後ずさるあかりに、会長も面白そうにニッと笑って、あかりの頭に手を伸ばした。
するとあかりは「キャッ無理無理無理!」と俺の腕にしがみついてきた。
丁度そんな時だ、俺の背後から物凄く黒いオーラを感じた。
「おー矢田。」
よっ、と会長が軽く手をあげる。
するとあかりもハッとしように後ろを振り向き、ハッとしたように俺から手を離した。
にこりと笑みを浮かべたるいが、あかりを見る。
イケメンに挟み撃ちされたあかりは、よろよろと由香の方へ逃げていった。
るいと共に仁もその場に現れ、さらに会長までいるこの空間に、なっちくんは「うおー、すげー!高校ん時の有名人が揃ってるー」という感想を漏らしている。
「え、なになに!?どういうこと!?」
なっちくんの発言に、あかりと由香が興味津々にしていたから、なっちくんは高校の時の話を2人に話していた。
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